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ブリガム城

ちょっと短いかも

 二人の戦士が一息いれたとき、足下には十五の死体が転がっていた。

 さすがに二人とも息を荒くしていた。

 しかし、二人ともまったくの無傷であったし、意外と余裕すらあった。

 軽く息を整えながら


「超過勤務料金でも貰おうかな。しかし、強いね 」


 とメレンへ素直に賞賛を送った。

 メレンは、あきれたようにハヤトを見ていった。


「誰のことだ?九人も倒しておいてよく言う」


 十分もかからずに十五人を切り捨てるのは二人とも相当な技量があって、お互いにやることを分かっているから可能なことだった。シュラもそのうちの弓を持って離れて狙っていた一人を始末していた。


「さて、女王様。これからどうするんだ? 」


「そこが問題だな。これではあちらこちらに兵を伏せているかもしれん 」


 そろそろ日が暮れようとしている。


「シュラは何かいい方法はしらないか? 」


「遠回りになりますが、山脈越えをしてみますか? お二方が山歩きが得意なら問題ないと思いますが 」


「おれは問題ない 」


「私も逃げ出すときに夜に山を越えたくらいだからな。そっちのほうが人目につかなくていい 」


「とりあえず、ここから移動しよう 」


 ハヤトが


「おい、またなんか来るぞ、馬の足音か? 複数だな 」


「また、私目当てか? 」


「そんな事知るか!モテモテすぎるのも問題だな 」


 とちゃかして言う。


「よし、馬を奪おう。馬からたたき落としてその辺に転がしておけば問題ないだろう 」


「できるか? 」


「どうやら三人ほどだから一人、一人倒せよ。それと馬を傷つけるなよ 」


 しかし、駆けつけてきた三人の騎士達は味方のようであった。

 女王の姿を認めると同時に馬からおり、地面に片膝をついたのであった。

 ハヤトはどの世界でも似たようなことをするんだな~と割と、どうでもいいようなことを思っていた。


「ご無事でなによりでございました。女王陛下 」


「お前達は? 」


「は。国境を守る役目を司るブリッジャー伯爵に仕えるものでございます。つい先ほど、フーパー様がこのあたりに女王陛下がおられると知らせを受けて、お出迎えに参じました 」


「そうか、ブリッジは無事だったか 」


「はい。あるじは、陛下のご帰還を一日千秋の思いで待ちわびております。さあ、こちらの馬に 」


 ハヤトはちらりと物問いたげな目を騎士向けたが、メレンはあっさり頷いて


「馬はいらん。このかっこうではよけいに怪しまれる 」


「は、ですが・・・・・・ 」


「国境を越えるまでに怪しまれては何にもならん。ここはまだモンタナだ 」


 両国はいまは平穏だが、いつ戦いが起こるかわからない状態だ。

 案外、流浪の女王を捕らえてモンタナに突き出して褒美を得るとかそんな輩がいてもおかしくない。

 そんな物騒な可能性があるかどうか、分からないがとりあえず、国境を越えるのが先だ。

 しばらく歩いて行くと一行のまえには広い河が現れた。流れは緩やかで、水面はおだやかだが、色は濃く深さがあることを窺わせる。これがネルソン河だった。


「向こう岸に見えるのがアイオア? 」


「ああ。あれがブリガム城だ。 モンタナに対する抑えだ 」


 メレンが指さした城は川縁の突き出た部分に建てられていた。

 騎士達の手配で船に乗り込み、近い付いていくと、その城は無骨な戦闘用の城とはっきりわかる城であった。


「立派な戦闘用の城だね 」


「そうか? 造られた当時は一線級だったが、一回もここの城が戦闘になったことはない。おそらくはこれからもないだろう 」


「ああ、わざわざ攻めなくてもいいからな 」


 メレンが驚くが


「わざわざ、警戒厳重で堅固な城にわざわざ攻めてくるアホウが王様になっているのか? モンタナは? 」


 納得したように


「古狸といわれるくらいだからな・・・・・・そんなことをするくらいならこちらの武将を内応させるか城主を味方にさっさと勧誘するかぐらいするだろう 」


 船の上でそんな話をしながらも、メレンは河の向こうの景色を見入っていた。

 追われていた逃げ出した祖国に半年ぶりに戻ってきたのだから感慨もひとしおだろう。

 シュラもいたが、会話にくわわるでもなく、無関心を貫いた。それが家臣としての心得なのかもしれない。

 そうこうしているうちに、船は城の小さな埠頭につけられた。


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