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先代国王

3000文字を超えている・・・・・・ 

「そいうえば、普通、王様の子供なら、妾の子だろうとなんだろうと、ちゃんと王様の子供として育てるんじゃないの? 」


「そのとおりなのだが、普通、国王には愛妾が何人いてもおかしくないのだが、先代は表向きは愛妾を作れなかったのだ。 」


「後宮を作って女の人を囲うのって男の夢じゃないの? ハーレムってやつ 」


「よく知っているな。そのとおりなんだが、事情があってな。モンタナとアリゾナから政略結婚で嫁いできててな。中立をたもつのが精一杯で、どちらの国ともめ事はおこせなかったんだ。で、先代は両国に気兼ねして一人も愛妾を持たなかったことになっている。まあ、私がいるから表向きだけだが・・・・・・ だが、反対に愛妾の子供は私だけだったからある程度は控えていたんだろうな 」


「なあ、素朴の疑問だが、女性でも後宮みたいなものを作りたいと思うものか? 」


「男ってやつは、勝手に欲情しておいて、かわいがってやろうだの、嫌じゃないんだろう、とかさんざん言われまくったのでな・・・・・・ 」


「よほどよくない覚えが多いらしいな。 」


「しかし、人を愛しいと思ったらそうなるのは自然だと思うぞ 」


「当たり前だろ 」


 けろりと言われてしまったハヤトは顔をしかめてしまった。


「だったらそう腹を立てなくても・・・・・・ 」


「別に怒っているわけじゃない。ただ、手当たり次第の、ところ構わず、無節操で、無神経なところは好きになれないっていうだけだ。 歯の一、二本は覚悟してもらわなきゃ割があわないぞ」


「よくもまあ、そこまで並べられる。見た目にだまされた男達に心から同情を覚えるよ。ちなみにおれの歯は折らないでくれよ 」


「そっちこそ、歯を折らせるようなことはするなよ 」と言い返してきた。


「まあ、おれは一安心だな。そういうことには朴念仁でな。あまりそういうことに経験は少ない 」


「そうだろうな。でも少しは女心を知った方がいいと思うぞ、お前は 」


「話を戻すが、やっかいごとがいやで、言葉が悪いが厄介払いをしたも同然じゃないか? 」


「ある意味そうだが、先代はそれなりに、私の行く末を考えておられたと父が言っていた。宮廷での醜い争いに巻き込まれていじめられるより、のびのびとした環境で自由に育ってもらうのを望んでいたそうだ。ある日、父は先代に密かに呼び出されて、私を実の子供として育てるようにと命じられたそうだ 」


「じゃあ、王宮でもメレンが生まれたことはほとんど誰にも知られていなかったんだ?」


「ああ、口の堅い二、三人の腹心を除けばな。なにがあっても私に出生の秘密を打ち明けないように言い含めたそうだ。あくまでもベリー子爵の娘として育てるようと・・・・・・ 」


「それなら、どうして遺言状に? 」


 メレンは深くため息をついて


「父曰く、お転婆すぎて嫁のもらいてがいないのを心配したのではないかと・・・・・・ 失礼すぎる! 」


「目が点になるとはこういうことを言うんだな・・・・・・ 笑うに笑えん 」


「笑いたければ笑え 」


「拳を握って言われても・・・・・・ 」


「難しいもんだね。それでメレンはリオグランデ城に乗り込んでいって女王になったの? 」


「女王なんかやりたくはなかったのだが、国民の一人としてはそれは言えなかった。だいたい、十八年間田舎暮らししていて社交界すらでたことないのに、今更高貴な血がとかやんごとない身分だの、ちやほやされても遠い世界の出来事に感じて」


「そうか?あまり高貴なかたは知らないが、オーラもあるし、美人で貫禄あるし、庶民的なところが一般市民に受けそうだし、いいんじゃないの 」


 これ以上言うとシュラが飛びかかってきそうだ。


「この国になにが今必要か?と問われると女王になるしかなかった。 」


「それはそれで貴族達は大騒ぎだろうね・・・・・・ 」


「田舎育ちなのをさんざんバカにして笑いものにしてくれたしな。あれで貴族の息子どもに対してあこがれを抱いていた幻想を見事に打ち砕かれた。 宮廷婦人たちにもばかにされたしな 」


 意外とこいつは堪えてないなと思いつつ


「もう一人の王様候補はどうしたの? 」


「なぜかもっとも歓迎してくれたのがアナ姫の息子ガルベストだった 」


「ほう、よくできた人だね 」


「ああ、国中に聞こえるほどの騎士でありながら、私に『甥に過ぎない自分より愛妾とはいえ直系の子のほうが上の継承権を持っている』と堂々と発言をしたからな 」


 アナ姫にしてみれば、自分の息子が王位につけるというところで、息子がいらないと言ったから、さそかし悔しい思いをしただろう。


「それで、すったもんだした上に、戴冠式を執り行い、私が正式に女王の座についたわけだ」


「だったらどうして逃げ出してこんなところにいるの? 」


「バウティスタ侯爵の陰謀だ 」


 口調が変わった。明らかに怒りがこもっている。


「追い出すくらいなら最初から私に王冠を渡さなければよかったのに。私も人身御供として王冠をかぶったというのに、よほど私が目障りだったとみえる 」


 確かにそのとおりだ。

 バウティスタ侯爵はこの女性をうまく丸め込んで思い通りに操るつもりだったのであろう。

 なのに反旗を翻して、国外へ追放するという暴挙に出たと言うことは・・・・・・


「そのバウティスタ侯爵が君を追い出した理由は、何だと思う? 」


「アイオアが欲しかったのだろう 」


 メレンが


「アイオアを自由に思うがままにしたいと欲したのであろう。名より実をとろうと考えたのであろうが 」


「そこが不思議なんだが?普通、自分に都合のよい王を立てたい思うのは、政治をするものなら当然のことだろう。君が操れないよほどのバカか、政治の邪魔をするか、しないと追い出したりしないだろう。なにをしたんだ? 」


「国王選びにはことごとく大貴族たちの利害が絡んできたからな、実際バウティスタ侯爵が本当の黒幕かどうかすらわらかん 」


「なんでそこまで冷静に判断できるのに一人で喧嘩するんだよ。ほかにも味方がいるんじゃないの?このシュラみたいに 」


「味方はアラモにいるさ。あちらこちらに面従腹背の貴族もいるはずだ。私は彼らの決起を促しに帰る 」


「だからって一人でまっすぐアラモ目指して突撃しても・・・・・・侯爵だって待ち構えているよ 」


「危険は覚悟の上だ 」


 決意に揺るぎがない。


「ああ、もう、この石頭が・・・・・・ 捨て身戦法かよ 君は最後までいきのこらなきゃならないんだぞ。本当にわかっているのか?」


 その時、男が気がついた。


「おい、気がついているか、囲まれつつあるぞ 」


「ちょうどいい具合に話もまとまったようだし 」


 まとまってねえよーと心の叫びは置いておいて

 姿は見えないが林のなかに人の気配がある。シュラに目配せをして姿を隠させる。

 できるだけ気配を隠して近付き、二人を取り囲もうとしているようだ。

 しかし、ふたりは腰をおろしたまま動かずにいた。二人ともこの落ち着きが単なる虚勢ではなく実力がある戦士のそれであった。


「囲まれるね 」


 落ち着き払ってハヤトが言う


「そうだね 」


 平然とメレンが答える。


「さて、一人何人やる?シュラは戦力として数えない方がいい。牽制だけで精一杯だろう 」


「しょうがない、女性としては男を立てないと、それに女王としては部下に手柄を立てさせないと。だから四人だけもらおう 」


「えらく不公平だな・・・・・・十人以上いるぞ、それとだれが部下だ 」


 ハヤトが小石を拾い上げながら文句を言う

 刺客の一団に包囲されたようである。 それと同時に十分に態勢を整えた刺客の一人が剣を抜き払い、卑怯にも後ろから斬りつけようとした。

 その瞬間「ぎゃあぁぁ!」と叫んで剣を取り落とした。

 ハヤトの手から目に見えない速度で放たれた小石が、刺客の顔に見事に当たっていたのである。

 その悲鳴を合図に、林に紛れていた刺客の集団が一斉に飛びかかってきた。


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