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第22話 吐息と涙の甘い遊戯 2

 気づいたときには、アージェスの青い双眸を見つめていた。

 あれほど気をつけていたというのに、ルティシアは唯々諾々と絡めとられていた。

 甘やかすように膝の上に乗せられて、唇を何度もついばまれた。 


 永遠にも思えるほど終わらない行為に、力は抜け切ってされるままだ。


「前に賊に襲われたと言っていたが、どこまでされたんだ?」


「っ……胸元の服を引き裂かれました。ですが、私の目を見るなり、逃げていきました」  


(私の目を見ても逃げもせず、こんなことをするのはあなただけです)


 止まぬ刺激を受けながら、内心でルティシアがぼやいているとアージェスが笑った。


「ははっ、そりゃいい。まだ誰にも身体を許していないのだな?」


 ルティシアはコクリと頷く。


「……もう、やめませんか?」


 顔どころか身体まで火照り、恥ずかしさにもう耐えられそうにない。

 そもそもどうしてこんなことになっているのか。

 

「お前の身体が温まって(・・・・)きたところじゃないか。最後までしないと約束してやるから、もう少し付き合え」


 耳元で強請るように甘く囁かれ、耳たぶを口に含まれてビクンと身体が震える。


「めちゃくちゃ可愛いぞ。俺がお前の全てを愛してやるからそのままでいろ」


 耳の鼓膜から感覚を麻痺させていく。甘言に心は奪われ、やがて身体もアージェスのものにされる漠然とした予感に、ルティシアは陶酔して思わず甘く囁く。


「アーシュ……」


(あなたが好き。大好き)


 以前よりずっと強くなっている想い。

 言葉にできずに溢れて、胸がいっぱいになる。

 

「ルル、愛してる」


 ここのところ王は他の婦人を訪ねず、執務後は就寝の支度をしてまっすぐに居室へ戻ってルティシアと戯れている。

 ようやく冷静さを取り戻したルティシアは、眉根を寄せて顔を俯けた。

 抱き上げられて奥の寝室へ連れていかれる。

 今と同じことをされるのは恥ずかしいが、アージェスに構ってもらえるなら、どんなことでも喜んで受け入れられる。

 けれど、自分がいつまでも国王の相手を務めていていいわけがない。


「私など、陛下にはつまらないでしょうから、どうぞ他のご婦人をお相手になさって下さい」


 もっと早く言うべき言葉だった。すっかり流されて、今更ではあったが、ようやく言うことができた。

 何を思ったのか、王はルティシアの寝衣の裾を掴んでおもむろに脱がせた。

 その下は下着一枚だけだ。

 

「な、なにを……あ、あの……」


 戸惑う間に、アージェスも上半身の寝衣を脱ぎ捨てた。


「裸で抱き合って寝るんだよ。本当は全裸がいいんだがな。襲われたくなけりゃ、今日のところは大人しく寝ろ。続きは明日だ」


 横たえられて、二人でかぶった毛布の中、裸の胸に抱きしめられる。

 アージェスの男らしい筋肉質の素肌に、ルティシアの鼓動が速くなる。


「お前が自分のことをどう思おうが勝手だが、俺はお前をいたく気に入ってる。すぐに抱かないのはお前が俺にとって特別だからだ」


 ルティシアは俯けた顔の下で唇を噛んだ。

 嗚咽にならないよう、声を殺すので精一杯だった。

 泣いていることを知られたくないのに、ぎゅっと抱きしめられて、頬が素肌の胸に当たる。

 宥めるように頭を撫でられた。


「俺は明日も明後日も、お前を抱く。お前は俺に愛されることだけを考えていろ」


 物言いは高圧的だが泣きたくなるほど優しい声だ。

 それができれば、どれほど幸せだろうか。 

 ルティシアは、頷くことすらできず、堪えきれずに彼の肌を涙で濡らした。



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