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第二話

 第2話 


「つ、着いた…」

「ココよ! ね、あたいに間違いなかったでしょ?」

「ええ! これが清流村ね?」

「そうよ! やっぱりあたいって天才ね!」

 麻耶たちは遂に目的地の清流村にたどり着いた。長く苦しい道のりであった。しかし、ついに麻耶たちはたどり着いたのだ!

「「私たちの戦いはこれからよ!」」

 ………………………。

「はっ!」

 麻耶は慌てて飛び起きた。

「危なかったわ。思わず最終回フラグを立てるところだったわ…」

 辺りを見渡すとそこは平原であった。どうやら気を失って幻を見ていたようである。麻耶は自分がどうしてこんな所で倒れていたのかを思い返すことにした。


「それでその清流村はどこにあるの?」

「えっとね、あっち!」

 チルノは遥か彼方を指差した。そこには山々があり、村などは見えるはずがなかった。そもそも簡単に見えるようならチルノなんかに聞くはずがない。麻耶は勝手にズンズン進んでいくチルノを放置しようか本気で考え始めていた。

「あの、あっちじゃ全然分からないんだけど…。もう少し説明できないの?」

「あたいに任せて!」

 全くの意味不明である。まあよくよく考えたらチルノに詳細な説明を求める事は、赤ん坊に何故泣いているのか説明を求める事と同義である。麻耶は仕方なくチルノの後に続いた。

 その後は壮絶な道を歩き続けた。それは何故か。チルノはあろう事か普通の道を通ることはせず、敢えて脇道や獣道などを通り始めたのだ。

「こっちの方が近道なのよ!」

 とか言いつつ脇道から出てきて見れば先ほど入った道から10mほどしか離れていない事など日常茶飯事であった。

「ちょっと、ホントにこっちで合ってるの?」

「あたいは天才よ!? 間違いないわ!」

 麻耶はもう一度明らかに間違えたらぶん殴ってやろうかしらと考えた。しかしその後は何故か正規の道をしっかり歩き始めた。

「予知能力でもあるのかしら?」

「うん? 何が?」

「いいえ、何でもないわ」

 その後はとりあえず何事もなかったので周りの風景を撮影しながら麻耶はチルノの後をゆっくり歩いていく。

「やっとまともになったわね~」

 と麻耶はホッとしていたが、

「あ、あれは!」

 とチルノは突如何かを発見したようで、わき道に飛び込んだ。麻耶は

「何!? スクープ?」

 と聞き返したが、チルノはもの凄い速さで脇道を駆け抜けて行った。通常の道ならスピードで引けを取らないが、そこは草木が生い茂っていた為チルノより長身な麻耶はなかなか小柄なチルノに追いつけない。

「まったく、何なの?」

 正直放っておきたいのはやまやまだが、一応はチルノが場所を知っているという事と、ここまで一緒に来てしまった為見捨てることができず、麻耶は懸命に追いかけることにした。

「待って!」

 麻耶は必死に声をチルノにかけながら追いかけるが、チルノは聞こえないのかドンドン先に行ってしまう。そしてついに見失ってしまった。

「何処に行ったのかしら…」

 辺りを調べていると崖の所に何故かチルノはうずくまっていた。

「どうしたの? いきなり走り出して…?」

 チルノは肩を震わせていた。一体どうしたのだろう?

「チルノ?」

「や…」

「や?」

「やった~!!!!!」

 チルノは満面の笑みを浮かべ、何かを手に持っていた。

「どうしたの?」

「カエル!」

「…………。は?」

「だからカエルだって!」

 よくよく見て見ると確かにカエルが握られていた。それがどうしたのだろう?

「見て。このカエル虹色なんだよ!」

「え~っと?」

 麻耶は深く考え込んだ。ということは?

「やった~。冷凍して遊ぼうっと」

 麻耶はチルノの肩をチョイチョイと叩いた。

「ん? 何?」

「チルノはそのカエルを見かけたから追いかけたの?」

「もちろん! 他に何があるの? あんたバカじゃないの?」

 麻耶は自分の何かが切れる音がした。わき道に行くのはいい。カエルを追いかけるのは最悪いい。しかしチルノにバカにされるのだけは許せない!

「ふん!」

 麻耶はカエルに夢中なチルノの頭に拳骨をくらわせた。

「いった~い! 何するのよ!」

「あら、今のは私じゃないわよ。蜂でもいたんじゃない?」

「え? そうなの?」

「ええ! あ、ほら~、あそこに蜂がいるし」

「え? どこどこ?」

「ほら、あそこ。ああ、もう見えなくなってしまったみたい」

「そっか~」

 チルノは辺りを見渡していたが、見えないと分かると気を取り直しカエルに夢中になり始めた。麻耶はチルノが逆の方向を向いてる時を見計らい、もう一度鉄槌をくらわせた。

「ふん!」

 ゴン!といういい音が辺りに響いた。

「いった~い。何するのよ!?」

「だから私じゃないって。イノシシでも当たったんじゃない?」

「え? そうなの?」

「ええ。ほら、あそこにイノシシが走ってる。もう見えなくなってしまったみたいだけどね」

「そっか~。おかしいな~」

 チルノは再びカエルをおもちゃにし始めた。麻耶は最後の一撃といわんばかりの力を込め、チルノの頭に鉄槌をくらわせた。

「ふん!」

 今度は先ほどより大きな音がした。

「い、いった~い……。今度こそ麻耶ね!」

「いえ、私ではないわ」

「じゃあ今度は何なのよ!」

「龍がいたのよ。多分居眠りでもしてて、ぶつかったんじゃない?」

「バカにすんな! そんなのいるわけないじゃん!」

「居たんだから仕方ないじゃない。まあ、とりあえずそろそろ行きましょ。こんな所で時間かけてもしょうがないしね」

「ムキ~!」

 チルノは怒りながら飛び跳ねていた。麻耶はチルノに背を向け清々しい気分で歩き出した。しかし歩こうとしても足が動かない。…どういうこと?

「あら?」

 いつのまにか足は氷で覆われており、一歩も動かすことができなくなっていた。。チルノの仕業だ。

「あなた、こんな事してどうするの?」

 私は呆れ顔でチルノに尋ねた。これで復讐のつもりだろうか?

「バ~カ、バ~カ!」

 チルノは愉快そうに飛び跳ねていた。するとミシミシといった音が聞こえた。

「あら? 何かしら?」

 飛び跳ねているチルノを眺めながら、その音が何なのか耳を澄ましてみた。どうやら近くから聞こえる。

「一体何の音かしら?」

 ミシミシという音は次第に大きくなっていった。私はふと少し先の地面をみると亀裂が入っていた。

「あ、あれ?」

 次第に亀裂は大きくなっている。こ、これは……。

「まさか、この崖……崩れる?」

 チルノはまったくそんなことは気づかずキャイキャイ言いながら飛び跳ねている。

「ちょ、ちょっと! 早く解きなさい! このままだとお陀仏になっちゃうわよ!」

 麻耶は必死にチルノに警告するが馬鹿のチルノは一向に気づく様子がない。

「チルノ! ねえチルノ!」

 そんなことをしているうちに亀裂の大きさが増し始めた。麻耶は考える。

 亀裂が大きくなる

 ↓

 崖が崩れる

 ↓

 私、飛べない

 ↓

 下に落ちる

「こ、これはまずい…」

 麻耶は焦り始めた。これはなんとかしなくては。

「ちょっと、チルノ! ここ落ちるわよ!」

「え? 何が?」

 ようやくこっちに気づいた。

「だからここ! 早くこの足を何とかしなさい!」

「あたいを騙そうとしても無駄よ~」

「バカ! 本当だって。早くしないと…」

 麻耶が言い終えた時、崖はけたたましい音と共に落下し始め

「いや~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 二人は崖下に落ちていった。


「あそこから落ちてきたのね。よく助かったな~」

 麻耶は自分の体の状態を確認する。どうやら傷は負ってないようだ。にしても自分の周りには一切瓦礫がないのはどうしてだろう。辺りは瓦礫が散乱しているというのに…。

「まさか…この剣が?」

 麻耶は自らが持つ刀「天上桜」に目をやる。この剣は以前ある事件に巻き込まれた際に得たものであるのだが、たまに不思議な力を発揮することがある。詳細な事は何一つ分かってはいないのだが、一種のお守り代わりということで外出する際には必ず持ち歩くことにしている。本来の日本では銃刀法違反で捕まりそうな感じだが、幻想郷が銃刀法なんて無くて本当によかった。まあこの刀は刃がついてないので模造刀のようなものである。

「そういえばチルノはどうしたんだろう?」

 横を見るとチルノは目を回しながら倒れていた。

「まったく… ほらチルノ起きて」

「うん? ここは?」

「崖の下よ。あそこから落ちてきたのよ」

「そっか~。へぇ~」

 チルノは大して関心がないようだ。

「これからどうするかな~。あれ?」

 麻耶はふと目を向けるとそこに一枚の看板を見つけた。それは殆んど腐っているような看板であった。ここに立てられてから随分経っているのだろう。

「何々?」

 そこには


 水がおいしい清流村へようこそ!


 と書かれていた。

「つ、着いたんだわ!」

 麻耶はテンションが上がり始めた。これで遂に自分の本来の目的が果たせる時が来たのだ!

「よ~し、早く行きましょう!」

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 麻耶は半ば走りながら村の中に足を踏み入れた。



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