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思い付き短編

半身が見つかりました。

作者: 色輝

ヤンデレになってない気がする…。


 昔から、熱しやすく冷めやすい質だった。

 嫌いな人がほぼいないのは、興味が薄いからだと言われた。


 でも、極稀に異常なほど執着するモノがある。それが現れると、周りに引かれるくらいにハマった。

 もしそれが、人だったらと思い怖くなった事はあったが、今まで琴線に触れるような人はいなかった。……今まで《・・・》、は。






蒼空そら、おはよう」


 彼を見た瞬間、分かったの。ああ、彼だって。私の魂の半身。私と彼は生まれる前から、この魂が誕生した時から出逢う事も、惹かれる事も、そして結ばれる事も決まっているの。 だから、ほら。彼の、蒼空の家の前まで迎えに行けば、こうして笑顔を返してくれる。


「おはよう、美空みく


 名前も同じ『空』が入ってるの。運命でしょう? 苗字だって、同じ植物なの。


「今日も早いね」

「うん。蒼空と学校行きたいの」

「そっか。じゃあ行こうか」


 にこにこしながら、蒼空と肩を並べて歩く。私も蒼空もお喋りなタイプじゃないから、特に話題もなければ自然無言になる。でも、全然気まずくないの。チラチラ見て、ぱちりと目が合ったら恥ずかしくてぱっと逸らして、また目を向けてそれがぴったり合ったら、二人ではにかみ微笑み合うの。

 この時間が、私は大好きなの。ふわふわしてて、ぽかぽかするんだよ。とっても幸せなの。ふふふっ。


「おっはよー蒼空くぅん! あ、ひいらぎさんもおはよ!」

「蒼空ー柊ーはよー! 昨日言ってた奴だけどさー」

「ぁ、つ、椿つばきくん、おはよう…! ひ、柊さんも…」


 蒼空は人気者。男子も女子もみんな声を掛けるの。私? 私は普通だよ。でも一緒にいるからおまけで挨拶されるの。だから私もおはようと返すの。

 嫉妬はするよ。蒼空は私だけを見て、私の事だけを考えて、私にだけ笑って、私とだけお話しして、私だけの椿蒼空でいればいいの。

 でもね、蒼空を閉じ込めるのは、まだ早いの。だって私には財力がないの。蒼空を養えるくらいちゃんと稼げるようになったら、二人だけの部屋を借りて、私のあしかせで繋ぐの。くふふ、家に帰ったら蒼空が迎えてくれるなんて、考えるだけでぞくぞくしちゃう。


「どうしたの? 何か良い事あったの?」

「ふふー、内緒なの」

「ええ? 気になるな、美空が嬉しそうな理由」

「きっと蒼空も気に入るよ。あのね、もうちょっと未来のお話だよ」

「未来? ……うん、ならいいや。美空の未来に僕はいるんだね」


 にこにこする蒼空は、きれいでかっこよくてかわいい。天使か美の神と言われても納得なの。ふふ、綺麗な蒼空の顔を涙でぐちゃぐちゃにしたいなあ。いっぱい泣かせて、鳴かせて、啼かせて、私だけを見させるの。

 蒼空の笑顔も、愛も、喜びも、嬉しいも、楽しいも、怒りも、悲しみも、憎しみも、全部ぜーんぶ、美空のモノなんだから。




 教室に着くと、蒼空はみんなに囲まれちゃう。嫉妬で気が狂いそうになるけれど、私は良い子だから我慢するの。うふふ、トモダチみたいに嫉妬で相手を刺したりしないよ? 捕まったら意味がないもの。独り占めしたいのに離れ離れになったら意味ないよ?

 席に着くと、蒼空を見つめる。友達もみんな蒼空に釘付けで、でも私の恋を応援してくれるの。でもね、これは恋じゃなくて運命だから、蒼空はもう私のものなんだよ。私も蒼空のものなの。応援してくれるのは、とっても嬉しいけどね。

 蒼空も、私に目を向けているの。ずっと目が合っていて、にっこりしたら、にっこりしてくれる。にっこりされたら、にっこりし返すの。友達は、ラブラブだねって冷やかすけれど、私はまだまだダメなの。足りないの。顔はにっこりしてるけど、心の中はどす黒いどろどろしたモノがぐるぐるしていて、苦しい。

 ああ、早く蒼空を私だけのモノにしたいなあ。


 我慢出来ないよう。蒼空といちゃいちゃらぶらぶしたい。いつもちゃんと我慢するよ。だってね、前世・・では王女付きの侍女と騎士だった私達は、交際を公にした時の大変さは身に染みているの。美貌の騎士だった彼に、王女様も惚れていたから、私は嫉妬され殺された。だからね、もう文句の言われない立場になってから、交際を明らかにするの。登下校は、たまたま《・・・・》一緒になっからしているだけなんだよ。

 人前では近付かないで、二人っきりになったらいっぱい甘やかして、いっぱい甘えるの。慎ましいのは日本人の美徳なんだから。二人になったら、ぎゅーして、ちゅーして、一つになるんだよ。きらきらした星が降り注いで、宇宙そらも祝福してくれるの。すっごく幸せで、すっごく素敵なの。我慢して我慢して、耐えてからの触れ合いは、ついついお互いに我を忘れてしまうけれど。


 バレないように、見つめ合う。私達は何も言わなくても伝わるんだよ。愛し合ってるから、愛し合う運命だから、愛し合うのが当然だから、呼吸するように愛するから。ううん、愛なんて次元じゃない。そうあるのが、自然なの。

 蒼空が目で大好き、愛してると熱と甘さをたっぷり含んだ視線を送ってくる。私もうっとり目を細めて、口パクで伝えるの。溺れるくらいの、たくさんの愛を。


「そーらあああ────ッ!!」


 見つめていると、教室に雌猿が飛び込んできた。……また、邪魔されたの。

 雌猿は、蒼空を引っ張り自分の方に向けた。そのせいで、蒼空は私から目を外した。私からは、蒼空の逞しいすらっとした後ろ姿だけが見える。

 雌猿は、いつも邪魔をする。私が蒼空に、蒼空が私に愛を囁こうとすると、いつも…いつもいつもいつもいつもいつもォッッ!! あああああもおおおうううっ! 運命の半身との愛を邪魔するなんて、××して××させて×××に堕としてやろうかッ!!?


「もう蒼空! 何でまた起こしてくんなかったの!? しかもまた先に行っちゃうし!」

「……そろそろ一人で起きるようにしないとね。それに、僕は大切な用があったから君を待ってる暇はなかったんだ」

「何ですってえ!? あたしが蒼空じゃないと起きれないの知ってる癖に酷い!」


 大切な約束、で私を熱っぽく流し目で見てくれたから、蒼空は赦してあげる。うふふ、蒼空は中学の時この豚を……間違えちゃった。雌猿を毎朝起こしてたんだって。危うく雌猿を殺しに行っちゃう所だったんだけど、蒼空はもう雌猿を起こしてないし部屋にも入れてないって言うから、雌猿を××にするだけで赦すの。まだ××は出来ないけど。


「もう蒼空のばか! 許さないんだからね!」


 そんな事を言いながら蒼空の胸をぽかぽか殴る雌猿の首の骨を折ろうと立ち上がったら、後ろから羽交い締めにされた。あうあう、殺らせてようっ。


「おおお落ち着け! なっ? なっ?」

「あはは、落ち着くのは君の方じゃないカナ?」

「ひっ…! すすすすまんっ!」


 私が離せと言葉に籠めれば、羽交い締めにしていた男子は離れた。うううぅぅ、蒼空以外の男に触られるなんて最悪なの。いくら幼馴染みでも許さないんだから。蒼空にぎゅーして貰わなきゃ!

 蒼空レーダーが反応し見ると、蒼空が笑顔で睨んでいた。お仕置きされちゃう。そう思うとぞくぞくした。蒼空のお仕置きは怖いけれど、でも蒼空に与えられるものなら何でも嬉しいから、今では期待しちゃう。きゅんきゅんするの。私、蒼空にだけは変態になっちゃうの。


 雌猿の名前は知らないけれど、よく知ってるよ。私と蒼空の逢瀬を邪魔する蛆む、ゴミ……邪魔するKY女。雌猿なのに人の言葉が話せるなんて、きっと知能は高いんだろうけど、知性はないんだと思うの。だって空気とか読めないんだもん。しかも、蒼空の幼馴染みでずっと一緒なんだって。元気で明るくてバカな女の子。


 友達曰く、彼らは王道なんだとか。容姿端麗、眉目秀麗、頭脳明晰、運動神経抜群、文武両道、品行方正と老若男女からの人望も厚い学校のみならず近隣でも有名な彼と、その幼馴染みで平凡だけど明るくてポジティブな鈍感少女。もう一人、地味で自称平凡な孤高の隠れ美人もいるの。

 だからね、王道なら彼は幼馴染みの少女を溺愛していて、普通なら私の、ううん他人の付け入る隙はないんだって。

 でも、そんなの関係ないの。他の人もそう。だってだって、私と彼は運命の赤い糸で繋がってるんだもの。


「ちょっと、何であんたを蒼空が起こすのよ」

「何でって……あたしは朝が弱いから、中学からはいつも蒼空に起こして貰ってたの。当然でしょ? なのに、高校に入ってからはずっと起こしてくれないんだよ!」


 私達が出逢ったのは、小4の時。塾で逢ったの。だから、私達はその時からずっと一緒だよ。勿論中学の時も。蒼空は断ったみたいだけど、親に頼まれずっとやっていて、高校生になったら止めるって約束してたの。私、蒼空にそんな事させたくなかったけれど、18歳になったら籍を入れる約束をして、高校生になったら同棲の約束もしたから赦したんだよ。

 まあ、高校生で家を出るのに家族が難色を示したから、頑張って高2からって条件を取り付けたの。あまり変わらないって親には言われたけれど、一年はとっても長いんだよ。それを知らないんだね。


 閑話休題。


 蒼空を囲む有象無象の一つが尋ねると、首を傾げさも当然のようにそう言った雌猿に殺意が増幅した。

 蒼空は私のなんだよ。だからね、雌猿は別の飼い主を見つけてね? 蒼空は私だけのご主人様で、私だけのペットなの。お猿さんはお呼びじゃないんだよ。てゆーか、そろそろ殺しちゃうよ? 私、格闘技もハマったから結構強いんだからね。猿の骨を砕くくらい、簡単だよ?


「悪いけど、僕はもう起こしに行かないから、自分でどうにかしてよ」

「えーっ、何でよ!」

「好きな人にもう誤解されたくないからね。それから下の名前を呼ぶのも止めるから」


 蒼空はにこやかにそう言い、この場に混乱の渦を作り上げた。

 詰め寄られる蒼空は、私に語り掛ける。


(我慢出来ない。もう隠すのは止めたいんだ。だって、片時も離れたくない。美空が他の人と触れ合うのを見ているだけなんて辛いんだ…)


 嬉しい。嬉しい嬉しい嬉しいよ、蒼空。


(私も。私も我慢出来ないの。私もずっと一緒にいたいんだよ。一緒にいれば何にも怖くないもんね)


 現代日本で、私は一般人。毒味役を命じられる事も、わざと毒を盛られる事もない。嫌がらせはあるだろうけど、殺される事は早々にはないと思うの。それに、蒼空が一緒なら何にも怖くないんだよ。

 今日から我慢しなくていいんだね。えへへ、HRが終わったらすぐに駆け付けよう。蒼空より先に駆け寄るの。


 結局、蒼空の方が先に動いて、蒼空が私の所に来たけれど。ちょっぴり悔しいけれどそんなの些事なの。蒼空が隣の席だった幼馴染みを脅して席を交換したのも些細な事。

 大事なのは、私達の関係を周りにバラした事。


 恋とか、好きとか、愛してるとか。そんなレベルじゃないの。ぽっかり空いていた部分にぴったり収まるの。こうでないと落ち着かないの。そうあるべきなの。複雑な形をしたパズルが合わさるように、私達は当然のように出逢い共にいるの。

 今はまだ周りはうるさいけれど、きっとその内黙るの。私達の間には隙間がないから。それを理解すれば、きっと黙るよ。それでもうるさければ、殺っちゃえばいいもの。簡単、簡単。


 前世みたいなおばかさん達ばかりだったら、みぃんな消しちゃえばいいの。




「蒼空は、私だけのモノ。私だけを見てればそれでいいの」

「美空は、僕だけのモノ。僕だけを見てればそれでいいんだよ」

「ずっと一緒だよ、私の半身」

「当然だろ、僕の半身」




想定してたのと大分変わっちまったぜ…。ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] このバカップルが!末永く爆発しろ!
[一言] もしかして:メンヘラ ヤンデレというより ヤンデル? まぁ、両想い……というか同族だから普通に√まっしぐらだしなぁ ちょっとフラグの人来て旗観て下さいな
[一言] 雌猿って前世王女じゃ・・・^^;
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