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その日の放課後。
まだ夕方とは言い難い、オレンジと蒼が空に混在する微妙な時間帯。
まだ家に帰るには少しだけ早い時間だ。
起きたばかりでぼんやりと纏まらない思考でただ漠然と思った彼は、くわぁと猫顔負けの大きな欠伸をしながら身体を伸ばす。
防寒目的できっちりと着込んだ紺色のブレザーが、これ以上は伸びねぇよというように、ビチッだかギチッだか分からない悲鳴を上げるが、そんなことは知ったことではない。
というか、この程度であっさりと裂けるような安物を買ったつもりはない。
彼は、そしてようやく周囲に目を向けた。時刻は15時52分。とっくにSHRも終わっていて、暮らすには彼を除いて人気はない。
きっと部活動に情熱を向けた奴やバイトがある奴、または遊ぶ事に熱心な奴など、青春を謳歌している者達はさっさと教室を、又は学校から出て行ったのだろう。
若いな。
ぽつりと呟いた言葉は彼自身の耳朶を叩いただけで、誰かに届く事無く消えた。
そうして彼、櫻間永禮は何をして時間を潰そうか考えているうちに、再び深い眠りの世界に迷い込むのであった。