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逆流

挿絵(By みてみん)


ジェラルディーナは妙な夢を見た。

「王立学院の男子寮内で物陰からジイッとロベルトを覗き見る」

というストーカー的な夢…。


目が覚めて、真っ先に連想したのは

「ロベルト…。手紙でトリスターノ・ガストーニに付き纏われてるって言ってたよな…」

という事だった…。



********************



相変わらず騎士の訓練は厳しい。

お陰で持久力が付いた気がする。


ジェラルディーナは

(全力疾走で走れる距離と時間が確実に伸びてる)

と密かに自分を誇らしく思った。



フラティーニ侯爵家の私属騎士達はフランカの言っていたように、どうやらフランカには馴れ馴れしい態度を取る。


しかし彼らはジェラルディーナには一線引いて礼儀正しい態度を崩さない。


(やっぱり同じ「フラティーニ」家と寄子の「フラッテロ」とでは親しみやすさも違うんだろうなぁ)

とジェラルディーナは勝手に納得しているが…


ボソボソと騎士達が語るところでは

「あの子に声を掛けようとしただけでアイツが鬼の形相で呼び出してきたんだ」

「休日がかぶる日に一緒に図書室で本を読まないか聞きたかったのに」

「パイが好きみたいだから俺の分もあげようと思っただけなのに」

と誰かのことを怖がっているらしい発言が漏れ出ていたが…


そんな事情はジェラルディーナは全く気付かないし

おそらく今後も一生知らないままになる…。


ジェラルディーナにとって今大事なのは

「何故かトリスターノ・ガストーニが見てるらしき夢を自分が覗き見ているかのような事が起きた」

という現状を報告することだ。


(フランカにも相談できない。とりあえず、手のあいた時間を縫ってアルフレーダさんに報告。多分、今回は「旦那様に直接話すように」とは言われない。『転生者』関連だから…)


そう予測してーー


昼食後の時間にアルフレーダの書斎へ行くと

〈カッリストに報告してください。旦那様へはカッリストから報告するでしょう〉

と言われたので指示に従いカッリストへと報告。


アルフレーダもカッリストも

共に驚いたような焦ったような表情だった。


意外だったのは

(この人達でも驚いた表情とかする事があるんだな)

という発見があったこと。


(それにしても不思議だ…。【奴隷魂】が【鬼子】の夢を盗み見るような現象の逆流が起きるなんて…。他の『転生者』の間でもこういう事が起きているのかな?)


残念なのは夢に

「音がない」

ということ。


そして夢の中のロベルトを見ながら

「何も感じない」

ということ。


他人の夢を盗み見る場合

音や感情までは再現できないものなのか

単にこちらが加護無しだからなのか

その辺の事情は不明…。



********************



夜になるとーー


アベラルドにではなくチェザリーノに呼び出された。


〈アベラルド様がお喜びです。「前々からの疑問の答えが分かったかも知れない」と仰っています。今後も何か変わった事があれば逐一報告するようにお願いします〉

と言われ、ジェラルディーナは神妙に頷いた。


そして私属騎士の1人をわざわざ紹介された。


「こちらはルクレツィオ・フラッテロ。主に暗部の活動を統括・監視し、暗部から吸い上げた情報を取りまとめてアベラルド様に報告している連絡要員でもあります。

しばらくはジェラルディーナ嬢がガストルディ令息と会う時などに何処からか見守っている事もあると思いますので、一応顔合わせまで」

との事。


当のルクレツィオは

「…私は主に屋根裏に忍んでいたりしますが、不審者ではありませんので万が一見かけても悲鳴をあげたりせず、あと、私の事を疎んだりしないようにお願いします」

と自己紹介した。


ジェラルディーナが

「そうなんですね?」

(サルヴァトーレが妖術師なら、やっぱり交流に監視くらい付くんだね…)

と大して驚きもせずに頷いたのを見て


チェザリーノは

(…まぁ、こういう所がジェラルディーナ嬢がモテる理由なのかも知れませんね)

と独り納得した。


自身の容姿が優れてる訳でもなく

それでいて面食いだという難儀な男は

美しい女性から

「キモい」

「生理的に受け付けない」

と思われたりするだけで傷付く生き物なのである。


なのでそういったタイプの男は

「大抵のことでは驚かず嫌悪感も感じない」

ような懐の深い美しい女性に惹かれがちだ。


どんな素晴らしい美女であっても

「自分に対して嫌悪感を持ち、それを仄めかす」

ような女なら欲しくない。

(というか逆にムカつく)


フラッテロ家の女性には美女が多いが

大半の女性がちょっとした事でいちいち

「気持ち悪い」

「コワイ」

だのと言って暗部騎士を忌避する傾向がある。

(イケメンじゃないなら特に)


決してブサイクという訳ではないが…

目を見張るような美男という訳でもないチェザリーノとルクレツィオ。

意外に好みの女性のタイプが似ているのだ。


ルクレツィオは戦力としては優秀。


(ジェラルディーナ嬢は親族の婚約者がいて、おそらくサルヴァトーレ・ガストルディは「愛人にしたい」と考えている筈。ルクレツィオの片思いは実りそうにありません。ルクレツィオにはそのうち適当なフラッテロ家の女を見繕って「出会い」を演出してやらないといけないでしょうね…)

とチェザリーノは内心で考えながらも表面的には


「出来れば仲良くしてあげてください」

とルクレツィオの恋を応援しているフリをした…。



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