表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/120

脱出後

挿絵(By みてみん)


無事に公舎の中に出てからーー


ジェリーは

「今後、私は貴女と関わる事も会う事もありません。もしも捕まって拷問されても貴女の事は知らないと答えます。私達は会っていません。

たまたま貴女が脱走した日と私が脱走した日が同じだっただけです。

貴女が捕まった場合にも同じように答えてください」

とベッタに告げた。


「…あ〜、俺もお嬢ちゃんがたと今後関わるつもりはない。俺達がさっきまで行動を共にしていた事も今後誰にも喋る気はない」

と傭兵も言うが


「え?アタシ、オジサンについて行くよ?誰が何と言っても」

とベッタが傭兵の意見を一刀両断にした…。


「いや、マジで困るんだが…」


「とにかく私は先に公舎を出ます。そちらはそちらでじっくり話し合ってください。と言ってもモタモタしてたら捕まるので、意見の相違で揉めるのもほどほどに」


「はぁ?アンタも当事者なら、この子を説得してくれよ」


「無理ですね。そもそもベッタが私の言う事を聞くような子なら、私は今ここにいません。ベッタに言わせると私はクズの偽善者らしいので私が何を言っても無駄です」


「………」


「では、これで…」


「あ、おい!」


傭兵がまだ文句を言い足りないようにジェリーに話しかけたが、ジェリーはサッサと公舎のドアを開けて町の裏通りへと出た…。



********************



自由にはなったが、探し出され連れ戻されてしまえば、見せしめのために拷問され殺される可能性が高い。


気を抜けない。


正直ジェリーにとってベッタは足手纏い。

いちいち感情的で声が大きいし、何より状況も読めず、世間知らず。


(「拷問され殺される」という事がどういう事なのか全く分かってないからピンと来ずに怖いもの知らずになれるんだろうな…)

と思う。


前世で拷問を受けた事があり、尚且つ今世で異端審問庁勤めだったジェリーには、拷問の恐怖を理解できない人達の方が理解できない。



蛇の道は蛇。

新人とは言え、社会に潜伏する「異端者」(敵)を探し出す事に特化した異端審問官として半年ほど働いた経験があるお陰で追跡者に足取りを掴ませずに移動する手段も知っている。


各地に潜伏している「仲介屋」が旅芸人や巡礼者や行商隊の一団に紛れて現地を脱出する手助けをしてくれる。

現地の「仲介屋」(いわゆる逃し屋)の名前や人相や合い言葉を知っている事で随分と一般人より有利なのだ。


合い言葉の前にジェスチャーで仲間かどうか確認を取る事も多い。

ラスティマ圏全体に浸透している某秘密結社の場合だと、握手の際に「親指」「人差し指・中指」「薬指・小指」と指を三つにセパレートして相手の手を握るようなものはよく知られているが…実際にはそこから更に薬指を軽く動かす事になっている。


風評で知られる情報はどこか抜けているのが普通だ。


本物の仲間か異端審問官か、いずれかの者しか地域に根を張っているアングラ権力と接触できない。


ダレッシオのアングラ権力で最も勢力を展開してるのはフォルミッリ侯爵家の庶子ポンペオ・フォルミッリ。

通り名はヴェルゴーニャ。


本名を知るのは極少数のフォルミッリ家の者達と

異端審問庁のようなアングラ制御機関の所属人員のみ。


幸いな事にフォルミッリ侯爵家は教皇庁とは仲が悪く教皇派と常に揉めてくれている。

「占星庁の息掛かりなんじゃないのか?」

との噂もある。


その点で言えば異端審問庁も同じ。

表向きは異端審問庁は教皇庁の下部組織だが実質は異なる。


ガストルディ侯爵派に仕切られる異端審問庁は

占星庁の下部組織と言われている。


何処の国でも最も根を張ってる機関は占星庁。

医薬省と占星庁の癒着は特に深い。


基本的に病気の特定と治療に適した日時の割り出しには占星術が使われる。

医薬関係者の中では占星術の嗜みのある内科医が一番偉い。

外科医、薬師は身分が低く、内科医の指示のない勝手な治療は法的に許されない。


そんな社会環境で医薬省のお偉いさんは占星庁との関わりが深い。


一般人にとってかなり非合理なシステムだが…

だからこそ関係者達には都合が良い。


占星庁は国政のみならず、国内の既得権益層の人々の生命を質に取って実権を握っているのだ。

それがリベラトーレのみならず近隣諸国に共通する社会構造。


そうした在り方に不満を覚える者も多く、その筆頭が教皇庁。

占星庁に異議を唱えても殺されずに済む唯一の権力だと言える。


占星庁に逆らう人間は貴族も平民知識階級も普通に殺される物騒な世の中。

教皇庁以外は皆必然的に占星庁に従順となる。


なのでジェリーが教皇庁のアジトから逃げ出して頼るべきは占星庁。


と言ってもーー

占星庁職員という人種は身分も面子も隠されている。

よって頼るべきツテがない。


異端審問庁も

「処刑された者達の家族などから報復される事態を避ける」

ために

「誰が所属していて、どんな役職に就いているのか」

一般人の目から情報が隠されている。


体型を特定されないゆったりしたローブを着せられ

処刑時には三角目出し帽をかぶる。

普段から仮面で顔を隠して任務に当たる。


なのでジェリーの個人情報が教皇庁に漏れていて

「神子の素質がある」

などと勝手に判定されて攫われた事態そのものが

「本来ならあり得ないこと」

だと言える。


攫われてすぐに

「異端審問庁に教皇庁の回し者が紛れ込んでいた?」

という可能性に思い当たり


「一体誰が…?」

と頭を悩ませたものだが…


ジェリーに思い浮かんだのは

「地元ガッダにて因縁の生じたコスタ家」

くらいのもの。


(…悪意によって教皇庁に拉致される状況にされたのなら間違いなくコスタ家だろうけど…。悪意なんかなくても他人の人生を壊す人達も居るし…まぁ、特定は難しいよね)


悩んでも仕方ないので、思考を振り切ってジェリーは

「仲介屋と連絡の取れる酒場」

へ出向いてみる事にした…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ