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グループ分けの基準

挿絵(By みてみん)


フランカとジェラルディーナは早速、家政婦のアルフレーダの元へ出向いた。


アルフレーダ専用の書斎に入り単刀直入に

「実はダレッシオでの地下生活に関してお話ししておきたい事があります」

とジェラルディーナが告げると


アルフレーダは

(おやっ?)

というように片眉を持ち上げてから


「…そういう話は、貴女が旦那様に直接話したほうが語弊を生まずに済むと思います。他人を介在させればさせる程、情報は意図的にではないにせよ歪むものですから」

と言い出した。


「…ともかく、貴女を攫っていた某組織に対して何らかの干渉を行える立場にない者は敢えて聞かずにおいたほうが無難でしょう。

フランカはこのまま自室まで戻りなさい。ジェラルディーナは今から旦那様の居室へ私と一緒に向かいますよ」


「………(えぇぇぇ〜)」

不満そうなフランカの背を押してアルフレーダが書斎を出て、書斎部屋の鍵をかけた。


(毎度、書斎から席を外す度に鍵を掛けてるんだなぁ…)


ジェラルディーナはアルフレーダの几帳面さに感心しながらも

(書斎から席を外す度に鍵を掛ける必要がある環境、という事なんだろうなぁ)

とも思った。


「旦那様は今は居室にいらっしゃるのでしょうか?」


「職場から仕事を持って帰ってらっしゃらないなら、夕食後は大抵、図書室か居室にいらっしゃいます」


(一度も入った事が無いけど、そう言えばこの屋敷には図書室があるんだった…)


植物紙は羊皮紙よりも安価ではあるものの…

アドリア文明と違い印刷機が存在しておらず、本は基本的に手書き。

写本師の字の癖によっては読みづらいのが現在のラスティマ圏の実情。


「図書室って、私も入って良いんでしょうか?」


「本を持ち出す事は許可されませんが、図書室で読む分にはこの屋敷の使用人であれば誰でもできます。知らない人が多いのですが」


「皆、本に興味がないから?」


「ええ。活字に慣れてる訳じゃない人達にとっては読書はそんなに楽しいものじゃないという事です」


「伝説や民間伝承の絵本とか置いてありますか?クレメント様に読み聞かせできたら、と思うんですが…」


「ああ、それならご本人を連れて一緒に図書室に出向いて、ご本人に選んでもらいなさい。クレメント様が選んだ本のみクレメント様の居室まで持ち出せますから」


「侯爵家の方だけ持ち出し可能、という事ですね?司書が管理してるのでしょうか?」


「ええ。普段は司書が管理していて、司書が休みをとってる時は執事が管理しています」


ジェラルディーナは

(一度図書室へ行って良さそうな本を物色してみよう)

と思った。



アベラルドの居室はクレメンティーナの居室同様に、夫婦の寝室の隣にある。

「盗み聞きされる可能性が高い」

ので

「『転生者』に関して言及する事になる」

場合には、やはり読唇術を前提とした会話となる。


ただ

「ジェラルディーナが行方不明になっていた」

という情報自体は隠蔽していないので

会話が『転生者』問題にもつれ込まない限りは普通に話せる。


とにかく下手に『転生者』についてクレメンティーナに知恵を付けさせると前世の記憶が戻って人間性が残虐になりかねない。

(奥方様にだけは絶対『転生者』に関して聞かせてはいけない…)


ジェラルディーナは話すべき事を脳内整理しながらアルフレーダの後に続いた。



********************



「ジェラルディーナから『行方不明になっていた間の事で話したい事がある』という要望があり、こちらまで参りました」

アルフレーダにそう言われて


アベラルドは

「そうか、入れ。ただ、扉は閉めるな」

と言って二人を居室に招き入れた。


使用人と言えども女性を私室に招くなら部屋の扉は開放しておくのがリベラトーレ公国。

アベラルドの護衛であるジュリアーノも扉の近くに待機している。


(奥方様に気を使うのも大変だなぁ…)

とジェラルディーナは少しアベラルドを気の毒に思った。


アベラルドの近くには報告書らしき紙が複数置いてある。


「ルクレツィオから領地の方の調査報告が来たので、後でカッリストに取りに来るように言ってくれ」

とアベラルドはアルフレーダに告げてからジェラルディーナに向き直った。


「ダレッシオの地下組織の事は、その後もアンジェロが調査してくれているが、判るのは表面的な事ばかりだ。

あの組織を壊滅に追いやる切り札はない。ただ国内の行方不明者をリストにしてまとめさせた所、お前が向こうで顔見知りになった子供達と思しき名前が幾つもあった。

中には貴族家の令嬢・令息達もいたが、狙ったかのようにこれと言って力のない下位貴族ばかりだった」


「…攫ったせいで報復されるような事態は避けている、という事ですね?」

アルフレーダが尋ねると


「そうだ」

とアベラルドが頷いた。


「お話ししたい事は、その攫われていた子供達の事です。先刻、思い出した事がありますので、個人の特定に役立つと思いました」


「そうか」


「5、6人ずつのグループで分けられていた事は以前の報告書に書きましたが、今思えば『どういう基準でグループ分けされていたのか?』に関する推測が抜けていたと思います」


「だが『どういう基準でグループ分けされていたのか?』は拉致犯側の都合だろう?お前達がそれを当人達から直接聞いた事がないなら、結局は推測はどこまでもただの想像に過ぎない」


「はい。そう思って報告書には書いていませんでしたが…。『同じグループの者達には比較的似通った訛りがあった』んです。

グループ分けは『魂の兄弟姉妹』を模した形で行ったとされていましたが、今にして思うと『生まれ育った地方』に共通点があった気がします。

私のいたグループは皆、西部訛りがあって、向かいの牢で暮らしていたグループには全員東部訛りがありました」


「ああ、なるほど。お前は『あの組織は魂の兄弟姉妹が同じ地方で生まれると考えている』と推測した訳か」


「そうです」


「外国人らのグループはどうだった?外国人らのグループはリベラトーレ人のグループよりも数が少なかったと報告にあったぞ。

外国人らのグループも地方ごとに分けられていたと思うか?」


「おそらく港近くと内陸とで区別していたと思います。アルカンタルでもルドワイヤンでも内陸の者達は基本的に魚介類を食料とは考えない文化的価値観があります。

ただでさえ監禁生活で食べ物に不自由している環境だったのに、食事に魚が出るとグループ全員で食事を残すような人達がいました」


「あの組織の連中は連中なりに、魂の兄弟姉妹が生じる規則性のようなものを探ろうとしているのかも知れないな」


「だと思います」


「分かった。その点も踏まえて調査を続けるようにアンジェロにも伝えておく」


「宜しくお願い致します。…あと、個人的に『フィロメーナ・ドニゼッティ男爵令嬢』に関する情報を教えてくださると嬉しいのですが」


「フィロメーナ・ドニゼッティ男爵令嬢…。この件の書類の管理はチェザリーノに任せているので、その令嬢に関する情報はチェザリーノから受け取るようにしてくれ。…因みになぜ、その令嬢の情報が個人的に必要なのか、やましい所がないなら今話しておけ」


「…やましい所はありません。旦那様のお耳には入っていらっしゃらないかも知れませんが、『フィロメーナ・ドニゼッティ男爵令嬢が行方不明者になっていた事が発覚した事でガストーニ子爵家とドニゼッティ男爵家の婚約が解消されそうだ』という噂話が出回っています。

今日は、たまたまフィロメーナ嬢の代わりに男爵家の養女となったビビアナ嬢と遭遇して少しお話しする機会がありましたので、興味を持っただけです」


「ビビアナ・ドニゼッティ男爵令嬢…。何処かで聞いたような名前だな」


「婚約解消を阻止しようとしてガストーニ子爵令息をストーキングしてると言われていますし、異端審問庁にも『不審者通報』があったのかも知れません。

もしかしてアンジェロ様からお聞きしたのでは?」


「ああ、そう言われてみれば、その通りだな。酒場で育った娘が貴族の真似事をして、そのうち問題を起こすだろうとアンジェロが危惧していたな」


「…私と同じ牢で暮らしていたフィロがフィロメーナ・ドニゼッティではないかと思うのですが、理由としてはビビアナ嬢の髪の色と瞳の色がフィロと全く同じだったという点を挙げさせてもらいます」


「色目が同じでも顔は違うのだろう?」


「似てはいます。骨格は。フィロのほうがやや色白でしたが」


「身代わりで婚約を維持しようとする方もする方だな」


「ええ」


「ともかく、これ以上、話がないならお前はチェザリーノの所へ行って、くだんの令嬢の部分の情報をもらうと良い。

口頭での伝言より、ちゃんとメモを書いてやった方が良いだろうから、一筆書いてやる」


アベラルドがそう言って

指示をメモ書きして送り出してくれたこともあり…


ジェラルディーナは不審がられずにチェザリーノから

「フィロメーナ・ドニゼッティに関する調査書」

を見せてもらえた。


チェザリーノが

「写しを取っていかれますか?」

と訊いてくれたので


ジェラルディーナはすかさず

「写して良いのなら、写します」

と返事をした。


それから

(忘れずに伝えておかねば…)

と思い


「今日、実は騎士団訓練場で絡まれました」

〈騎士団訓練場で新たに『転生者』を見つけました〉

と伝えた…。


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