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「結婚=地獄」

挿絵(By みてみん)


「…それにしても、アリーナ達みたいな浮ついた女中らを見てると『何故、仕事中の化粧と香水が禁止なのか』判るような気がするよね…」

とフランカが少し疲れたように気怠げに呟いたので


「…そう言えば、以前はお仕着せは下級使用人だけで、侍女や執事は自前の服だったんだよね?家令や家政婦みたいに。

やっぱりそういうのも『浮ついてお洒落し過ぎるから』とかが原因だったの?」

とジェラルディーナが反応した。


「そう。ルドワイヤン公国とかメイトランド共和国とかだと、未だに侍女が自前服でお洒落するのが主流みたいだけど、お陰で『使えるべき女主人よりも目立つ』ような侍女も多いみたい。

『侍女が屋敷の主人や令息の愛人を兼ねる』ような性愛事情が乱れた国だと、そういう女性間下剋上が当たり前に起こるんだって」


「…よく離婚にならないね。無駄に修羅場を作り出して楽しいのかな?ルドワイヤンの貴族男性って…」


「宗教的に離婚できなくても普通に別居にはなってるって話だね。面倒なのは『夫は浮気自由』なのに『妻が浮気し返すと醜聞塗れになって虐げられる』という社会環境なんじゃない?

ルドワイヤン公国の貴族令嬢らは他の国々の貴族令嬢よりも特に『結婚=地獄』だって事」


「うわぁ〜…」


「その点、我が国は社会全体で『貴族同士の結婚が上手く行くように』と、かなり配慮されてると思う。

『屋敷の主人や精通後の令息に女の使用人は付けない』方針が普及してるから、侍女が愛人代わりに出しゃばるような機会も訪れない。

そもそも色目を使いそうな若い使用人は基本的に裏方仕事へ回されるのが当たり前という価値観だし。

『同じ屋敷内で暮らしていても知り合う機会すらない』んだから、貴族と平民との間に恋が芽生える筈もない。

ルドワイヤンのような自由過ぎる屋敷内事情とは訳が違う。リベラトーレの貴族女性は随分と社会全体から庇護され優遇されてると思うよ」


「…庇護され優遇される貴族女性達がそういう『配慮』を『有り難い』と感じて貴族として身を正して頑張るのなら、その方が社会全体にとっても良いことだと思うけど…。

庇護され優遇される事を『当たり前だ』と思う貴族女性は増長し過ぎる事になるんじゃないかな?

別に変にお洒落したり浮ついてたりするでもない侍女に対して『美人だから』というだけの理由で『夫に色目を使っているに違いない』と決めつけて排除しようとするとか、ルドワイヤンの貴族夫人達と比べると随分様子が違う」


「案外、人って不幸な人を見た時に『ああはなりたくない』という恐怖心に駆られて、同じような目に遭わずに済むようにと過剰に対応策を取るのかもね。

ルドワイヤンの貴族夫人達みたいに『夫が目の前で堂々と侍女と浮気するのを見せつけられる』ような目に遭いたくないから、過剰にそれを防ごうとして異常に嫉妬してしまう感じ?」


「フランカには奥方様が恐怖心に駆られてるように見えるんだ?」


「フラティーニ家の能力を引き継いでる人間だから、そういう風に見えるんだろうね。『嘘を見抜く』能力というのは、結局は『感情を見抜く』能力でもあるんだ。

異端審問では主に『嘘を見抜く』方面で能力を使うけど、日常生活では『感情を見抜く』事に使うほうが多いんじゃないかな」


「そうなんだ…」


「だからジェラルディーナが『フィロメーナ・ドニゼッティ』の名前を聞いて、激しく動揺した事も分かった」


「…分かっちゃったんだ?」


「…分かっちゃったんですよ」


「そういうの、アルフレーダさんに報告したりとかするの?」


「まぁね。後輩の仕事ぶりや生活面を監視報告するのは先輩の役目なんだ」


「それなら、変な誤解が生じないように、今からアルフレーダさんに直接話しに行く」


「一緒に行こうか?」


「…単に詳しい話を知りたいだけとか?」


「バレた?」


「…ともかく、『フィロメーナ・ドニゼッティ』という名前を聞いて不確かな推測をしてしまった事は確かなんだ。

異端審問庁本部に辿り着いた時に、報告書に思い出せる限りの事は書いたけど、それは推測を一切交えない事実のみの記述だったし、読み流す人も多いだろうから…。

今度は推測を交えた話をしておきたい」


「なるほど。そういう判断は正しいと思う。報告書を推測を交えない事実のみの記述で済ますのは『誰が目にするか分からない』状況では妥当な行動だよ。

後日、推測を交えた話を書面に残さず、個人的心配事として味方のみに話すという事もね」


普段はただ明るいだけで人の好い先輩に思えるフランカが

「意外にシビアに自分を観察して値踏みしていた」

という事を知ったジェラルディーナは

(フランカは確かに「職場の先輩」だな…)

と改めて思った…。


思わず心理的に異端審問庁にいた頃と似たような心構えになり

「…評価いただき有り難うございます」

とジェラルディーナがお辞儀をすると


フランカは

「どういたしまして」

と言って、屈託の無さそうな笑顔を返した…。



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