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リベラトーレの妖術師

挿絵(By みてみん)


ジェラルディーナが立ち去るのが訓練場の参加者達の目にも入った。


サルヴァトーレ・ガストルディは

(…まぁ、そうなるよな)

と思いながら、ジェラルディーナの後を追いかける事にした。


一般参加者である点で良い所は、見習いや準騎士と違って途中で訓練を抜けても誰からも批判されない所だ。


勿論

「急用を思い出したので今日はこれで失礼します」

と言い訳を述べておく必要はあるが。


「そうか。気を付けて帰れ」

と呆気なく了承をもらい


サルヴァトーレはニンマリ笑顔で

いそいそとジェラルディーナが去った方向へと走った。


見習いや準騎士らが

(((((あの眼鏡、あの侍女を追いかける気なんだな…)))))

と、これまた勘繰って仏頂面になったのだが…

そんな彼らの内心はサルヴァトーレの知った事ではない。


そもそもサルヴァトーレは自由人。

「妖術師」という人種だ。


妖術師は人生に数点の規制はあるものの

それ以外は自由。


人間の身体を乗り換えながら

延々数100年生き続ける生き物の1人なのだから…

どんなに普通っぽく擬態していても

普通の人々とはどうしても諸々の面で違う。


(…彼女の事が妙に気にかかるんだが。多分、この直感には意味がある…)

と確信している。

それこそ300年以上生きてきた人生経験によって。


サルヴァトーレら妖術師は

「本来なら異端審問庁から異端者扱いされるべき人種」

ではあるのだが…


リベラトーレ公国の異端審問庁は

他国の異端審問庁と違い

「本物の異端者」

に対する排除が占星庁によって抑制されている。


植民地化工作の一端を担う乗っ取り侵略の駒達に対して

「異端者だ」

と言い掛かりを付けて殺す事こそが各国の異端審問庁の本業ではあるが…


リベラトーレ公国以外の国々では

「本物の魔女や本物の悪魔崇拝者や本物の妖術師もちゃっかり排除する」

ものだというのに、リベラトーレ公国ではそれがない。


リベラトーレ公国の場合は

「豪運を持つ『転生者』を神子として崇めて国家運営に携わらせる」

のが国家権力の最高権力機関である占星庁の役割。


(『転生者』という存在も、本来なら「異端者」)


神子認定される『転生者』が

「どうやって豪運を得るのか?」

を知る者達なら

「国家繁栄のためには人倫など無意味だ」

という事がよく判る。


神子の豪運に依存した国家運営を行うリベラトーレ公国占星庁が

本物の異端者に対しても自然と処罰が甘くなるのは必然的。


そんな環境事情のお陰でーー

ラスティマ圏の妖術師の多くは

リベラトーレ公国で伸び伸び活動し続けている。


だがアルカンタル王国で活動し続ける妖術師もいる。


何故なら妖術師が肉体の乗り換えを行うタイミングが

「アルカンタル王国で輩出される予言者」

と関係しているからだ。


アルカンタル王国では途切れる事なく「予言者」が輩出され続けている。


先代予言者の予言可能期間の終わりが

今代予言者の予言可能期間の始まりであり

今代予言者の予言可能期間の終わりが

次代予言者の予言可能期間の始まりである。


そうした

「予言者交代の継ぎ目の日」

こそが


妖術師達にとっての

「肉体乗り換え可能期間」

なのだ。


そんな唯一の制限を抱えながら

妖術師は生き永らえ続けているのだから…


「アルカンタル王国占星庁の情報を入手するツテ」

が妖術師にはどうしても必要となる。


アルカンタル王国に定住しアルカンタル王国の占星庁に取り入って癒着する妖術師もいれば…

アルカンタル王国占星庁をストーキングするリベラトーレ公国占星庁と共闘してアルカンタル王国占星庁の情報を入手する妖術師もいる。


サルヴァトーレは後者の妖術師の1人。

リベラトーレの事情にもアルカンタルの事情にも明るい人物だと言える。


妖術師達の間で囁かれる警戒点として

「刑史一族の中には魔道具を使わずに瘴気の状態を認識するような者達もいて、ソイツらにジロジロ見られると自分が普通じゃない事がバレてしまう」

という点が昔から挙げられている。


勿論、リベラトーレ公国では

「瘴気の状態が普通とは違って常人とは違うと見抜かれても、それが排除には繋がらない」

ので安心して生活できる。


リベラトーレ公国では妖術師も異端審問官を無闇に恐れなくて良い。


要は

「国内の異邦権力と繋がりを持たずに身辺を政治的にクリーンに保っていれば、妖術師だろうと魔女だろうと拷問も虐殺もされずに済む」

と保証されている。

リベラトーレ公国占星庁によって。

社会的虐待とは無縁。寧ろ社会的に優遇されて生きられる。


それがリベラトーレの最大の美点なので

妖術師達はその辺の制限をキッチリ守る。


正直、誰だって異端審問官はコワイ。


同じ人間とは思えない苛烈な拷問をすまして行い

何の罪悪感もないような顔で暮らせる連中だ。


正直、刑史一族なんて

「イカれたサイコパス集団だ」

としか思えない。


だが

(…何故、頭がオカシイとしか思えない刑史一族の連中が常人よりも遥かに能力的に優れていたり、揃いも揃って美しい容姿に恵まれていたりするのだろう?)

という点で前々から興味はあった。


(二度見したくなる美形が「フラッテロ姓だ」という事が実は気になってはいたんだよな…)


ロベルト・フラッテロ然り

リディオ・フラッテロ然り


今はそれに

ジェラルディーナ・フラッテロも加わっている。


そのジェラルディーナ。

体力的に虚弱そうにさえ見える華奢な身体付き。

不思議と狙い目だと感じてしまう。


令嬢らとの会話からも

「誘拐されて行方不明になっていた」

であろう事情がうかがえた。


「行方不明になっていた異端審問官が無事に生還し、異端審問庁を辞職した」

という情報は既に耳に入っていたのだ。


(俺とは関係ない話だな…)

と聞き流していたのだが


(…「行方不明になっていた異端審問官」というのがジェラルディーナ・フラッテロなのか!)

と脳内で辻褄があった時点で、俄然興味が湧いてきた。


(…今の肉体に乗り換えてから一度も女性といたしていないんだが…。まぁ、何とかなるだろう)

内心で自分のストイックさを自嘲しつつ


サルヴァトーレは早足で通路を歩き

やっと声の届く範囲までジェラルディーナに近付いて


「お待ちください。フラッテロ令嬢」

と声を掛けた…。



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