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使用人仲間

挿絵(By みてみん)


侍女見習いのフランカ・フラティーニはフラティーニ子爵家に仕える予定。

つまり事情はジェラルディーナと同じ。

侍女見習いをしながら護衛騎士の訓練を受けて武力を底上げするのが使命。


ただフランカは『転生者』ではない。

年齢はジェラルディーナより一つ上の17歳。


執事見習いのティベリオ・フラティーニもフランカと同じ事情の17歳。

ティベリオは王立学院の受験で不合格になり、その後すぐにフラティーニ侯爵家に来て、最初の一年は侍従見習いをしていた。

侍従の仕事をそつなくこなせるようになって執事見習いへ昇格。


フランカとティベリオは婚約者。

幼馴染みでも従兄弟でもない遠縁の親戚だが幸い気が合うので、フラティーニ子爵に勧められるがまま18歳で結婚し、夫婦でフラティーニ子爵家に仕えるつもりでいる。


「あと一年、ここで修行するんだ」

との事。


ジェラルディーナはあと二年の修行が待っている…。

「そうなんですね」

と頷いて、侍女見習いの仕事を教わる。


ジェラルディーナもフランカと同じく平民なので大抵の事は自分でできる。

侍女の仕事は難しくはない。


フラティーニ侯爵家の場合、大量のリネン類の洗濯は女中がしてくれる。

侍女が洗濯するのはデリケートな衣類。

宝石・貴金属の手入れ、銀食器磨きも侍女の仕事。

侍女や侍従が受け持つ掃除場所は侯爵家一家の居室や貴賓用応接室、執務室など金目の物や重要書類がある場所のみ。


水回りや廊下や階段、食堂や簡易応接室や客室などの金目の物が無い場所は全て女中が掃除する。

家内修繕や外壁修繕、高所の掃除、燭台・ランプの火の管理などは従僕がやってくれる。

図書室の掃除は司書が。

馬小屋の掃除と馬の世話は御者と騎士達が。


事細かに

「これは誰の仕事」

と振り分けられているし侍女の仕事は多くない。


フランカの話だと

「午前中に侍女の仕事をして、だいたい午後からは護衛騎士の訓練を受けてる」

のだそうだ。


「フランカさんは侯爵様にお会いした事がありますか?」


「うん。あるよ。来た当日は呼ばれなかったけど、3日後くらいに『改めて、人となりを確認したい』とかで呼ばれた。私もフラティーニ家の能力は受け継いでるから『自分で人物確認したい』という気持ちは分かる」


「人物確認、ね…」


「ジェラルディーナもフラッテロ家の能力を受け継いでるんだよね?じゃないと侍女枠じゃなくて女中枠に落とされてる筈だし」


「ええ、まぁ。瘴気を認識できない事には異端審問庁では仕事にならなかったですし。…にしても、女中枠って、要は一族の能力を受け継げなかった人達の枠なんですね?」


「そうだよ。女中と従僕は能力を受け継げなかった人達の枠で、侍女・侍従・執事は能力を受け継いでる人達の枠。

だからこの屋敷内では嘘をつかないように気をつけなきゃならない。

ってか、そもそも嘘をつかなきゃいけないような悪い事はしない方がいい。尋問されたらバレるから」


「なるほど」


「あっ、でも侍女長のロザリンダさんだけは奥方様が実家から連れてきた侍女なんで、刑吏一族の能力は当然ないよ」


「まだお会いしてないんですけど、どんな人ですか?」


「奥方様を大事にしてる、って事なんだろうけど、大事にする方法を間違ってる感のある人?かなぁ」


「大事にする方法を間違ってる、ですか」


「なんか、あの人、奥方様に『寛容さは侮られる元凶』みたいに刷り込んでるんじゃないかって気がする。

奥方様も最初は普通の人だったのに、ロザリンダさんに唆されてドンドン不寛容な怒りっぽい人になっていった感じ」


「それはまた…。関わるのが怖いですね」


「ジェラルディーナは美人だから目の敵にされそう。マリアンジェラさんも能力に需要があって雇われてるのに、美人だってだけで敵視されて気の毒」


(客人を接客がてら、瘴気を確認するのがマリアンジェラさんの役目なんだろうなって想像がつく…)


「マリアンジェラさんてご結婚されてるんですよね?」


「うん。執事のチェザリーノさんの奥さん。子供もいるよ。託児室があって保母が待機してるから夫婦の使用人も安心して子供を作れるの」


「結婚してて子供もいるのに美人だからって嫌われるんだ?」


「そう。オカシイ話だよね?奥方様ってマリアンジェラさん程じゃないけど、それなりに美人だし、センス良く着飾れば天然美人を超えれる人だと思うんだけど、他人を妬む事で色々残念な事になってるように見える」


「ロザリンダさんが奥方様をそういう方向へ誘導してるって事でしょうか?」


「多分ね」


「それってわざと?」


「いや、無意識なんじゃない?フェリチタさんやバルトロメアさんは嘘が分かる人だし、ロザリンダさんと一緒に仕事してるんだから、ロザリンダさんが実は奥方様に悪意を持ってて妬み深い怒りっぽい人間になるように誘導してたら、流石に気付くと思うんだよね」


「無意識で相手を妬み深い怒りっぽい人間になるように誘導してしまうなんて…自覚もないんでしょうけど、相当たちが悪いですね」


「関わっちゃいけないタイプだと思う。でもさ、そういう方向へ誘導されてて、そのせいで夫からの好感度もダダ下がりになってるのに、原因を目先の美女のせいだと思い込んで憎んでしまう当人は、自分の運気をダダ下がりさせてる誘導者を自分の味方みたいに思ってしまうんだろうね。奥方様はロザリンダさんが大のお気に入りなんだよ」


「うわぁ〜。救いようがないですね。変なカルト宗教に騙されてる人達みたい」


「ホントそれ」


「何故、フェリチタさんとバルトロメアさんはロザリンダさんと一緒に居続けられるんでしょうか?」


「さぁ?逆らうのが怖いから、ってのもありそうだけど…。監視も兼ねてるんじゃないかな?奥方様はフラティーニ家の人間じゃなくて、よその貴族家から来た人だし」


「バルダッサーレ伯爵家、でしたね」


「そう。その伯爵家」


「どういったご縁で政略結婚されてるんでしょうか?ご夫婦仲は良いんですよね?」


「財務省繋がりのご縁でお見合いされて婚約なさったって事じゃなかったかな?」


「でもバルダッサーレ伯爵家って代々領地持ち貴族ですよね?首都で文官する必要性のない栄えた領地だった筈。なのに官僚勤めもなさってるんでしょうか?」


「金持ち領地持ち貴族が官僚として省庁に籍を置いてるのは仕事するためじゃなくて、予算を引っ張ってくるためらしいよ。

要は大公の覚えめでたい貴族が長官・幹部を務める所に予算が大きく割り振られる癒着重視のまつりごとが行われてるって事だね。

なのでその手の貴族は基本的に省庁に所属していても予算請求しか仕事しないし、普段は自分の領地の領地経営に徹してる」


「でも所属してる限り安くない給金が出てるんですよね?」


「うん。真面目に働いてる人達からは普通に恨まれるよね?だからこそ味方作りのために有能な人が居れば娘やら姪やらを嫁がせて姻戚関係を結んで取り込もうって事だろうね」


「そうなんですね」


「家政婦のアルフレーダさんから聞いた話の受け売りだから事実とは異なる可能性もあるよ」


「いや、あってると思います」


「そんな訳で、旦那様も奥方様もお互い仲良くしたい筈。お子さんも産まれてるし、それなりに気を遣って仲良くしてる筈なんだけど…。お二人共、一緒にいて表情が硬い。夜会とかにも無表情で出かけてらっしゃるの」


「ロザリンダさんの影響から抜け出して、奥方様、侯爵様と仲良くできると良いですよね」


「屋敷中の人達がそう思ってるよ」


「でしょうね」


(侯爵夫人が「人を見る目が無い人」だという事はハッキリ分かった)

と一つ学習したジェラルディーナだった…。



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