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「自分の幸せが蜜の味」

挿絵(By みてみん)


王立学院に潜んでいたビビアナ・ドニゼッティが逮捕された。


闇ギルドへの依頼などビビアナには身に覚えがないのに…

依頼を受けた側は

ビビアナの居処

ビビアナとの連絡方法などを知っていた。


女子達の間の「被害者の会」の中にビビアナを嵌めた裏切り者がいた事が明らかになったのだが、証拠は何も残っていない。


巧妙さから察するにレオパルディ公女の息の掛かった令嬢が怪しいと分かるのだが、なにぶん証拠がないのだ。

逆にビビアナが闇ギルドと連絡を取った証拠が出てきた。


大公家、公爵家が絡むと毎度こうやって

「度胸のない小悪党が大それた事をしでかした」

かのように証拠付きで罪が捏造されてしまう。


唆されたドニゼッティ男爵も

嵌められたその養女も

「お気の毒」

と言う他に無いが原因は常に

「人を見る目の無い人間が信用してはならない相手を信用した」

という点にある。


裏切りと欺きが溢れる社会では

「騙される方が悪い(愚か)」

「騙した方は賢い」

という価値観の者達も溢れる。


そういう社会的真実を知るならば

「人を見る目がないのだから悪い事は何もすまい(関わるまい)」

と自粛するのが普通だが


欲が有ると

「悪い事をしながら社会的に通用している者達もいる。真似して何が悪い」

という考え方になってしまう。


そうして

「証拠付きの偽の犯人」

が作られてしまうのだから始末に負えない。


ドニゼッティ家はいよいよもって破滅したのであった…。



********************



サルヴァトーレ・ガストルディは購入したタウンハウスの内装替えを業者に依頼して

(家具はジェリーと見て回らなきゃなぁ)

と思い、早速フラティーニ侯爵邸へ向かった。


ジェラルディーナの外出は流石に非番の日でないと難しい。

ジェラルディーナが仕事の日は

「ちょっと顔を見る」

ついでに

「外出できる日」

を確認に行く事になる。


サルヴァトーレが侯爵邸へ着くと、丁度ジェラルディーナはフラッテロ子爵邸でのお使いを終えてカッリストへ呪具を返却し、ルーベンが書いた魔法陣の写しを渡したところだった。


そんな事もあり、サルヴァトーレへの対面はカッリストも共に行う事になった。


そこでカッリストは

「レオパルディ公女の17歳の誕生パーティーがじきに行われる筈です。我が主人はおそらく呼ばれもしないので贈り物を差し上げる事ができないのです。

そこでレオパルディ公女と懇意なガストルディ侯爵からの贈り物としてとある品を贈って頂きたいのですが」

とサルヴァトーレへ打診した。


「レオパルディ公爵家と当家は全く無縁ですからね。かの公爵家へお祝いの品を贈ろうにも『もらう筋合いがない』と送り返されるのがオチです」

というカッリストの言葉から


ジェラルディーナは

(…もしかしてレオパルディ公爵家に修理した呪具を送りつける気でいる?!)

と気がついた。


呪具の効果はテキメンでありながら

不幸の原因が呪具のせいだと誰も気付かない。


それこそアドリア大陸の記憶がなければ

「珍しい装飾紋様の照明器具魔道具」

にしか見えない事だろう。


「伯父が公女へ贈る品に紛れ込ませて送り付ける事は可能だが、それで肝心のモノは何処に有るんだ?」


「今の時点では壊れてまして、直ぐに修理してからそちらまでお持ちします」


「そちらからの使いがウチへ何か届けた所を使用人らに見られると後々まずい事になるんじゃないのか?」


「その点はご心配なく。人目につかずにお届けします。サルヴァトーレ様は自室に突然こちらの手の者が現れた時に大声をあげたりなさらないでくだされば結構ですので、数日お待ちください」


「夜中に寝込みを襲うのは無しにしてくれよ?」


「承知いたしております」


「なら、良い」

サルヴァトーレはカッリストとの会話を打ち切ると


「ジェリー。実は今日、新居の内装を替える依頼をしたところなんだ。内装に合う家具類を一緒に選んでおきたいので、君の次の非番の日に変更が無いかを確認に来たんだけど、どう?」

とジェラルディーナに尋ねた。


「本当に私が一緒に選んで良いんでしょうか?」


「君が使うんだから、君に選んでもらわなきゃ」


「本当に一緒に暮らす気なんだ?」


「ここの仕事は必ずしも住み込みじゃなくてもできるし、現に何人も通いで働いてるよね」


「…わかりました。一緒に選びます。次の非番の日は前にお伝えした通り、明後日です」


「分かった」

そう言ってサルヴァトーレはジェラルディーナを抱きしめた。


(幸せだなぁ)

とサルヴァトーレは改めて思う。


(世の中にはなんで「他人の不幸は蜜の味」とか思う連中がいるのか本気で理解できないな。どう考えたって「自分の幸せが蜜の味」だろうに)


ジェラルディーナの髪の色が窓から差し込む光に照らされて蜂蜜色に見えるので、余計に蜂蜜を連想した。


「愛してる。早く卒業して一緒に暮らしたい」

サルヴァトーレの言葉に


ジェラルディーナは頷いて

「私もお慕いしてます…」

と頬を染めて答えた。


疑いや迷いがない状態では好意はシンプルだ。


(この人となら、一緒に生きていく未来が見える…)

ジェラルディーナは素直にそう思えた。



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