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互助会的繋がり

挿絵(By みてみん)


ビビアナ・ドニゼッティは王立学院女子寮に匿われていた。


王立学院では

「令嬢側の有責での婚約破棄とする為に令息側が婚約者令嬢を問題有りと周知させる悪評をばら撒く」

という事態が度々起きている。


ゆえに女生徒側の互助会的な集まりが存在する。


実際には恨みつらみを語って共感した後

如何にして「罪に問われぬいやがらせ」をしてやろうか

共謀を目論む寄り合いなのだが…


当人達は「被害者の会」「寄り添い慰め合う無害な会」と主張している。


そんな悪だくみが生みさ出される寄り合いにて

今日も1日の出来事が情報共有された。


「ねぇ、貴女は聞きました?」


「今日は外部の平民女が制服を着て学院に入り込んでたんでしょう?」


「そうそう」


「備品室にまで入り込んでガストーニ令息と内密の話をしてたらしいわね」


「ビビアナさんもショックでしょう?」


「この所の男子達の横暴は酷すぎます…」


「ガストーニ令息の様子からするに、ビビアナさんと婚約破棄する前からあの女に入れ込んでたに違いありません」


「全く令息達は婚約者をなんだと思ってるのかしら!」


皆それぞれに自分の婚約者令息・元婚約者令息に恨みがある。

ビビアナからすれば有り難いことだ。


「トリスターノ様が入れ込んでる女というのは、どういった女だったのでしょうか?身元は分かりませんか?」


「名前などは分かりませんが、見た目が一年のロベルト・フラッテロによく似てるとかで『フラッテロ家』の者なのは確かかと思いますわ」


「しかもロベルト・フラッテロが一緒に行動してたみたいですよね」


「『フラッテロ家』と言えば、刑吏一族。異端審問庁に親族が大勢勤めてらっしゃるお家柄でしょう?」


「濡れ衣を着せられて捕まったら、と思うと恐ろしいわ」


自分の婚約者に(元婚約者に)恨みがある令嬢達はフラッテロ家に関して好き勝手に言う。


刑吏一族への差別を正当化する人達が一番使う言い訳が

「濡れ衣を着せられて捕まった人達もいた筈」

という理屈。

無罪の人間を苦しめた事のある連中に対しては問答無用に嫌悪感を持ち差別しても良いのだという発想だ。


「他人を苦しめてお金を儲ける刑吏一族など、呪われるべき人種だわ…」

と本気で思っている人達は本当に始末に負えないのである。



********************



闇ギルド。

いわゆる暗殺者ギルドを貴族と癒着のない平民階級による下剋上組織と勘違いをする庶民は多い。


実際、異端審問庁が弱体化している国では闇ギルドは異邦権力による運営で成り立ち、その国の権力基盤を揺るがす力を持つ。


しかし異端審問庁が目を光らせている国では闇ギルドは国家権力の裏の顔である事が多い。


アングラ社会で自国民が実権を握っているのか、異邦人組織が実権を握っているのか、その違いで闇ギルドは大きく方向性をたがえる。


リベラトーレ公国の場合、国の上層部が三つに分かれている事を反映して裏社会も同じように権力が分散している。

他国につけ込まれやすい状態だ。


伝統保持派と異邦勢力。

その二つの流れに属する闇ギルドの暗殺者達は、これまでにも度々刑吏一族の屋敷を襲撃してきた。


フラティーニ侯爵邸には何度も襲撃を仕掛けているので、その度に生き残りが建物内部の構造を伝達するのでフラティーニ侯爵邸の情報は随分と集まっている。


地下室や隠し部屋の存在も知られていて、襲撃は回を重ねるごとに被害者を多く出すようになってきていた。


「う〜ん…。今度の依頼者はガキか…。金は前払いで貰ってるから良いが、物騒なもんだな。今時は王立学院の学生が闇ギルドに暗殺を依頼するなんてな」


フラティーニ侯爵邸に襲撃を仕掛けて、どさくさに紛れて侍女のジェラルディーナ・フラッテロを殺すように、との依頼だ。


深夜に襲撃する事になるので、標的の深夜の所在地、つまり自室の場所を把握しておく必要がある。

ただ襲撃して誰でも良いから殺しておくのと違って手間がかかる。

料金もその分高めの設定になったが先払いで支払われている。


「ドニゼッティ男爵令嬢からの遣いだとか言ってたが、当主が逮捕された男爵家の養女がなんでこんな大金をポンと払えるんだ?」

と気にはなるが、深読みし過ぎるのも藪蛇かも知れない…。


暗殺者は犯罪に関する情報には耳聡い。

ドニゼッティ男爵が捕まり、養女の令嬢には任意の事情聴取名目で出頭が促されている状態。


(金のある誰かが殺人の濡れ衣を着せようとしてドニゼッティ男爵令嬢の名前を騙っているだけかも知れないが…)


「貰った金の分は仕事をしなきゃ仕方ない」

(そうしないと信用を失い、二度とギルドに依頼が来なくなる)

と割り切るしかないのが雇われ暗殺者なのであった…。



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