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裏切りと欺き

挿絵(By みてみん)


ロザリンダはそうした事情で、二度とフラティーニ侯爵邸に戻らなかった。


「未婚なのに子供がいて、しかもそれが公爵の子かも知れないだなんて、スキャンダラスなオバサンだよね〜」

フランカが呆れるのも尤もだ。


何せ

「リベラート公爵ってまだ若いんだよね?」

年齢差がある。


「ここの旦那様、奥方様と同じ歳らしいね」


「ロザリンダさんが33歳だって噂が本当なら11歳差だよね」


「男が11歳歳上だと、それなりにそういう夫婦はいるのにね」


「女性の場合は出産適齢期がそんなに長くないから」


「だよね」


「にしても33歳のオバサンが22歳の若きイケメン公爵を引っ掛けるなんて…。すごい度胸と運だよね。見習うべきなのかな?もしかして」


「フランカはロザリンダさんの事故が本当に偶然だと思うんだ?」


「いや、まさか。天罰でしょう」


「………」

(天罰というより「人為的罰」のような…)


「坊っちゃまの乳母も辞めるって話だったね」


「乳が出なくなっただけじゃなくて、スザンナさんの旦那さんが家に若い女を引き込んで暮らし出したとかって話だし、やっぱり乳飲み子抱えて離れて暮らすのって家庭崩壊の元なんだよ、きっと」


「ストレスでお乳が出なくなったのかな」


「そうなんじゃない?スザンナの旦那さんが浮気してる疑惑は以前からあったらしくて、それが隠しもせずに家にまで引き込んで四六時中人目も憚らずベタベタしてれば離れて暮らしてる嫁の耳にも入るって」


「男の人って、やっぱり隙あらば浮気する生き物なんだ?」


「…嫉妬する感情がない間柄でも表向き婚約者とか表向き夫である男が堂々と他の女とイチャイチャしてたら、そりゃあ『お前には魅力がない』って言われて恥をかかされてるようなものだから腹が立つと思うよ」


「浮気を余りにも堂々と行うのは、パートナーの顔を潰す行為だと?」


「そう。世の中には他所様の家の事情なんて何も知らずに好き勝手に悪口を言う人も多いし、そうやって作られた偏見に従って差別的な態度でいやがらせをする人も多い。

堂々と浮気しておいて『実は嫁がとんでもない悪妻だったので、辛くてしかたなかった』と言い張る男の側の自己正当化虚言を敢えて信じて、裏切られた被害者の方を悪く言って皆で虐げて楽しむ人達も出てくる。

スザンナは今後そういう目に遭うのだろうけど、アタシ達も『結婚生活にはそんな落とし穴がある』って、ちゃんと理解しておかなきゃならないと思う。

ルドワイヤン公国流の『女の地獄』って、それ以外の国にも多少なりとも有るって事だよね」


「そうなんだね…」


ロザリンダとスザンナが屋敷から姿を消すだけで、使用人達の空気が活気付いた。

こういう側面で初めて

「元々嫌いだった」

という感情が抑圧から解放される。


スザンナはロザリンダ以上に嫌われていたようで

(どうやら誰彼構わず屋敷内の使用人達にフラティーニ侯爵の悪口を吹き込もうとしていたらしい)

「浮気されてストレスで乳が出なくなり退職した乳母」

という可哀想な身の上にも関わらず、皆の陰口は辛辣を極めた。


意外にも男性使用人の方が女性使用人よりもスザンナを嫌っていたらしく

その悪口はエログロ混じりの極めて下品なもので…

完全に他人事のジェラルディーナでさえ

「聞いてたら吐き気がしてくる」

ように感じた。


皆が恩を感じている旦那様の悪口を始終言い続けるという愚行は、かなりこの屋敷内において顰蹙を買っていたという事だ。


(アベラルド様、使用人達に本当に愛されてるんだなぁ…)

と思った。


そういった

「愛される人徳」

がもしかしたら

「彼の魂の兄弟姉妹から搾取された徳力ゆえ」

なのかも知れないので微妙に複雑な気がするが…


身を寄せる屋敷の主人としてはアベラルド・フラティーニ侯爵は理想的な人物なのだと改めて悟ったジェラルディーナなのであった。



********************



ダレッシオに戻ったヴェルゴーニャことポンペオ・フォルミッリは依頼通りに調査を行った。


(大したことは分からないだろう)

と思ったものの…

意外に不審な人間が多い。


(…アルカンタル王国の予言者関連の情報にはならず、おそらくアルカンタル人を自称するルドワイヤン人らの怪しい動きが浮き彫りになりそうだ…)

とビミョーにポンペオは気が滅入った。


ルドワイヤン公国はフォルミッリ家のルーツ国でもある。

余りオカシナ悪さをリベラトーレ公国でやって欲しくはないのだが、そういったこちら側の心情を無視するように悪どいいやがらせを仕掛けてくるのがルドワイヤン人という人種なのだ。


ダレッシオに入って来た時には流れ者の芸術家を気取ったルドワイヤン人として入国しているが、何故か途中で国籍の詐称を行い、姿も職業も変えて

「アルカンタル人商人だ」

と言い出してアルカンタル王国へと帰郷を装い流れていく。

そんな不審なルドワイヤン人がチラホラいた。


その手の輩はアルカンタル王国内では

「リベラトーレ人だ」

と詐称して悪さをしそうだ。


周辺国で組織犯罪を行いながら

国籍詐称する事で

自国を除いた周辺国同士の仲を悪くさせる。


そういった悪どい国際的誣告犯罪を兼ねた攻撃も存在する。

ルドワイヤン人の得意分野というやつだ。


ルドワイヤン人は

「裏切りと欺きの民族」

としてラスティマ圏全域で周知されている。

ある意味でルドワイヤン系帰化人は

「ルーツがルドワイヤンである事が恥ずかしくてならない」

のだ。


それもまぁ

「誠実な人間に限っては」

の話だが…。



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