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「積荷」

【みてみんメンテナンス中のため画像は表示されません】


ヴェルゴーニャと呼ばれる男、ポンペオ・フォルミッリは混乱した。


ダレッシオにおいては異端審問は異端審問庁によってではなく教皇庁によって行われるので、ダレッシオの住人達は異端審問庁職員、いわゆる異端審問官に関してろくに知らないのである。


見慣れないよそ者の少年が来たかと思えば

「…金は払う。積荷を運んでもらいたいんで、ヴェルゴーニャ氏に仲介して欲しいんだ」

とウエイターに告げた。


ヴェルゴーニャことポンペオ本人は少年のすぐそばに座っていたが

「積荷の大きさ、重さと運搬料がどのくらいか聞かせてもらおうか。仲介するかどうか検討してもらうのはそれからだ」

と咄嗟にヴェルゴーニャが自分ではないフリをして低い声で囁いた。


少年が

「荷物は体長1.6メルタほど、重さは50ウエイトくらい。運搬料は首都ロッリの異端審問庁本部まで100万ディアム。会計のフラッテロ子爵の支払いで」

と告げたので


暗に

「身を隠したまま、この町から出たい」

と言ってるのだと分かった。


身を隠したい人間は自分の身長と体重を告げるのが普通だ。


特に変わった事は言っていないし

(「教皇派の回し者じゃない」とハッキリさせたくて異端審問庁の人間だと示してるんだろうが…)

ダレッシオのような異端審問所がない町では異端審問庁関係者は胡散臭い存在だ。


かと言って露骨に敵視すればどんな言い掛かりを付けられるか分かったものじゃない。


「…なるほど。合い言葉は?」

と訊くと


「デップ・エジーリョ」

と正解が返ってきた。


まだ年若いが異端審問官の可能性がある。


「…そうか。…一番大事な質問だが。依頼主であるお前本人の身元は何処の誰だ?」

という質問には


「…刑史一族フラッテロ家の次男ジェラルディーノ」

と直球で返された。


(情報網で身元の確認はすぐ取れる筈。失踪中の異端審問官の名前リストに無ければ、それを理由に断れば良い…)

という判断で依頼を引き受けるかどうかは棚上げ。


「…分かった。首領にはちゃんと伝えておく。明日また同じ時間に来い」

と告げたが


「泊まる場所がない。此処で待ってるから急いで用件を取り継いでもらえないか?」

との事。


「…フードを脱いでみろ。仮の居場所をやるかどうかはお前の面の出来次第だ。何の代償も無しに匿って貰えると思うな」

と脅すと


フードの中からくっきりした美しい目元が現れた…。


「分かった」

と、すぐにまたフードをかぶせ


「すぐ戻る」

と言って酒場の2階へ上がり


「失踪中の異端審問官のリストにジェラルディーノ・フラッテロの名前が有るかどうか確認しろ」

と指示を出して


階段から階下を覗き込み

「来い」

と少年に声を掛けた…。


二階の一室へ引き込んで詳しく話を聞こうと思ったのだ


がーー

2階の個室に入った途端

少年が服を脱ぎ出したのでポンペオは混乱した。


「えっ?」

と思わず素で驚いた声が漏れてしまった。


(えぇぇぇぇぇぇ…(汗)。何だ、この迷いの無さは…)


性的奉仕の強制を仄めかしたのはただの脅しだ…。

単に目元をシッカリ見ておきたかっただけで。


実際、ポンペオは少年愛には興味がない。


子供にその手の奉仕をさせるのが

「後々まで頭を上げられないように踏みつけておくマウンティング行為だ」

と理解しているが…


「後々まで『お前は掘られる側だ』と暗に仄めかして去勢し続ける」

切り札作りのために、そういう行為を行う事には抵抗を感じる。


(…そういうのは同じ枠内の司令系統の盤石化のためにやるものであって、わざわざよそ者にやるものじゃないんだよな…)

と思い、思わず頭痛を感じてコメカミを揉んだ。


「あ、いや、服は脱がなくて良い」

と告げるが


「着衣のままのご奉仕がお好みですか?」

と訊かれた。


「…うん。ごめん。俺、実は子供とそういう事するのは苦手なんだ。さっきのはお前の顔を確認するための方便と脅しだ」


壁の薄い隣室には配下の者達が潜んでいて聞き耳を立てている。


暗殺者を警戒する分には頼もしいが…

イロゴトの最中にも聞き耳を立てられている事を思うと、勃った筈のモノも萎えそうになる…。


好色でもないし、聞かれながらやる性行為も気乗りしないので、正直な意図を説明して、少年との間の妙な雰囲気を払拭した。


「…そうなんですね」


「とにかく、何か事情があって此処に居るのなら、その辺の事情を教えてもらえないか?お前からドブの匂いがするからには教皇派のアジトが関連して何か面倒な事になってるんだろう?」


「そうですね…。何から話しましょうか?」


「まぁ、順を追って、ゆっくりことの顛末を説明してくれ」


「分かりました」


そう言って、少年は自分の身に降りかかった災難に関して話し出した…。



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