此処はこの世の地獄かな?
(此処はこの世の地獄かな?…)
ジェリーは頭痛がして思わずコメカミを揉んだ…。
「今頃、アイツ死んでくれてるかな?」
「鰐に食い散らかされた死体なんて気持ち悪い」
「前の犠牲者の時は死体回収は教務官達だけでやってくれてたよな」
「肉片拾う役目は振られないだろうけど、しばらく食欲ないかも」
「未だに鰐を殺処分してくれてないのって、やっぱりわざと?」
などと真向かいの牢の連中が話し合っているのだ。
連中、どうやら皆でイジメていた子を
「鰐が出た」
という目撃情報のある区画で
「縛り上げて置き去りにしてきた」
らしい。
「………」
ジェリーは絶句した。
(殺す気満々だ…)
「…絶対、頭おかしい…」
思わず小声で言葉が漏れた。
イジメと言うものは嫌悪対象の排除。
精神安定のための不安定要素の排除。
謂わば自己防衛の一種、の筈。
(…相手を殺すようなイジメを「自己防衛」だと見做して正当化するのは難しい…)
ジェリーは内心で
(コイツらこそ死ねば良いのに)
と思ってしまった…。
(…別にイジメられっ子に好意を持っている訳でもないけど)
流石に全く共感できない連中の悪行を一緒に楽しむ感性はない。
寧ろ拒絶反応が起こる。
同じ牢の中ではウルとリオが
「アイツら…流石に怒られると思うけど、教務官達の倫理観とか価値基準ってどうなってるんだろうな」
「そう言えば、教務官達って怒るツボが色々おかしいよな」
とヒソヒソ話し合っている。
「嫌いな相手を鰐に喰わせて殺す」
ような殺人を嬉々としてイジメの一環として行う連中など…
普通の大人なら絶対に怒るし懲罰対象にする筈だが。
此処の教務官達の場合…
「本当に彼らは怒るだろうか?」
という点での人倫がかなり心もとない。
傍目にもイジメがある事は見え見えなのに
一度も注意した事がないのだ。
それどころか冷静にメモを取っていたりする。
一体何を考えているのか判らず不気味だ。
「………」
(…まだ、あの子が生きてるなら、縄を切ってあげるくらいの事はしておかないと寝覚めが悪い…)
ジェリーは無言で共同部屋を(牢を)出て
独り下水路へと向かったーー。
120話完結。