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突っ込んでこないでくれますか
「なんか辛い事でもあったんですか」
「俺……」
まるで本当に心配してるかのような優しい声色。
もうどうしていいかわからなくなっていた。
「……いえ、もういいです。帰るので……!」
―――ばかだ、私
その場にいるのがいたたまれなくなって
私は横断歩道を突っ切るように走った。
「ちょっ……まっ……」
なおもアイツは、天原は私を呼び止めようとしてくる。
ふと振り向くと彼が横断歩道を走ってこようとしていたのだが、
そこに一台の乗用車が突っ込んできているのが見えた。
―――危ないっ!!
なぜそうしようと思ったのかわからない。
私はとっさに飛び出して彼を突き飛ばした。
だが、悲しいかな女の非力な力では映画のようにはいかなかった。
そう、一緒に車にはねられたのだ。
強烈な衝撃と耳鳴りのようなキーンという音。
自分の手足の感覚はなくなり、持っていた花束の花びらが散っている。
―――あ、宅配……明日、キャンセル、しなきゃ
などと能天気な事を考える。
意識は薄れ、誰かの声が聞こえた気がする。
それは若い女と……いや、もうわからない。
沈んでいく。
なにもかもが。
...
......
..........




