馬鹿にしないでくれませんか
「碧空主任―――まって!!」
息を切らして走ってきたのは、天原だ。
手には花束と紙袋をもっていた。
「急に店出ちゃうんですもん、びっくりしたっすよ!」
「……すみません、体調が優れなかったので」
「まじすか!?大丈夫です??」
「はい……」
天原は本気で心配をしているかのような表情を浮かべている。
とんだ役者だなと心の中で笑う。
自分が彼女を仕向けたくせに。
「もしかして」
「俺が彼氏がいるかとか聞いたからっすか?」
―――何言ってんだこいつ?うっざ……
「違いますよ」
「な、ならいいんすけど。あ、それでこれ……みんなからの花束とプレゼント!」
「シメに渡そうと思ってたんすけど、いなくなっちゃったんで……」
「……ありがとうございます」
なんか、余計に悲しくなってきた。
もしかして全員から馬鹿にされてたりするんじゃないだろうか。
そんなことを思っていると、目がどんどん熱くなってきた。
はやくもどってくんないかな。
「いや~寂しいっすねぇ……福岡まじいったことないんで」
「週末俺もいってみようかな!?」
「あのさ……」
もうこれ以上バカにされるのも
みじめな思いをするのもごめんだよ。
「なんでそんな風にいちいち私に絡んでくるのかな?」
「アンタたちになんでそんな風にバカにされなきゃいけないの?」
ああ、言っちゃった。
でもこうなったら止まらないってわかってる。
アイツは豆鉄砲くらったみたいな反応でキョトンとしている。
「え……」
「わたし、が、どんな思いで……」
だめだ、言葉が詰まる。
吐きそう。
「彼氏?いないよ!いなかったら悪い!?年増女が職場にいてうざい!?」
「若い俺が絡んでやってるのに~とでも思ってんの???」
「わたしだって、私だって努力してる!運動だって、美容だって……」
何言ってんだ私。
「ばかにしないで……」
足元に滴がポロポロと流れ出す。
目の前の横断歩道の信号は涙で霞んでいた。




