帰らせてくれませんか
自分のテーブルに戻った私は、前髪で腫れた目を隠すようにしていた。
賑やかな宴会の場と対照的な自分が惨めに感じられた。
―――まだ、みてるよ
相も変わらず敵意むき出しの女性社員は視界の隅に見え隠れしている。
どんな送迎会だよと心の中で突っ込む。
そして意を決して、森田課長の所に私は向かった。
「……すみません、飲み過ぎたせいか気分が優れないのでこれで失礼させていただきます」
「大丈夫ですか?……確かに顔が赤くなっていますね。送っていきますよ」
「へ?え、いや、課長も呑まれてらっしゃるのではないですか?」
「ああ、これですか。ノンアルコールビールですよ。お酒、苦手なので」
「そうだったんですか。……いえ、気になさらず。少し、一人になりたいので」
私の言葉に森田課長は一瞬なにかを言いかけたが、口を閉ざした。
「わかりました。もう遅いですからお気を付けて」
「はい、お先に失礼いたします」
私はバックを取り、足早に店の出口に向かう。
「あれ?」という声が聞こえたような気がしたが歩みは止めなかった。
外に出るとまだ夜は肌寒かったが、火照った自分にはちょうどよかった。
やっと一人に鳴れたという安堵。
そしてこの心の苦しさをとにかく誰かに聞いてほしかった。
―――電車、すぐ来ればいいんだけど
駅に向かいながらスマホで時刻表を確認しようとする。
その時、聞いたことのある声が背後から私を呼び止めた。
私が振り返ると、そこにいたのは―――
大嫌いなアイツだった。




