踏み台にしないでくれませんか
送迎会もようやく終わりの雰囲気が近づき、私はトイレに席を立った。
そして通路を歩く際に一人の女の子が視界に入ってきた。
―――なんか見覚えがある……けど?
その可愛らしい女の子は何故だか私を睨みつけている。
いや、こわすぎ。だれだよ。
すごい形相なんだけど……。
「あの」
通り過ぎようとした私を、その子が呼び止めてきた。
「はい?」
「碧空主任。悠真くんにちょっかいだすのやめてもらえませんか?」
「え?」
「彼すごく迷惑そうなんで。……はやく転勤してほしいんだけど」
「おばさんのくせに……色気づくなよ」
「は?」
その女は吐き捨てるように言うと、席を立ってアイツの所へ向かっていった。
わざとらしく腕に手をまわして。
―――ちょっとまって、なんなの!?
衝撃的過ぎて何も言い返せなかった。
いや、私がアイツにちょっかいだしてると思ってるの?
まじ???
私はトイレの個室に入り座ると、頭を抱えた。
自然と目頭が熱くなる感覚を覚えた。
あんなこと言われて何も言い返せない自分に情けない。
―――ああ、あの女……アイツの彼女だっけ
ようやく思い出した。
そういえばそうだった。
彼氏が別の女に近づいたから釘をさしたってこと?
「は……なにそれ」
個室の中で呟きがもれる。
アイツがそうやって近づいたのも嫉妬させて楽しむためか。
とことん馬鹿にされてるってわけね。
―――はぁ、しんど




