どうしてきくんですか
同僚の天原悠真だ。
この若い男は、事あるごとに私にちょっかいをかけてくる。
資料のコピーをわざわざ私がコピー機にいる時に頼んでくる。
わざわざよ?
あるいは給湯室で紅茶を淹れていれば
「へえ~碧空さんて見かけによらず、そういうの飲むんすね」
なんて言ってくる。
鼻の下伸ばした笑いを浮かべて。
どうでもいいでしょ、ほんとうざい。
どんな笑い方だよ……。
……え?気があるからちょっかいかけてるんじゃないかって?
それは大きな間違い。
だって、あいつ彼女いるんだから。
しかも聞いた話じゃ半年ほどでどんどん女をとっかえひっかえ。
チャラい男ってほんと無理。
付き合ってる女は会社にもいた。
若くて、かわいくて、まるで自分が主人公だっていわんばかりの子だった。
きっと人生苦労したことなんてないんだ。
私は、自分にカメラが向けられた事なんてない。
どこにでもいる、景色を埋めるだけのモブが私。
声を掛けてくるのはスカウトの詐欺か客引きのお兄さんぐらい。
そんな私をからかって、裏でもバカにしてるであろう大嫌いなアイツ。
問題起こしてクビにでもなってくれたらスッキリするのに。
なんて思ってた私にある日転機が訪れた。
別の営業所に転勤になったからだ。
東京から福岡の大移動だけど……まあ、今の状況考えたらむしろ気楽かな。
唯一心残りがあるとしたら、それは森田課長のことだ。
若くして課長にまでなった、うちの会社のエース。
事あるごとに絡んでくるアイツをいなしてくれたのも営業の森田課長だった。
そして、転勤が決まった日に森田課長が送迎会を企画してくれたんだ。
正直そういう飲み会は苦手なんだけど、最後の機会だと思って参加した。
それが、本当の転機だったんだ。




