朝からですか
青紫のぼうっとした灯りが漆黒の空間を照らす。
そこはまるでおとぎ話に出てきそうな宴会場だった。
「偉大なる我らが主よ、どうぞその喉を潤してくださいませ」
血の気のない肌のメイドが私にかしづく。
ワインボトルらしきものを傾け、グラスに注いでいく―――
……杯を満たす鮮血のような赤い液体。
「寝起きからワイン―――?」
自然と口からその疑問が漏れ出した。
だってそうでしょう?
ていうかほんとうにワインなのかな?
なんかどろっとしてる。
恐る恐るグラスを口に傾け、口にふくんでみる。
ゴク。
……おいしい。
形容しがたい味わいだが、のどをならしながら私は飲み干した。
ときおり果実のような風味が広がり
それがまた舌を喜ばせたのだ。
「お気に召していただけたでしょうか?」
青白い肌のメイドがそう私に問いかけた。
彼女の表情に浮かぶのは不安と恐怖だったように思う。
「あ……おいしい、ですよ」
「まあ!それはそれは……恐悦至極でございます……」
メイドの肌がすこし赤みが入ったような気がした。
少し離れた場所で執事の男性がこちらに頭を垂れている。
そう、タナトスとかいった少しキザな男だ―――
「昨晩収穫したてでございますゆえ、よろしければおかわりを……」
昨晩?ふつう朝摘んだとかだと思ったけど違うんだ。
でもこんな心惹かれる飲み物は断る理由ないよね。
「ぜひ飲みたいです!」
「かしこまりました」
あきらかに異質で不気味な空間なはずなのに
私は満たされた気分で酔いしれていた。
―――やっぱり寝起きでワインなんてやばすぎる
そう、思っていたのだ。
その時は。




