アラームだれかとめましたか
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「ん~……ぐぐううう」
心地の良い感覚に包まれていた私は、産声をあげるかのように声を出した。
変な夢を見た気がするが、なんとも心地よい感覚に包まれていた。
寝起きはたいてい辛いもので、アラームを数分ごとに設定しなければ起きられない。
ところが今日は起きれたのだ。
―――なんか、花のようないいニオイがするなあ
こんなアロマ買ってあったっけ?
ていうか仕事の引継ぎしないと……などと考えて、目を開ける。
そこにあった風景を見て私は絶句する。
―――知らない天井どころか、知らない部屋……!?
天蓋付きのベッドの上、身体は柔らかくも重厚な黒いシーツに沈んでいる。
天井を見上げると漆黒の帳が広がり、
金糸で紡がれた奇妙な紋様が絡み合うように輝いていた。
微かに漂う香りは甘く、しかしどこか鋭く鼻を刺すような、
深紅の薔薇の芳香。
それは自分の好みの香りではなかった。
―――どんな趣味なわけこれ……まだ夢の中?
ゆっくりと首を巡らせると、
部屋の中は全体的に闇を帯びた妖艶な装飾で統一されていた。
壁には黒檀のパネルがはめ込まれ、その上に銀細工の燭台が立ち並んでいる。
揺れる青白い炎がまるで生き物のように脈打ちながら壁に影を作り、
ひとつ、またひとつと形を変えていく。
「お目覚めになられましたか?」
不意にかけられた声に、私の心臓は跳ねた。
穏やかでありながら、どこか冷たく響く低音。
その方向へ視線を向けると、そこには男が立っていた。