また招待?!
ジェシー王子に会ってから二週間が過ぎた。
「本当、あの日アシュリー様がボロボロの格好で戻ってきた時は心臓が止まるかと思いました、、」
夕食後のお茶を飲みながらヴェラはアシュリーを見つめて言った。
「ごめんね、あの日は本当に最悪で、、思い出したく無いの。」
アシュリーは窓から見える月を見つめ言った。
あの日のジェシー王子の顔が忘れられない、、。
まるで女性のような美しさと、柔らかい物腰、可愛らしい王子様。
思い出すと胸がときめく。
でも、もう会う事は無いから良い思い出ね。
アシュリーはジェシーに貰ったハンカチを取り出し見つめた。
しかし翌朝、とんでもない事が起きた。
朝起きると家の前に帝国の紋章が入った馬車が停められており、中からキックスとメイドが一人現れた。
「アシュリー様、お久しぶりでございます」
キックスは呆然としているアシュリーに声をかけた。
「これは、、一体?」
アシュリーとヴェラは頭が回らない。
「アシュリー様、今日は先日行われたパーティーでジェシー様のお声がかかった姫や令嬢だけが集まる舞踏会がございます。」
「、、はあ、、」
アシュリーは回らない頭をなんとか動かしながら返事をした。
「それでお迎えに参りました。」
「、、、え?!」
二人は混乱して理解できない。
「ささ、時間がございませんゆえ、こちらのドレスに着替えて頂き一緒に城に参りましょう」
キックスはそう言ってメイドに指示をし、メイドは呆然とするアシュリーをヴェラの案内で部屋に連れて行き着替えさせ髪を結い上げ装飾品をつけて馬車に乗せようとした。
「ちょ、ちょっとお待ちください!!私行きません!!」
アシュリーは家の柱にしがみつき抵抗をした。
しかし呆気なくキックスに抱きかかえられ馬車に乗せられ城に連れてゆかれた。
「ちょっと、、キックス様、これは一体??」
アシュリーは混乱している。
「ジェシー様がアシュリー様を迎えにゆくようにと、、前日だったら逃げられるから当日の朝に行けと言われ、、」
キックスは笑いながらアシュリーに説明している。
「、、、意味がわからないです。私言いましたよね?二度と参りませんと」
アシュリーはあの日ジェシー本人に言った、、はず。
「ええ、伺っておりますが、ジェシー様は気にしないと仰って」
?!なにそれ?
「え?いや待って下さい、、王子様が気にしないじゃなくて、私が会いたくないと言うのは無視?」
訳がわからず混乱してきた。
「そうですね、ジェシー様はまだまだ可愛らしいところがおありで、それが女性の母性をくすぐるとか、、」
そんなことどうでも良い、私は行かないと言ったのに?!
「、、、私は行きたくないとお伝えしましたよね、、」
アシュリーはため息を吐きながらもう一度言った。
「ええ、伺っております。」
、、、。
「もう!キックス様そればっかり!私、終わるまで隠れてても良いでしょうか?」
アシュリーは向かいに座るキックスの方に身を乗り出し確認するように言った。
「アシュリー様、城の中で隠れてもジェシー様は必ず見つけますよ。」
キックスは逃げるのは無理だと言わんばかりに言った。
「本当でしょうか?私、、試したいです。キックス様、お願い。城には行きますからその後は見逃して下さい」
アシュリーは両手を組んで神に祈るようなそぶりをしながら言った。
「アハハハ!アシュリー様にはかないません。」
キックスは認めてくれた。
「ありがとうございます!」
アシュリーはひとまず気持ちを落ち着けようとした。
、、、。このドレス、、可愛い。
ペパーミントグリーンのドレス。質の良いシルクが使われている。大きなリボンが背中についていて妖精の羽のようで、、。
このネックレスもイヤリングも一級品。
ジェシー王子はこの間私があんなことを言ったから可哀想に思って用意して下さったんだ、、、。
でも、こんなことしてほしく無い。一度夢を見ると夢から醒めた時が辛いから。
とにかく、城に着いたらすぐに、、すぐに隠れよう。
「あ、キックス様、ロイスはいつも庭園にいるんですか?」
ロイスに見つかったら一巻の終わりだ。
「いえ、ロイスは庭園にはおりませんのでご安心下さい。ただジェシー様はアシュリー様を見つけると思いますよ。」
キックスは自信あり気に断言した。
「え、そこまで言われるとちょっと、、本気で隠れたくなりますね」
アシュリーは瞳を輝かせながらキックスに言った。
「アシュリー様は本当に愉快な方で、ジェシー様が会いたいと思うお気持ちが理解できます。」
キックスは満遍の笑顔でアシュリーをみて言った。
「え?王子は私に会いたいと仰ったのですか?」
アシュリーは驚いた。
「ええ,そうですよ」
「、、絶対にその手に乗りません。ジェシー様の殺し文句?恐らく、、、気をつけなきゃ」
会いたい?、、。そんな訳,,ないよね。
「アハハハ、アシュリー様は本当に素敵なレディですね。」
キックスは笑いを堪えながら言った。
「、、もう、それ褒め言葉に聞こえませんよ、、あ、もう着きそうですね」
アシュリーはそびえ立つ要塞を見つめて言った。