ジェシーとの再会
騎士が先に馬車を降りアシュリーに手を差し伸べた。
騎士の手に手を添えて馬車を降り、目の前の城を見上げた。
要塞のような大きな城がそびえ立っていた。
「あ、やっぱり帰ります。」
アシュリーは急に怖くなり馬車の中に戻った。
「アシュリー様!!なりません」
騎士は必死でアシュリーを説得するがアシュリーは馬車の中の手すりにしがみつき動かない。
「致し方がない。失礼!」
騎士はアシュリーを抱えて馬車を出た。
「きゃー!!ちょ,ちょっとあなた?!降ろして下さい!私は行きたくありません!ちょっと!」
アシュリーは暴れ始めた。
こんな立派なお城に土で汚れたワンピースを着てイヤリングだって片方しかない平民が入れる訳がない。
恥ずかしくて死んじゃうかも、、そう思い、必死になって手足動かし逃げようと暴れた。
「おお、アシュリー様は力がお強いですね」騎士は笑っている。
「そうですよ!私働いているんです!大きな野菜だって持つんですよ!!」
アシュリーは余裕ある騎士の態度に腹が立った。レディをこんな扱いするなんて!!
「ハハハ、アシュリー様は楽しい方ですね!」
騎士は人懐っこい笑顔を見せてアシュリーに笑いかけた。
「全然楽しくありません!!!」
アッシュは必死で抵抗しつつ、この騎士は悪い人ではないと思った。
「アシュリー様は逞しい方だ!アハハハ」
騎士は豪快に笑い始めた。
「あの、、そんなに笑われるとなんだか腹が立ちます。」
アシュリーはそう言って静かになった。
「ん?どうなさいました?急に静かになりましたね」
騎士が一瞬油断をした。
「今よ!!」
アシュリーは騎士の腕を噛み騎士の腕からするりと逃げた。
「痛!!あ、アシュリー様お待ちください」
騎士は慌ててアシュリーを追いかけていった。
アシュリーは走って薄暗くなった庭園に逃げ込んだ。
「アシュリー様!お待ちください!」
騎士も庭園に入り追いかけてきた。
アシュリーは迷路のようになっている庭園の木と木の細い隙間から違う通路に移動しながら騎士を撒いた。
「どうしよう!!」
騎士を撒いたのは良いが、逃げる時枝にワンピースを引っ掛け所々破れてしまった。
このままじゃ帰れない。城からも出られない。
どうしよう!
アシュリーは半泣きになって左右を見ながらどこに逃げたらいいのか立ち止まって考えた。
「誰かいるの?」
背後から声がしアシュリーはビクッと体が硬直し、恐る恐る振り向いた。
そこには幼い頃に一度だけ見たあの美しい王子様が立っていた。
アシュリーを見つめる水色の瞳は夕日を受けて輝き、
見つめられただけで時が止まったように感じた。
白い上下のスーツに青いマントはその美しさをより一層引き立てて
同じ人間に思えないほど素敵な王子に成長していた。
見惚れていたアシュリーは我にかえり慌てて弁明を始めた。
「あ、驚かせてしまい申し訳ありません、、ちょっと道に迷ってしまい、、お城に入り込んでしまって、、。」
美しく成長したジェシー王子を見て
こんなボロボロの女の子が今日のパーティーに呼ばれていたなんて恥ずかしくて言えない。
「失礼いたしました」
アシュリーは咄嗟に嘘を言ってその場から離れようとした。
立ち去ろうとするアシュリーに
「君はお城に迷い込んでしまったのかい?」
ジェシー王子は首を傾けいたずらっ子のような可愛い笑顔を浮かべアシュリーに聞いた。
「ええ、まあ、それに近いと言えば、、」
その笑顔をみたアシュリーは心臓の鼓動が早くなったように感じ、しどろもどろに答えた。
ジェシー王子はアシュリーを見つめて
「手を、、木で引っ掻いて怪我しているね、手当をしよう」
そう言って近づいてきた。
きゃー近寄らないで!!アシュリーは恥ずかしくなり言った。
「あ、近づくと噛みますよ!私は凶暴なんです。」
アシュリーは自分を見られる事が恥ずかしくなり後退りした。
「君は私を噛むの?」
ジェシー王子は目をまんまるにして笑いながら聞いた。
何?すっごく可愛い顔、、どうしようなんだか変な気分だわ、
「ええ、噛みます。だから、、お逃げください」
アシュリーはさらに後退りをしながらジェシーを見つめ自分の顔が赤くなるのを感じた。
「君は私を襲うの?」
ジェシー王子は水色の瞳をキラキラと輝かせて楽しそうに聞いてきた。
「、、いえ、、あの、、」
ジェシーの美しさに戸惑いながら答えようとした時、先程の騎士が現れた
「あ、ジェシー様!、、あ、アッシュリー様も?」
「きゃー見つかってしまった!」
アシュリーは両手を口に当てて立ち尽くした。
「やはりアシュリーか。君は今日来なかったね、、」
ジェシーはアシュリーを見つめて言った。
私を知っていたの?
アシュリーは不思議に思ったが、もうバレてしまった。
すぐに姿勢を正しワンピースのスカートを持ち上げ挨拶をした。
「、、ジェシー様、アシュリーと申します。本日はお招き頂いたのですが、、こんな時間になってしまい、、申し訳ありません。」
「アシュリー、会えて嬉しいよ」
ジェシーはアシュリーの手をそっと取り手の甲にキスをしてアシュリーを見つめた。
「ジェシー様、、令嬢でも、、姫でも、ない、ただのアシュリーと申します。本当はこのような所に来て良い身分ではございませんので、、」
アシュリーはジェシーにそんな挨拶をされ身分不相応だと思い手が震えた。その手をそっと引きながら答えた。
「ので?」
ジェシー王子は姿勢を正しアシュリーを見つめて聞いた。
「帰って良いでしょうか?」
アシュリーはジェシー王子を真っ直ぐ見つめながら言った。