怖気付く
アシュリーは城に向かったがなかなか辿り着かない。
城が大きく見えたので近いかと思ったが歩けば歩くほど遠く離れてゆく。
「これは完全に間に合わないかも」
アシュリーは心のどこかで仕方がないと諦めかけていた。
元々そんな身分ではないし、歩いてお城に行く姫や令嬢なんて聞いたことがない。
それに、、先ほどお爺さんを庇って後ろに倒れてしまった時にドレスも土で汚れてしまった。
「ごめんヴェラ、こんなんじゃ行けない。」
アシュリーは足を止め城を見つめくるりと回れ右をし城に背を向け街に戻り始めた。
街の中にガラスの教会と呼ばれる美しい教会がある。
幼い頃一度行きたかった場所、、、、何か思い出しそうだけど、、ここに行こうって、、誰かと約束してた?
うーん、、わからない、けど、アシュリーはその場所を目指して歩き始めた。
教会の前の着くと鐘が二回鳴った。城ではパーティーの真っ最中だ。
アシュリーは外套を脱ぎガラスの教会に入った。
人は少ない。大きなガラスで出来た礼拝場は陽の光を浴びてキラキラと輝いている。
空いている席に腰をかけフーと一息ついてから祈り始めた。
お母様の形見イヤリングを片方売ってしまいました。
けれど後悔はしていません。
ただ持っているよりも誰かの役に立てる方がお母様に喜んでいただけると思っています。
ただ、叶わぬ夢を見てお城に向かった事、少し恥ずかしく思っています。
アシュリーはひっそりと生きてゆきます。
祈りを終えたアシュリーは瞳を開けて立ち上がった。
「アシュリー様ですね、お急ぎください」
突然一人の騎士に声をかけられた。
「え?騎士様?どこのどなたですか?」
アシュリーは驚いて後退りをしたが、すぐに捕まり、有無を言わさず抱き抱えられた。
「人さらい?!」
アシュリーが叫ぼうとした時帝国の紋章を掲た騎士が数人現れ
「ご安心ください、帝国の騎士でございます」
そう声をかけられ、何が起きたのかわからぬまま馬車に乗せられた。
「あの?これは一体、、どこに?」
アシュリーは一緒に乗り込んできた一人の体格が良い騎士に聞いた。
「ジェシー様のパーティーに参加される予定だったアシュリー様、パーティーは終わってしまいましたが今日来ていただけなかったのはアシュリー様だけです。とにかく一度城に来て頂かないと。」
その騎士は真剣な顔をしてアシュリーを見つめ言った。
「あの、お誘いは嬉しいのですが、、ドレスも持っておりませんし、このワンピースも汚れてしまったし、イヤリングも片方しかありませんし、お城に行く身分でもありませんので、、」
そう言ってアシュリーは走っている馬車の扉を開けようとした。
こんなボロボロ身なりでお城に行けない。
「アシュリー様?!危ないです!!」
騎士は慌ててアシュリーを座らせた。
「すみません、でも私は平民ですからやはりジェシー様にお会いすることは出来ません。」
アシュリーは騎士に力なく微笑んで下を向いた。
「そう仰られてもお連れする事が私の仕事でございます、どうかご一緒に、、」
騎士は土で汚れたワンピースのスカートを両手で握って下を向くアシュリーを可哀想に思った。
「騎士様、、今更城に行っても誰のいないのに、こんなボロボロの洋服を着た人間が城に行くなんてジェシー王子様だって驚いて死んでしまうかもしれませんよ。」
アシュリーは少しだけ強い言い方で行きたくない事を改めて伝えた。
「ジェシー様が死んでしまうなんて、、アシュリー様、お言葉が過ぎます。」
騎士はアシュリーの言葉を聞いて慌てた。帝国の皇太子に対して死んでしまうと言うなんて、、
「騎士様、そんな事が言えるほど私は平民だと言う事です。」
アシュリーはため息を吐いた。
けれど、、どうしてこの人達は私が教会に居ると分かったんだろう
このパーティーの招待状といい、不可解なことばかり。
半分諦め座席に座り直した時、馬車が止まった。