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花嫁探しの招待状




「私にも招待状?!」


 アシュリーは自分宛に届いた招待状を両手で広げ、差出人の名前を見て驚いた。


 招待状の差出人はオリヴァ帝国のジェシー・クラウザー王子だ。



 オリヴァー帝国のジェシー王子と言えば、


金髪碧眼の甘いマスクにすらっと引き締まった八頭身


上品で柔らかい物腰、耳触りの良い甘く響く声、王子の中の王子と言われ


貴賤問わず圧倒的な人気がある帝国の皇太子だ。


 

 そのジェシー王子は「全ての姫や令嬢にチャンスを」と言い、


 パーティーの招待状を世界中の姫や令嬢達に送り、そこで花嫁を探すと公言していた。


 ジェシー王子の父である皇帝は一年後に退位する。その時点でジェシーは花嫁がいないと即位できないのだ。



 でも、まさか自分にもそんな招待状が届くなど考えていなかったアシュリーは困っていた。


 招待されるのはありがたいし、参加したい。だけど、、、問題が二つある。


 第一に、生まれは女王だが今は平民だ。


 第二に、お城に来て行くようなドレスを持っていない


 アシュリーはミルトン王国の第一王女だが母親が死に後ろ盾が無くなり、当時は側室で現王妃であるベアトリスにあらぬ罪をきせられ城を追い出された。


 ベアトリスには娘、アシュリーにとっては義理の妹のレイラがおり、今はレイラが第一王女として城に住んでいる。


 王である父は母が亡くなってから突如性格が変わりアシュリーを助けてくれなかった。


 城を追い出され、幼い頃から世話をしてくれていたナニーのヴェラと共に国境近くの小さな家に住み、街で働きながら暮らしている。

 

そんなアシュリーに招待状が届くとは青天の霹靂、、ジェシー王子は何を考えているのだろう、、と興味が湧いた。


 幼い頃に会った記憶があるが、母親が亡くなる前後の記憶は断片的にしか思い出せない。


 ジェシー王子、、、


 私に招待状を出すなんて、、


 身分を剥奪された私を可哀想に思ったのか、揶揄っているのか、、。


  

 でも折角だからアシュリーはそのパーティーに行くことにした。


 しかし、ドレスが無い。


 今アシュリーが持っている一番良いワンピースはとてもお城に着て行ける物では無い。

 

 何処にでもある平民の私服だ。


 ヴェラはコツコツと貯めていたお金を持ってドレスを買いに行ったがドレスは買えなかった。


 一番安いドレスでさえ今の年収の五年分。

 


 肩を落とし帰ってきたヴェラに声をかけた。


「ヴェラ、ありがとう!落ち込まないでね。私は今平民だから平民らしくドレスなんか着ないわ。ちょっと可愛いワンピースで行く。どうせ有力な姫達がいて王子様に会えるわけないと思うから!!」


 アッシュリーは落ち込むヴェラに笑いかけて一着のワンピースを見せた。


「まあ、アッシュリー様、これはどうしたのですか?」


 そのワンピースは真っ白なシルクに銀色の星の刺繍がしてあり裾にゆくほど星が沢山刺繍してある可愛らしいワンピースだ。


 そしてその上にオーガンジーが幾重にも重ねられていてそこには金の星の刺繍が所々に入っている。


「可愛いでしょ?」


 アシュリーは黄緑色の大きな瞳を輝かせながらワンピースを体に当てて一回転優雅にターンした。


「はい!アッシュリー様の可愛らしさを引き立てるようなワンピースですね!!丈が長ければドレスにもなりますね!!」


 ヴェラは嬉しそうにワンピースを持ってワルツを踊るアシュリーをみて嬉しくなった。


 こんな笑顔は久しぶりに見る。


 

「隣のケイトさんが駆け落ちして居なくなったお嬢さんのために作っていたワンピースを譲ってくださったの」


 アシュリーは少し俯きながら優しくワンピースを撫でた。


「ケイトさんのお嬢様、、確か五年ほど前に結婚を反対され駆け落ちしたと言う方ですね、、。」


ヴェラもそのワンピを見つめ親子の難しさは貴賤を問わずだと思っていた。


「ええ、いつまでもあの事を後悔しても仕方がないとおっしゃって、たまたまお城に行くという話をしていたらこれを着て行きなさいと言って譲って下さったの」


 アシュリーはそのワンピースをもう一度体に当てて言った。

 

「ありがたいお話です。」ヴェラは両手を合わせてケイトの気持ちに感謝をした。


 「アッシュリー様,靴やグローブは用意できますが、装飾品はどうしましょう、、、」


ワンピースは用意出来ても装飾品が無ければあまりにもカジュアル過ぎる。


 アシュリーはワンピースを体に当てながら考えた。

 

「そうだ!母の形見の真珠のイヤリングに、首はリボンでチョーカーにして行くわ!どうせ誰も私なんか見ないし自分が楽しめたらいいもの!それに、二度と呼ばれることはないから」


 こんな場違いな人間がもう一度招待されるはずがない。それくらい王族だった私にだってわかる。


「いいえ、アシュリー様は第一王女様です。だからアシュリー様を招待してくださったジェシー王子様に感謝致します」


 ヴェラはアシュリーの手を握って言った。


 そのヴェラの手は少しゴツゴツしており、苦労をかけているとアシュリーは思い感謝をした。

 

「ヴェラ、いつもありがとう、、きっと何も起こらないけど、心配かけてごめんね、、ありがとう。」


 ヴェラは優しいアシュリーに誰よりも幸せになって欲しいといつも願っていた。


 今回のことでアシュリー様の運命が変わりますように、、


 そう願いながらパーティに向けて着々と準備をした。


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