まさに外道だね!主人公⁉︎
あいつ上手くやってるかなぁ
俺があの時、盗賊たちに話した作戦はこうだ。
まず、レベルが高い兄のブッチョが老聖騎士ライツの足止めをする。
その間に俺は弟のデッチョに追いかけてもらい、[脱兎]を使用して森中の魔物を引き連れて、ある程度集まったらライツに押し付ける。
俺たちは[転移]の魔法で遠くに転移して助かるって言う作戦だ。転移場所は古びた廃墟の屋根にした。ある程度は高いので、奴が死ぬ所を目視しやすそうだったからだ。
ただ、この作戦には問題が二つある。
一つ目は老聖騎士と盗賊兄が結託し、俺を裏切る可能性がある事、これは深淵魔法で作った魔導生物を監視としてブッチョにつける事で解決した。
問題は二つ目、レベル差が大きい老聖騎士相手に時間稼ぎが出来るのかと言うか問題だ。
これは今のままではどうしようもないので彼が持っていた斧に小細工をすることにした。
闇の創造で新たに魔法を作ったのだ。その名も『影分器』能力は武器をMPが続く限り分身させ、魔法使用者の思うがままに動かせると言うスキルだ。これを彼の斧に付与する事で準備は完了した。
実はこのスキルで生み出した武器、見た目と迫力はすごいものの攻撃力がゼロに等しい。
だが、何度も殺された俺だからわかる事だが、奴の剣捌きは凄まじい、奴なら攻撃を受けずに防いでくれるだろう。
この作戦は見事に成功し、俺は奴を殺すことが出来た。
盗賊は時間稼ぎを成功させたし、俺もちゃんと転移で魔物から逃げ切れた。
だが、「ここからが、本番だよなぁ」
全て上手くいったはずなのに、未だに警戒している俺にブッチョは不思議そうにしている。
「あんたが言っていた老聖騎士は確実に殺しただろ?早く弟を返してくれ。」
だが、そんな事はどうでも良いといった表情で、ブッチョは弟の心配をしだす。
「ああ、弟か、、、クックッッ、お前気づいてないのか?」
ブッチョは少しイラつき始めたようだ。
「気づくって何にだよ!早く弟を返せ!」
「返せも何も、お前だってさっきまで見てたじゃないか。」
「はぁ?何をいって、、、、おい、まさかお前。」
ブッチョは屋根から飛び降りると老聖騎士がいた場所へと向かう。
「おーい、急に飛び降りたりしたら危ないぞー」
「うっせぇ!黙れ。」
おお、めっちゃ怒ってる。ブッチョの後を追いつつ、老聖騎士がいた場所に行くと、、そこには魔物たちに踏まれて、潰されて、食われて、肉塊となった人間であったものが二つあった。
そう二つあった。大事な事だから2回言ったよ!
ブッチョは鬼の形相でこちらを見つつ、質問をしてくる。
「なあ、お前、あの後弟をどうした?」
「どうってどうもしてないよ」
「ああ、そうか、つまり、、、お前は魔法が使えない弟を魔物の大群の前に置き去りにして自分だけ転移で逃げてきたって事か?」
ああ、こいつはようやく気づいたのか。
「ああ、そうだよ!アーハッハッハ!!!気分はどうだい兄ちゃんさん?大事な弟さんを置き去りにして逃げたのはお前も一緒だぜ!あの時もう少し待っていれば気づけた事なんだから。」
「テメェェェェ!!!笑ってんじゃねぇぞこの外道ガァァァァァ!!!」
ブッチョが掴み掛かってくる。俺はあえてバリアを解除する。
俺は押し倒され、ブッチョが俺の体に馬乗りになる。
ブッチョが斧で俺の頭をかち割ろうとした瞬間。
俺は「助けて下さいぃぃい!誰か!ライツさんを殺した盗賊に襲われていますぅぅ!」めっちゃ大声でそう叫んだ。