老聖騎士と咎人と戦争と
〜魔の森対策本部 会議室〜
「で、それは本当か?」
軍人のような格好をした、六十代後半の少し老けた顔の男が、若い兵にもう一度確認をとる。
若い兵は少し怯えながらも、ハッキリとした口調で話し始める。
「は、はい。中位神官達からの確かな情報です。忌まわしきあの人間モドキが魔の森、中央部付近に現れたと」
老けた男は、少し考えた後、若い兵に告げる。
「よろしい、では、私が行こうじゃないか。」
若い兵は狼狽える。
「し、しかし、貴方はもう現場を引退したのですよ、、、ここは私たちが、」
「気にせんでいい。若いもんよりかはわしの方が強い。歳をとったからと言っても生まれたばかりの人間モドキに遅れをとったりはせんよ。安心してここで待ってるといい。」
「、、、はい。」
老けた男は座っていた椅子から立ち、服を整える。机に置いていた帽子を深く被り直し部屋から出て行こうと扉に手をかけた時、
「団長、いや師匠。絶対に、生きて帰ってくださいね」
ふっ、老けた男が少し笑う。
「ああ、もちろん。年寄りの力舐めるなよ!」
多くの弟子達に見守られながら、「師匠」が魔の森へと入っていく。
弟子の中には、先ほどの若い兵もいた。「師匠」が完全の見えなくなった後も「師匠」の安全を願うように、しばらく弟子達は「師匠」が入って行った魔の森を見ているのだった。
〜魔の森、中央部付近〜
魔の森、呪われた大地の一つとして、名高い場所。強力な魔物や無法者、傭兵崩れの盗賊などが蔓延る森。
そこで起きる問題を解決するために出来た魔の森対策本部で団長を務める別名「師匠」
「このワシ、ライツ・グランツが来てやったぞ!さあ、人間モドキだろうが何だろうがかかってこい!」
引退した、老聖騎士が魔の森に現れたのだった。
〜白き空間〜
誰もが思わず見入ってしまうような美貌をもつ、「神」が不敵に笑っていた。
「あのユニークスキルを手に入れたのは予想外だったけど、あの死に戻りモドキのスキルで私の使徒を倒せるかしら。あの男は引退したけど聖騎士としての力はまだ健在。無限に死に続けながら私に刃向かったことを後悔すればいいわ、ふふふ、、アーハッハッハ」
老聖騎士と人間モドキの咎人の戦いが始まろうとしていた。
ほぼ同時刻、世界各国で勇者が誕生。
混乱する世の中で、勇者の誕生を知った各国の上層部は、自分たちが神に選ばれたのだと勘違いし、勇者による自国の勝ちを確信し、首都を失った神聖ロード帝国への宣戦布告を行う。
神聖ロード帝国の膨大な領地を求めて世界各国が争い合う、世界大戦が始まった。