魔族領戦争最前線にて
〜魔族領、戦地 最前線司令部〜
「失礼します!緊急事態とのことです!軍事魔導通信から緊急通信が入っております!」
若い伝令兵だろうか?大慌てで司令部に入ってくる。
「緊急事態だぁ?何があったってんだ?」
「それを伝える為に今呼びに来たのです。まあ、私もよくわからないのですが、急ぎ全ての司令官は転移陣を使い、本陣へと集まるようにと!では、失礼しました!」
、、、なんつったあの兵士、俺の耳がおかしくなったんじゃなければ全司令官に本陣に来いって?今は一応優勢だが戦争してんだぞ?
「なぁ、参謀?」
「大丈夫です。司令官の耳がおかしい訳ではありません。あの伝令兵は確かに本陣へ来いと言いました。」
「よーし間違いだったらあの兵士冗談抜きでブッ飛ばすからなぁ!!」
あの顔、、、覚えたぜ。もし間違いだったら恥かかせた罰として最前線で戦わせてやる。
後の仕事を参謀に任せて、転移陣を起動する。
そういや本陣に来るのも久しぶりだなぁなんて呑気に思いながら転移した先には、鬼の形相をした大将が待ち構えていた。
あっレェ〜てへ[ゴン]「痛っぁぁ」
「ワシは急ぎ来いと伝えたつもりなんじゃがのぉ?」
「偉大なる大将である貴方のお言葉をあろう事か疑い遅れてしまい申し訳ございませんでした。」
「ふん、まあいいだろう。今はこんな事をしている場合では無いしな。」
「そ、そうですかで、一体何があったんですか?こんな急に呼び出すなんて」
自分以外の他の司令官も不思議そうにしている。一応今は魔族との戦争の真っ最中なのだ、なのに最前線からも司令官を呼び出すなど相当のことがない限り、、、
「単刀直入に言おう、我らが神聖ロード帝国の首都[アリウム]が昨日、滅んだ。」
『「は?」』
〜魔族領最深部 魔王城〜
魔王城その奥、会議室にて
「それでは、会議を始めよう。何故か優勢だった人類連合軍が突如として撤退を始めたことについてだ。」
場には緊張が走る。皆が不思議そうな顔をしている。
だってそうだろう、今までこちらは劣勢で、このまま戦争が続けばこちらの負けは確実だったはず、だ。
四天王の俺が言うのもおかしい気がするが、、それほど我らの魔族軍は負けていた。
なのに、「ここで全軍撤退、だと?」
そう、そうなのだ、何かがあったとしてもここで全軍撤退とは意味がわからん。
「失礼します。私の考えを述べても良いでしょうか?」
魔族軍参謀、、、名は確かマイケルだったか?
「四天王、憤怒のパワリオス様、私はマイケルなんかじゃないですよ!ルイスだって前から言ってますよね⁉︎何回言わせるんですか!」
パワリオスはすまなそうな顔をして誤っている。
「そうだったな、すまんすまんマイクよ。考えを聞いてみようじゃないか」
「んんん、、ルイスだって言ってんだろおがァァァ!テメェブッ飛、、、あっ、し、失礼しました。私の考えとしましては二つのことが推測出来ます。一つ目が本当に人類側で何か緊急事態が起こり、全軍が戻らないといけないような被害が出ている。二つ目が、、、全軍撤退に見せた誘導で我々が追い討ちをかけた瞬間、瞬時に軍を反転、こちらに攻め込んでくるということです。」
ここにいる皆がなるほど!と納得した顔になる。つまり、
「撤退は偽でこちらを一網打尽にしようとしているかもしれないと言うことか。」
「はい、奴らの首都アリウムに送っている密偵から何も情報は来ていないですし、撤退は偽でこちらを罠に嵌めようとしている説を私は推します。まあ、最終的な判断は任せますがね。」
「まあ、我が軍としても被害は出来るだけ抑えたい。敵が去ってくれるならありがたく思っておこう。では、奴らの行動を罠と判断する。全軍に敵軍に追い討ちをしないように言っておけ、名誉をすぐ欲しがる馬鹿どもには他よりきつく言っておけよ!」
「はい、わかりました。では、失礼します。
〜一週間後〜
「パワリオス様、、、」
「言わなくてもわかってる、本気であいつらいなくなりやがった、、、」
再び開かれた会議で、誰もが困惑したのであった。
神聖ロード帝国、首都アリウム消滅の翌日、魔族と戦争中であった神聖ロード帝国と他の国の連合軍[人類連合軍]は全軍で撤退を始めた。
軍の上層部であればちゃんとした理由の上での撤退とわかっていたが、ただの関係者や、下級兵にはなんの情報も伝えられなかった為、場は混乱し、士気は大幅に下がったのであった。
また傍から見れば突如優勢だった軍が敵から逃げ始めた為、国民は恐怖に陥った。
魔王が人類の予測より早く復活し、首都を滅ぼしたのではなどの噂に尾ひれがついて広まり、魔族領に近い村などでは反乱を起こし、魔族につくなどと言うものも現れ始めたのであった。
しかし、人類が大混乱に陥る中、魔族も同じような状態になっていた。
なんと人類の首都が消滅したと言う情報を手に入れたのと同時に魔王が死んだと言う情報まで手に入れたからだ。
魔族で唯一の希望だった魔王の早すぎる死に魔族もまた、大混乱するのであった。
世界の平和の崩壊はすぐ近くに迫っていた。
裏情報だけど今回の[魔王]とは首都を攻めた魔物のリーダー格だったあの幽霊さん。
[魔王]が魔族の軍から強いやつとかを引き抜いて行ったから魔族軍は苦戦してたよ。