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ep89 救世主、現る(シヒロ視点)

 とにかく、ぼくたちは一早く避難へと足を動かしますが、ドガァァァン!と繰り返される爆発音が無数の方向から危険に届いてきます。


「これは...ブースト。あれだぜ!」

「ああ、トレブル。多分そうだ!」


 トレブルさんとブーストさんが額に汗を滲ませながら言葉を漏らしました。


「この爆発がなにか...わかるんですか??」


 ぼくは間髪入れず尋ねました。


「嬢ちゃん。これはキラースの爆破魔術だ!」

「奴の魔術の仕組みはわからねえが、キラースは今までこれでどれだけの者を殺生してきたか知れねえってハナシだ。この調子じゃ今日も相当になるだろーぜ。もちろんおれたちも他人事じゃねえ!」


 トレブルさんとブーストさんが言っていた矢先です。

 僕たちが走っているすぐ側の建物がドガァァァン!と爆発しました。

 あたりに煙と破片が飛び乱れます。

 

「嬢ちゃん!止まるな!」

「走り抜けるぜ!」

「は、はい!」


 ぼくたちをはじめ付近にいる全員が一斉に恐怖で散っていきます。

 しかし、その中でひとり、転んで動けずにいる老人が目に入りました。


「あのひと!」


 咄嗟にぼくは進む方向を変えて老人に駆け寄っていきました。


「オイ嬢ちゃん!」

「なにしてんだ!?」


 トレブルさんとブーストさんが怒鳴るように声を上げましたが、ぼくはそれに構わないで老人に向かい手を差し伸べます。


「き、君は?ワシなんぞ構わず早く逃げたまえ」


 老人は困惑した顔で言いました。


「そんなわけにいきません!大丈夫です!さあ立ち上がってください!」


 その時です。

 地面にぬっと大きな影がかかり、ハッとしてぼくは上空を見上げます。


「ま、魔物......の上から人が!!」


 巨大な鳥獣の上から複数の〔フリーダム〕の者たちがバラバラと飛び降りて来たのです。

 

「チッ!嬢ちゃん!

 固有技能(アビリティ)〔ウィザードリィ・ナイフ〕」


 トレブルさんがその者たちに向かい魔力を帯びたナイフをびゅん!と鋭く投げ放ちました。

 

「うっ!」


 とはいえ投げたのは一本。

 一人の者には見事に命中しましたが、他の者は問題なく着地します。

 さらに、その攻撃に反応した魔物が獰猛な鉤爪を立ててトレブルさんに向かいグオォォォ!と急降下します。


「トレブルさぁぁん!!」


 スガァァァン!という音とともに土煙がブワッと舞い上がります。

 トレブルさんが...やられてしまった?

 と思いきや、

固有技能(アビリティ)〔ウィザードリィアックス〕

 なんとか弾いたぜ......」

 ブーストさんが魔力を帯びた鈍器の攻撃を合わせることでなんとか防衛することに成功したようです。

 

「くっ......!」


 とはいうものの、いささか分が悪かったのでしょうか。

 ブーストさんはガクッと膝をつきます。

 だけど人の心配をしている暇はありません。

 気がつけばぼくの周りには仮面を付けた複数の〔フリーダム〕がぬらりと立っています。


「オマエ......魔剣使いと一緒にいた子どもだな?」


 一人の剣を持った仮面の者が脅すように質問してきました。


「えっ?」


 ぼくのことも敵方へ割れてしまっているようです。

 

「オマエ......魔剣使いの代わりに死ね!!」


 仮面の人たちが一斉に襲いかかってきました。


「嬢ちゃん!」


 トレブルさんの声が聞こえました。

 が、さっきの魔物の攻撃で体勢を崩していたトレブルさんは間に合いそうもありません。

 ブーストさんはガクンと膝をついたままです。


「や、やられ...」


 ぼくが諦めかけた時です。


「えっ??」


 今にも飛びかからんと迫る仮面の人たちが、ザンッ!という音とともに僅かな残像だけを残して突然フッと視界から消え失せたのです。

 次の瞬間、ズガァァン!と近くの建物の壁から激突音が鳴りました。


「い、いきなり...吹っ飛んでいった??」


 仮面の人たちは何処から飛んできた何かの衝撃で、一瞬の内にぼくの目の前からいなくなったのです。

 何事かわからないぼくは茫然としていると、


「そこまでだ!フリーダムの悪党どもめ!」


 雄々しく凛々しい正義感に満ちた女性の声が高潔に響き渡りました。

 ぼくらは声の方向に一斉に顔を向けます。


「あ、あれは...!」

「国際平和維持軍だ!」

「勇者軍が来てくれた!」


 そこには、十数名の兵士が立ち並んでいました。

 その中の、美しい紅色の長髪をなびかせた隊長らしき女性剣士が一歩前へ出てきます。


「私はカレン・ホールズワース。国際平和維持軍特別部隊隊長だ!すでにこの街の方々(ほうぼう)へ我が部隊が展開している!我々勇者軍が来たからにはもう安心だ!」


 ぼくは目を丸くしてその人を見つめました。

 カレン・ホールズワース。

 ぼくでも聞いたことがある。

 この人は......そうだ。

 あの勇者様の妹君の、美しき魔法剣士さまだ!

当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

面白かったら感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

気に入っていただけましたら今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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