ep66 魔剣使いvsフリーダム
「ま、間違いないみたいですね」
「ああ」
俺は剣を構えた。
ヤツらとの戦いはもう何度目になるのかわからない。
だが、今回はいくぶん新鮮だ。
なぜならハナっから明確に俺がターゲットにされているから。
「やれ!」
「殺せ!」
「邪魔な魔剣使いを殺せ!」
〔フリーダム〕が一斉に襲いかかってくる。
「ぼ、ぼくはどうすれば!?」
「退がって大人しくしてろ」
シヒロは足手まとい?
そんなことはない。
むしろ無作為に街を襲うヤツらから街の人達を守って戦うよりはるかに楽だ。
「特殊技能〔ニュンパ・グレイズ〕」
俺は一陣の旋風となり無数の敵を迎撃する。
地を踏み蹴り、宙を舞い、鋭い斬閃が渦巻く。
「ハァァァッ!!」
ガキィィン!と金属同士がぶつかり火花を咲かせる。
ズバァァッ!と肉を斬り裂き紅い花を咲かせる。
「ギャアッ!」
「うぅ!!」
「がぁ!!」
ヤツらは悲鳴を上げるのみで、俺にたったの一太刀も浴びせることができない。
俺は余裕で立ち回りながら思った。
「これなら......」
昼間にやり合った〔ダムド〕のヤツらの方がよっぽど骨があったと。
まもなく......。
「終わりか?」
俺は剣をひゅんと振りおろし血を払うと、屋根の上で佇んだままの仮面の魔術師を睨みあげた。
周囲の地面には無数の仮面の輩どもが転がっている。
もう決着がついたように思われる。
「酒場はこんなになってしまったが、ここはおそらく〔フリーダム〕の支配下の店だろう。店にいたヤツらも〔フリーダム〕だったんだろう。それなら実質、街への被害はないと言えるか」
俺がターゲットにされたせいで被害を最小限に留められたかもしれない。
今回は間接的に街と街の人を守れたな。
「クローさん。もうほとんど勝ちですね」
シヒロが安堵したように言った。
「あとは魔術師しだいだが......」
仮面の魔術師は相変わらず場を動かなかったが、次第にワナワナと口をひらく。
「くそくそくそくそ......
クソクソクソクソォォォ!!
貴様は一体何者なんだ!?
その剣はなんだ!?
その力はなんだ!?
貴様に魔法の攻撃が効かないのはすでにわかっていた。
だから店ごと雷魔法で潰してやった。
なのにそれすらも難なくかわすだと?
魔法を斬るだけでなく空間転移だと?
フザケるなぁぁぁ!!」
ヤツが怒りの声を張り上げた刹那だった。
「うぅっ!?」
魔術師の胸からずっぷりと刃が飛び出てきた。
「ごっぷっ」
魔術師はゴパァッと大量に吐血し、力なく前のめりに崩折れた。
その後ろからぬっと姿を現したのは、特徴的な緑髪を狂暴におっ立てた仮面の男。
「よぉ。魔剣使いちゃん」
「クローさん!あれって!」
「あいつは......シヴィスとかいうヤツか!そうか、あの男は〔ダムド〕ではなく〔フリーダム〕だったのか!」
「なんだ?きづかれちまったか」
緑髪の男はそう言うなり、仮面を外して投げ捨てた。
「オイ魔剣使い。シヴィスさんは〔ダムド〕だ」
「そうそう」
今度は地上の左右から聞いたことのある声が近づいてくる。
「お前らは......トレブルと、ブーストだったか」
金色短髪の眉なし男、トレブルがダガーナイフを持ってゆらりと現れた。
逆方向からはでっぷりしたスキンヘッドにタトゥーを入れた男、ブーストが鈍器を持ってどっしりと現れた。
このふたりは仮面をつけていない。
「シヴィスさんはなぁ?ついでに〔フリーダム〕もやっているだけなんだよ」
トレブルがたっぷりとガン飛ばしてきながら言った。
「そうそう。ついでに〔フリーダム〕の幹部もやってるってだけだ」
重ねるブースト。
「幹部だと?」
つまり、シヴィスは〔ダムド〕のボスであり、〔フリーダム〕の幹部も担っているということか。
それでトレブルとブーストは〔ダムド〕でシヴィスの部下ってわけか。
「なるほどな......」
俺は〔フリーダム〕という組織の実体が少しだけだが見えてきたような気がした。
巨大マフィアの傘下には地域のギャンググループもいて、ギャンググループの中でも実力のある奴はマフィアの幹部になったりもする......ざっくりとこんなイメージだろうか。
「だとすると......」
屋根の上にいるシヴィスはかなりの実力者で、そいつ自らが〔魔剣使い〕の対処に乗り出した......ということになる。
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