ep60 屋敷②
「焼き殺されたか」
さらに部屋を見渡せば一体なにが行われたかの想像ができる。
室内は火事現場のようにそこかしこが焼けただれているが、表面は雨後のように湿っている。
「火の魔法だな。その時に屋敷に火が移ってのぼった煙を俺たちが見たってわけか。その後は水の魔法で消火作業が行われたってところか」
俺の推測は当たっていた。
「正解正解。さすがは魔剣使いって感じか?」
緑髪の男はエラそうにパチパチと拍手する。
「シヴィスさん!さっさと殺っちゃいましょう」
ローブの中年男が急かすように要求した。
「ゲイン。いつからテメーがオレに命令するようになった?いい度胸だなぁオイ」
「そ、そんなつもりでは!申し訳ありません!」
「ならここでテメーがやってみな。そこの魔剣使いとやらとな」
「えっ、あ、も、もちろんです!」
ローブの中年男は手に杖を持ちだしてギロリと睨みつけてくる。
「銀髪の魔剣使い!今ここで貴様を殺す!ついでに小娘、お前もだ!」
「ぼ、ぼぼぼくも!?なんで!?」
シヒロはひぃぃと怯えて俺の背中にサッと隠れる。
「お前、どっかで会ったことあるか?」
相手が熱くなっていることなど意に介さず、俺はローブの男に冷ややかに尋ねた。
「殺す!」
魔術師ゲインは質問に答えず眼を血走らせていきり立った。
「く、クローさん!」
「やるしかないな。〔グラディウス〕」
俺は右手に〔魔導剣〕を顕現させる。
「お?あれが魔剣か」
シヴィスと呼ばれていた緑髪のグラサン男が敏感に反応した。
俺は魔術師ゲインではなく、シヴィスに剣を向ける。
「お前らはここに俺を誘い出した。そうだな?」
「だとしたら?」
「そこの倒れている連中に俺を探らせた〔ダムド〕とかいうのは、お前らのことか?」
「だとしたら?」
「〔フリーダム〕と繋がっているよな?」
「だとしたら?」
シヴィスはふてぶてしくニヤニヤするのみ。
「魔剣使い!貴様はおれが殺す!」
魔術師ゲインが割って入ってくると、俺へ向けて杖をかざし魔法の詠唱を始める。
「......深淵なる万物万象の源泉よ。我が劤と為り、彼の者を燃やし尽くし給へ。〔アルカーナ・フランマ〕」
杖の先からメラメラと炎の塊が発生したかと思うと、ゴオォォォ!と凶暴に襲ってくる。
俺は剣をひゅんと軽く一振りする。
「チッ!やはりか!」
ゲインが舌を打った。
なぜなら、俺を焼き殺すはずの炎が俺のたったの一振りで、ロウソクの火を吹き消すかのようにあっさりと斬り消されてしまったから。
「あれが魔剣使いの〔魔法斬り〕か」
シヴィスがニイッと関心を浮かべた。
「そうです」とゲイン。
「ゲイン。落ちこぼれ魔術師のテメー程度じゃキビシイんじゃねーか?」
「いえ。魔法が無理でもやりようがあります」
魔術師ゲインは眼に策謀の色を光らせた。
その刹那、俺はピンと来て、
「シヒロ!」
「ひゃっ」
シヒロを抱きかかえる。
次の瞬間、ゲインが魔法を唱える。
「〔アルカーナ・フランマ〕」
ゴオォォォ!と炎が放たれた。
だがその向きがさっきと違う。
俺ではなく、俺が立つ床に向かって炎が走った。
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