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ep56 宿屋

 *


「それで......どうするつもりなんですか?」


 部屋の隅のイスにちょこんと座ったシヒロが言った。

 俺はベッドに腰掛けて腕を組む。


「そうだな......」


 俺たちは今、宿屋にいる。

 下の食堂で晩飯を済ませ、ちょうど二階の部屋に上がってきたところだ。


「彼らを手配した人たち......〔ダムド〕でしたよね?〔フリーダム〕傘下の組織とかではないんですかね?」


「組織というほどしっかりしたものかもわからないな。いずれにしても、わざわざあんなふうに俺に近づいてくる時点で〔フリーダム〕と何らかの繋がりがあると考えるのが妥当だろう」


「でもさっきの人たちは〔フリーダム〕でもなければ〔ダムド〕でもないんですよね。情報の信憑性はあるのでしょうか」


「〔ダムド〕からヤツらに与えられた命令は『あの銀髪の冒険者と仲間を捕まえてこい』ってだけ。それ以上でも以下でもない。

 つまり、信憑性以前にヤツらはそれ以上のことは知らないんだろう。結局さっきのヤツらは末端ですらないってことだ」


「なんというか......ずいぶんと敵まで距離がありますね。ついこの前は〔フリーダム〕と正面から戦っていたのに」


「今まではいわば戦場でやり合っていただけ。しかもヤツらにとって俺はつねにイレギュラーの存在。

 そして今回はじめて〔フリーダム〕から俺に対して意図を持って接触してきている。

〔フリーダム〕は得体の知れない組織だが、ヤツらからしても〔銀髪の魔剣使い〕は得体の知れぬ者。

 ある程度慎重にならざるを得ないんだろう」


「さっきの人は本当にあのままにしておいて良かったんですか?」


「問題ない。もっとも、アイツ...いや、アイツらが無事でいられるのかはわからないけどな」


「あの、クローさん」


「なんだ?」


「クローさんは、〔フリーダム〕を潰すつもりなんですか?」


「......どうだろうな」


 正直、その点は自分でもわからなかった。

 というより今は

『この力で人助けができれば』

 それだけだった。

 

 目の前に〔フリーダム〕とかいう悪い連中がいて、そいつらから〔魔導剣士〕の力で人を守る。

 それ以上でも以下でもない。

 そもそも、俺の命はもう長くないんだ......。


「クローさん?」


「ん?」


「ど、どうかしましたか?」


「いや、なんでもない」


「そ、そうですか。ならいいんですけど......」


「あっ、ベッドはシヒロが使えって言ったもんな。俺がここ座ってちゃ使えないよな」


 俺はすっくと立ち上がってベッドから離れる。

 シヒロは慌てて椅子から飛び出して、

「そそそんな!まだ大丈夫です!それにぼくがホントにひとりで使っちゃっていいんですか?」

 あせあせと申し訳なさそうな声を上げた。


「そもそも一人用の部屋の一人用のベッドなんだ。それに、万が一の時に俺が動きやすいしな」


「や、やっぱり部屋を分けた方が...」


「さっきも言っただろ?お前の安全のためだ。まあ、ひとりでゆっくり寝たいのはわかるが」


「あの、その、というか...」


 シヒロは頬を赤くした。


「なんだ?」


「なななんでもないです!」


「?」


「じゃ、じゃあ、ぼくそっちに行きますね!」

当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

面白かったら感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

気に入っていただけましたら今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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