ep48 銀髪の魔剣使い③
「シヒロ!」
魔剣使いさまはぼくの名を呼ぶと地面にひらりと降りてきて、ぼくのもとへかけ寄ってきました。
「大丈夫か?」
「は、はい!でも、おじさんが...」
「とりあえずなにか手当て...」
「ぼくがやります!」
「えっ?」
「あの、魔剣使いさまは矢を抜いてあげてください!」
「俺がか?わかった」
「お願いします」
「おっさん。我慢しろよ」
魔剣使いさまは刺さった矢を握ると、おじさんの肩からびゅっと引っこ抜きました。
「ぐあぁ!」
おじさんは肩を押さえて身悶えます。
ぼくはおじさんの肩に両手をかざして詠唱を始めます。
そう。これは魔法。
「......深淵なる万物万象の源泉よ。我が劤と為り、彼の者を癒し給へ。
〔アルカーナ・サナーレ〕」
詠唱とともに、ぼくの両手とおじさんの全身が白い光に覆われます。
魔法が発動されたからです。
白光は優しい輝きを放射しながら、おじさんの肩の傷をふさいでいきます。
これが治癒魔法の力......。
「嬢ちゃんは魔法使いだったかい......」
おじさんはびっくりした顔で言葉を漏らしました。
「そ、そういうわけじゃないんですけど......多少、使えるんです。えへへ...」
ぼくがはにかんで答えるころには、魔法による治癒は完了しました。
「これでもう大丈夫です。おじさん、さっきはぼくを庇ってくれてありがとうございます」
「なに言ってんだ!感謝すんのはこっちだ!嬢ちゃんが先に助けてくれたんだろーが!しかもそん時おれはテメーだけ逃げよーとした!情けねえったらありゃしねえ!」
おじさんは怒鳴るように声を上げました。
でもその怒りは、他の誰でもなくおじさん自身に向けられていました。
「そ、そんな!ぼくは気にしてませんから!」
「おれは酒場で嬢ちゃんのことをバカにした。それなのに嬢ちゃんはおれを助けた。もし嬢ちゃんが割って入ってくれなかったら、おれはあの仮面のヤツに何されたかわからねぇ。
さっきはなんとか庇っちゃみたが、結局また嬢ちゃんに傷を治してもらって助けられちまった」
「い、いえ。本当にぼくはそんな...」
「嬢ちゃん。酒場でのこと、本当にすまなかった。それと、助けてくれて本当にありがとう」
おじさんは誠実に深々と頭を下げました。
ぼくは何だか逆に申し訳ない気持ちになりアタフタとしました。
そんなぼくらを魔剣使いさまは穏やかな視線で眺めていて、
「良かったな」
ぼくに言葉をかけました。
「はい」
ぼくはニッコリと笑って答えました。
「シヒロは魔法が使えるんだな?」
魔剣使いさまは興味深そうな表情でぼくに尋ねました。
「え、あ、はい」
「魔法って、禁止されてるんだよな?」
「わ、わかってます!なので、これは、緊急避難的措置というか、その......」
「いや、咎めるつもりじゃないんだ。その魔法は治癒魔法だろ?前に俺の屋敷にいたメイドが使っていたのを見たことがある」
「そ、そうなんですか」
「意外と使える奴って多いのか?いやでも、フリーダム以外じゃロバータとこのコしか見たことないし......」
魔剣使いさまは手をあごに当て、独り言のように呟いてなにやら考えこみ始めました。
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