表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/166

ep40 旅立ち

 ほどなくして......。



 旅装束にローブを羽織り、コンパクトにまとめた荷物を背負い、俺は屋敷の裏口に立った。

 それはまるで冒険者が冒険に出立する風体。


「よし...」


 屋敷の裏手には木立が広がっている。

 そこを進んでいくと柵にぶつかるが、今の俺なら問題ない。

 柵を越えればそのまま林間から街の外へと抜けていくことができる。


「ぼっちゃま!必ず戻ってきてください!(生きているうちに......)」

「クロー様!くれぐれもお気をつけて!」


 不安と心配と寂しさと哀しさと、それらを抑え込もうとする僅かな希望とをない混ぜにした表情でパトリスとロバータは言った。


「クロー!いつか、また戻ってこいよ!」

 ミックも、らしくないしんみりした顔を見せて言った。


「クロー!」

 ナオミは俺の胸に飛び込んできた。


「ナオミ」

「あたし、反省してるの」


「?」

「クローに、良くない感情を抱いてたことあって」


「そんなの、気にすることないよ」


「クローは、あたしを守ってくれた。いえ、あたしやミックや他の人たちを守ってくれた。感謝してもしきれないよ。それなのに、以前のあたしは......」


「もういいって。それに、ナオミとミックがいち早く知らせてくれたから、俺はこうして難を逃れて行けるんだろ?」


「ねえクロー、覚えてる?あたしとクローが出会ったばかりのころ、あたしに言ってくれたよね?あのときあたし、はいともいいえとも言わなかった。なにも答えなかった。でもね?今ならあたし、クローと......」


「ナオミ」


 俺はナオミの言葉をさえぎるように優しく抱擁を解いた。

 ナオミは言いかけた言葉を飲み込んで、訴えかけるような目で俺を見た。


「......」


 俺はなにも答えず、黙ったまま微かに微笑んだ。

 そして前を向くと、二歩三歩と進んでからクルッと振り返る。


「じゃあ、俺は行くよ」


「ぼっちゃま!」

「クロー様!」

「クロー!」

「クロー!」


 俺は四人の顔をじっと見て、最後にパトリスに目を向けた。

 もう余計な言葉はなにもいらなかった。


「行ってらっしゃいませ。ぼっちゃま」

「ああ、行ってくる」


 俺は木立の中へ入っていった。

 一歩一歩、前へ前へ。

 途中、一度も振り返らなかった。

 もう、進むしかないのだから。


「さよなら。みんな」


 おそらく、俺の命が尽きるまでに、もうここへ戻ってくることは叶わないだろう。

 もう二度と、彼らと会うことも......。

 

「これからどうなるのか......なんて今さら考えてもしかたない。今の俺には、剣とその力がある。やることは、もう決めたから......」



 ......木々を抜けると、草原に浮かぶ広大な空は濃紫色に染まっていた。

 まもなく夜がやってくる。

 俺の旅立ちを迎えるのは、太陽ではなく月だ。

 

「なんだろうな、この気分......」


 吹き抜ける風を感じながら、俺はひとり、遠い月を目指して歩くように、大いなる世界を進んでいく。

 これは俺の、最初で最後の、冒険の旅......。




〜魔剣士誕生編〜

[完]

ここまで当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

本話で第一シリーズが完結になります。

次話からは新シリーズの開幕です。

次期シリーズからは、いよいよ本格的にバトルファンタジーへと突入して参ります。

どうぞご期待くださいませ。

面白かったら感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ