ep38 翌日
【登場人物】
クロー・ラキアード・・・主人公の青年。転生前は中年のおっさん。
パトリス・・・ラキアード家の年配執事。
ロバータ・・・ラキアード家のメイドの中年女性。実は元白魔導師。
ミック・・・エールハウスで知り合ったチャラ男。
ナオミ・・・エールハウスで出会い一晩を過ごした美女。
謎の声・・・主人公を転生させたと思われる者。正体不明。
*
翌日......。
俺は屋敷のベッドの上で目を覚ました。
「あれ......?いつ、ここまで戻ってきたんだ......?」
覚えていない。
昨日、仮面のヤツらが去ってから、俺はどうしたんだろう?
「......」
俺はむくりと上体を起こすと、ふと横の方に目をやる。
「剣......」
ベッドの横の壁に〔魔導剣〕が立てかけられていた。
剣は、昨日の戦いの後とは思えない、相変わらずの綺麗な銀色の姿のままだ。
俺はなにげなく、アイツへ話しかけてみる。
『おい』
『おはようございます』
〔謎の声〕は、俺が目覚めてすぐに声かけてくるのを見透かしていたように、寸分の間を置かず答えてきた。
『俺は、あの後、どうなったんだ?』
『エールハウスの屋根から下へ降りるやいなや、貴方は気を失って倒れてしまいました。そこへ、貴方のお知り合いが駆けつけ、貴方はここまで運ばれて来たのです』
『ミックとナオミが馬車かなんかで運んできたのか?とにかくあいつらには礼を言わないと......。
あっ、そういえば、俺が倒した仮面のヤツらは?屋敷に転がっているはずだよな』
『消えました』
『消えた?』
『屋敷だけではありません。街で倒したヤツらもすべて、煙のように消えてしまいました』
『どういうことだ?まさか......あのドレッド頭のヤツの魔法か?』
『少なくとも......あの者は、なにか特殊な能力を保持しているのは間違いありませんね』
『俺は......勝ったのか?』
『それは勝利の定義によるでしょう』
『また難しいことを』
『間もなく人が来ますよ』
『!』
〔謎の声〕の言葉どおり、部屋のドアがガチャッと開き、執事のパトリスがやって来る。
「ぼっちゃま!目覚めたのですね!良かった!」
「クロー様!」
パトリスの後ろから、メイドのロバータもついて来ていた。
ふたりはベッドまで歩み寄ってくると、改めて感極まったような表情を浮かべる。
「とにかく......無事で本当に良かった!そして我々が無事なのも、ぼっちゃまのおかげです!」
「ああ!クロー様!貴方は我々の救世主です!」
俺は途端に気恥ずかしくなってアタフタとする。
「ちょちょちょちょっと!べつに俺はそんな......」
「ぼっちゃまは命の恩人です!」
「クロー様!しかも貴方はあの後、街の人々もその手で守ったのですよね?ミック様やナオミ様、他の方々も皆、感謝をしておりました!我々だけではありません!貴方は街の救世主です!」
俺はひたすら遠慮しながらも、胸の底から湧き上がる嬉しい気持ちは隠せなかった。
この時、俺は残りの人生で、自分が為すべきことがわかったような気がした。
それは、俺が探し求めていた「生きる意味」の答えとなるもの......。
「この力があれば、人を......」
だが、人生とは皮肉なもの。
ロバータの言うとおり、街の救世主のような存在となったことにより、俺はある組織から目をつけられることとなる。
それは、俺の旅立ちへの大きなきっかけとなる。
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