ep35 エールハウス③
『俺自身と、俺の中にある〔魔導剣〕と同期されたもの......』
〔ニュンパ・グレイズ〕
〔ニュンパ・ギャッシュ〕
〔ニュンパ・ラスレイション〕
......これは、さっき使ったやつと他二つ。
これらは同系統の特殊技能か。
今の状況なら......
「オイオイ......なにむっつりとしちゃってんの?怖くなっちゃったか?さっきまでの威勢はどーした?」
思案する俺に、ツイスト頭の仮面男が見下すように吐きつけてきた。
すでに俺のまわりには店内にいる仮面のヤツらがニヤニヤしながら囲むように立っている。
いつフルボッコにされてもおかしくない状況だ。
だが俺は、そんなことは気にしていなかった。
俺の思考を支配していたのは、
「ナオミを、女の子たちを、倒れている街の男たちを、傷つけずに......」
である。
まもなく俺は、判断し、決断する。
「よし。コレでいく......!」
俺の様子の変化に仮面のヤツも気づく。
「あっ?なに考えてやがる?」
ヤツらのニヤニヤが消えたのがわかった。
突如として訪れる水を打ったような静寂......。
にわかに緊迫が走る。
俺は剣を下段に構え、深く呼吸をし、両眼をカッと見開いた。
「ナオミ!目をつぶってろ!」
鋭く声を上げた瞬間、床を踏み蹴って、ドン!と飛び出した。
「!」
ヤツらが動き出そうとした時、俺はツイスト頭の仮面の男に肉薄しかけていた。
剣がヤツに向かい地より振り上げられる。
しかし、卑怯にもヤツは咄嗟にナオミを盾にする。
「......!」
ナオミは俺の指示通り、かたくなに目を閉じていたため、悲鳴も上げずジタバタもしない。
俺はナオミに向かって剣を振り上げる形となる。
が...
「え?」
ヤツの疑問の声が漏れる。
無理もない。
刃はナオミをかすりもしないからだ。
俺は剣を振り上げると見せかけて、直前でバッと鳥が飛び立つように跳躍した。
高らかと勢いよく跳び上がった俺は、宙で体を縦にグルンと反転し、ダンッと足を天井に着地させる。
まるで忍者のような動き。
これも、俺に〔同期〕された〔魔導剣〕に蓄積されし経験と能力によるものか。
俺は天井に足を貼りつけながら、剣を構え、発動する。
『特殊技能〔ニュンパ・グレイズ〕』
天井をバンと蹴り、上空からヤツを襲う。
「な、なんだコイツは!?」
ここではじめて、ヤツは脅威を認識したと見える。
だがもう遅い。
俺は上空から逆さまにヤツの背中側に落ちながら、ヤツをかまいたちのように斬り刻んだ。
「ぎゃあぁぁぁ!」
俺がクルッと着地し、ツイスト頭の仮面男がバタンと沈むと、仮面のヤツらの様相が一変する。
「なにもんだ?」
「剣士、なのか?」
「とにかく、やるんだ」
「そうだ!全員でやっちまえ!」
「絶対に逃すんじゃねぇ!」
仮面のヤツらが俺に向かって一斉に殺気立った。
俺は剣を構えながら再びナオミに指示する。
「ナオミ!女の子たちを!」
「は、はい!」
ナオミは素直に従い、
「みんな壁際に寄って伏せて!」
店内にいる女の子たち全員に声を届かせてまわる。
同時に、俺はすでに敵に向かって飛び出していた。
『特殊技能〔ニュンパ・グレイズ〕』
ギュォォォ!と店内を小さい竜巻のように縦横無尽に翔けめぐる。
「やれ!やっちまえ!」
「うぎゃあ!」
「うおぁぁぉ!」
「がぁっ!」
「うぅ...!
「おおぉぉぉ!」
店内に響く、怒声と唸声と呻声と悲鳴。
仮面のヤツらは剣に斧に鈍器にナイフに、様々な武器を持ち合わせていたが、俺はすべてを風のように躱し、捌き、ヤツらを斬り伏せた。
「よし......!」
〔ニュンパ・グレイズ〕は攻防一体の特殊技能。
コンパクトな剣撃と小回りのきくムーブ。
狭い空間での集団戦闘に見事にハマった。
一撃を深く斬りつける〔ニュンパ・ギャッシュ〕よりも一発一発の威力は低いが、その分調整もしやすい。
おかげで、最大の懸念だった「女の子たちと倒れている街の男たちを傷つけてしまうこと」の回避に成功した。
「終わったか......」
威力が低いといっても、ヤツらを制圧するには充分すぎるほどだった。
店内中の床を埋め尽くすように転がる仮面のヤツら。
俺の服は、屋敷の時の戦闘と合わせ、全身ヤツらの返り血に赤く染まっていた。
今の俺の姿。まわりから見たらどう映るだろうか。
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