ep20 半年後
【登場人物】
クロー・ラキアード・・・主人公の青年。転生前は中年のおっさん。
パトリス・・・ラキアード家の執事。
ミック・・・エールハウスで知り合ったチャラ男。
ナオミ・・・エールハウスで出会い一晩を過ごした美女。
* * *
そろそろ半年が過ぎる。
当然だが、こちらの世界にも季節があり、最近は徐々に肌寒くなってきている。
といっても、そんなことはどうだっていい。
このまま俺は、残りわずかな時間を遊び尽くすだけなんだから。
そんな時......。
これから出かけようと玄関へ向かう俺に、空いたグラスをおぼんに乗せたパトリスが声をかけてきた。
「ぼっちゃま。本日付でまたひとり、使用人が辞めました」
「あ、そう」
「ぼっちゃま」
「なに?」
「もうこの屋敷に残っているのは、執事の私とメイドのロバータだけです」
「だから?」
「ですから、その......」
「人が足りないなら誰か雇えばいーじゃん」
「それは、難しいことです」
「なんで?」
「それは......」
「主の俺がもう長くないからだろ?」
「......」
「わかったわかった。パーティーのときは俺が他から専用スタッフを連れてくるから」
「......ぼっちゃま」
「なんだよ?俺もう出かけたいんだけど」
「本当に、よろしいんですか?」
「なんのハナシ?」
「本当にこのまま、続けるんですか?」
「続けるって?パーティーのこと?」
「本当にそれで、よろしいんですか?」
「な、なんだよ?いきなり」
俺を見るパトリスの顔は、すごく寂しそうな、悲しそうな、哀れむような、そんな顔だった。
俺は胸のどこかがどんよりとする嫌な感覚をおぼえると、すぐに空いたグラスへ視線を逸らす。
「......」
グラスにはヒビが入っている。
たぶん、俺がさっき落としたときについたものだろう。
それが不思議と俺の目につき、わずかの間それを見つめる。
俺は空っぽのグラスのヒビに向かって話しかけるように、
「と、とにかく!俺は出かけてくる!今日は戻らないから!」
言い残して、家を飛び出した。
「ああクソッ!」
......なんだよ、その顔は。
そんな目で見ないでくれよ!
俺は俺のやりたいようにやっているだけなのに!
「......テンションが下がっちまったじゃねえか!これからオンナと会うってのに!胸をモヤモヤさせんじゃねーよ!」
俺は街の中心部まで突っ走っていった。
特段、急ぐ必要なんてなかったのに。
夜になり......。
俺はオンナの家のソファーで、金髪のカワイコちゃんとイチャイチャする。
先日のパーティーで唾をつけておいたコだ。
「お父さんもお母さんもいない今夜は、俺が朝まで警備するから安心しなよ?」
「けいび、だけ?」
「じゃあ、ちくびも?」
「やだぁ、ヘンタイ」
「ならやめる?」
「いじわるー」
「カワイイ子には、ついイジワルしたくなるんだ。こんなふうにね」
「あっ......あん......」
いつもどおりのはじまり。
これからすることも、いつもとさして変わらない。
「どう......ねえ......」
「ん......あっ......あぁ!」
下らないやり取りをしてから、もっと下らないことをしていく。
相手が変わろうと、時と場所が変わろうと、実質大差なんてない。
俺はいつもどおり、オンナの服を脱がせていく。
やがてオンナは仰向けになり、次のいつもどおりを待つ。
俺も次のいつもどおりへと移行していく。
が......
"本当にそれで、よろしいんですか?“
突如、執事のパトリスの言葉が頭にひびく。
「......!」
俺はハッとして、彼女から体を離した。
「......どうしたの?」
「あ、いや、なんでもない」
「そう?じゃあ、はやく......」
「う、うん」
「......ねえ?どうしたの?」
「い、いや」
「もう、またいじわるするぅ。ジらさないで」
「あ、と、その......」
「......?」
「ご、ゴメン。今日はもう、やめようかな」
「えっ??」
「な、なんか、体調わるいのかな」
「そうなの?だいじょーぶ?」
「と、とにかく、今日はもう......」
その後、俺はテキトーな言い訳をこしらえて、さっさと彼女の家を後にした。
無性に、少しでも早く、ひとりになりたかったから。
......。
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