ep118 リスク
一方その頃。
「で、なんの用なんだ?」
クローは女隊長と決闘をした広場に呼び出されていた。
「魔剣使いクロー」
十歩ばかり先を歩いていた彼女はクルッと振り向くと、クローに向かって剣を抜いた。
剣尖が灯りに照らされてキラッと光る。
「おいおいまた決闘か?勘弁してほしいんだが」
クローはうんざりした様子で応じようとしない。
カレンはすぐに剣をおさめた。
「あれは完全に私の負けだ。正々堂々とした勝負だった。今さら蒸し返すつもりはない」
「じゃあなんの用なんだ?正直、あまりあんたと関わりたくないんだが」
「我が部隊は間もなく一部の兵士を残しサンダースを後にする」
「そうか」
「今後、軍の方針として魔剣使いをどうするかはこれから決まるだろう」
「はあ」
「いずれにしても今回、我々は退く。ただし!」
「?」
「私はお前を監視する」
「えっ」
「今回の一件は、兄...勇者様にも報告がいくだろう。市民に犠牲を出した上にキラースにはまんまと逃げられるという体たらく。我ながら言葉もない。
さらにそれだけではない。魔剣使いに正々堂々負けてしまった私は......もはや兄様に会わせる顔がない......」
カレンは悔しさに唇を噛んで拳を握りしめた。
「いや待ってくれ。それはあんたの個人的な感情の問題だろ?軍の隊長としては戻ったほうがいいんじゃないのか?隊長ともあろう者が一人で勝手な行動をするなんてさ」
困ったクローはなんとか別の結論へ促そうとするも、
「うるさい!そんなことはお前に関係ない!」
カレンに議論の余地はなかった。
もはや理屈ではなかった。
「いやいや、どう考えても俺に関係する話じゃ...」
「もう決まったことだ!今日はそれをお前に伝えたかったんだ!」
「ああ...もう、決まっちゃったんだ......」
「あらかじめ伝えた!筋は通したぞ!そういうわけだから今後も覚悟しておけ!」
カレンはビシッと指をさして言い放った。
それから乱雑にきびすを返すと、肩をそびやかしてずんずんと立ち去っていった。
「マジか......勘弁してくれよ」
クローは頭を抱えてハァーっとため息をついた。
その時。
『クロー様』
謎の声がクローへ呼びかけた。
『お前...!今の今までどうしていたんだ!』
クローは苛立っていた。
『どうやら危機は乗り越えたようで何よりです』
『そんなことよりお前に確認しておきたいことがあるんだよ!』
『ワタクシもそれをお伝えしようとお声がけしたところなのですよ』
『さっさと教えてくれ!お前が言っていた「直接的な利子の負担」てやつを!』
『寿命です』
『はっ??』
『幾分かの寿命をいただきました』
『お、おい、それって......さらに余命が短くなったってことか??』
『そういうことです』
『ちょっと待て!これで俺の余命はあとどれくらいになったんだ!?』
『さあ、明確には言えませんが、さらに短くなったことだけは確かです』
『ま、マジかよ......』
クローはがくんと肩を落とした。
そばにある街灯が唐突にチカチカと点滅しだした。
ほどなくして力なく消えかかった。
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