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後悔と言葉と決意

「七海、何て書いたらいいかな? 」

「う~ん。重さんってサブカルチャーを網羅してるんでしょ? 『シューファって知ってますか? 』って聞いてみたら? 」


七海の言う通り『シューファって知ってますか? 』とメールを送って見るとすぐに返信が来た。


『久しぶりだね、桃ちゃん。どうしたの急に? 『シューファ』はもちろん知ってるよ。俺が今、もっとも注目している子だからね。なんで? イベントの情報とか欲しいの? 』



この重さんからのメールを読んで私はハッと事の大きさに気が付いた。


「ちょっと、七海、もしもだよ。シューファが私の友達で『マネージャーやりませんか? 』なんて書いたら重さんヤバいことになるかもよ。今の会社辞めちゃったらと思うと責任重大だよ」

「そこまでもっちんが考えることないんじゃない? 情報として教えるだけなんだから。重さんだって情報を扱うプロなんだろうからそこは抜け目なくやるよ」


「そっか。じゃあ書いちゃうよ? 書いちゃうよ? 」

「早く書け! 」


そうだ。これは情報だ。この情報の取捨選択は重さん次第だ。

情報提供ということで書いてしまおう!





『シューファは私の友達なんです。たぶん重さんが知っている通り、いざこざでつまづいてます。それで、シューファのお母さんが信頼できるマネージャーを探しています。重さん、面接受けませんか? 重さんならと思ってメールしました』


『すぐ受けます!! 』




「すごい! いま送ったばかりなのにもう返って来たよ」


私は電話で重さんと詳しい事情を話すと、その後すぐにシューファに連絡をした。


そして重さんの面接は2日後に行われることとなった。


****


何人かの候補者の中から重さんは仮採用されることとなった。

私の知り合いという事よりも、重さんの知識、キャリアそして人柄が認められての事だろうと思う。


重さんは大手ジュエリー会社所属で芸能事務所への派遣社員となった。

もちろん、シューファの専属マネージャーとしてだ。

仮採用の間に現マネージャーに同行、引き継ぎ完了次第、正式にマネージャーとして業務を開始するということだ。


ただ、重さんは勤めていた会社の長期プロジェクトを途中で抜ける事になり、決して円満な退社とならなかった。

知人の会社なだけに恩を返せなかった事を悔やんでいた重さんにシューファはこんな言葉をかけたらしい。


『重さん、私のお父さんは台湾人なんだよ。そのお父さんが良く言ってた。台湾人は恩を忘れないって。だから重さんの知人さんにもシューファは恩を忘れないよ。お母さんもきっとそうだよ。だから私たち、一緒にがんばろう』



この言葉を受け、重さんは『シューファを絶対に「アニソンの女王」にする』と決意したそうだ。



「へぇ、シューファがそんな事言うようになったんだ.. あのシューファが。私も負けてられないな」

七海がそんな風につぶやいていた。


イラストレーターとして一歩一歩夢への努力を惜しまない七海、父親との別れを機に成長するシューファ。

みんなこんな風に少しずつ大人になっていくのかなぁ.. そう思うと、頼もしさと共にほんの少しの寂しさを感じた。


あれ? 私って成長してるのかな??

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