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おいしい顔

「もしもし、片岡さんですか? 柿沢です」

「ああ、タロちゃん。詩織さんから聞いてるよ。まぁ、こっちは陽菜乃と出来ない事も無いから、取り敢えず来週は休んでいいから。状態を詩織さんと相談して、大丈夫そうならまた来てくれるかな」


「はい、すみませんでした。またよろしくお願いします」


サウザーダイビングに連絡するのは正直しんどかった。

しかし、詩織さんがちゃんと説明してくれたのか意外にもあっさりと済んだ。

てっきり「なんだよ。おまえよ~.. 」みたいに言われるかと思っていたからだ。


さて、あとはこの『桃』だ..



私が七海に連絡をするとスタンバイしていたかのように飛んできた。


「早かったね」

「そりゃそーよ。桃は痛むのが早いからね。それより、はやく食べようよ! 」


「私は既にひとついただいたよ。すっごお~くおいしかった! 」

「おお~。どの桃が一番甘いかな」


七海はテーブルの上の桃を慎重に見定めていた。


「そんなのわかるの? どれも一緒だよ。どの桃も甘くておいしいよ」

「ふふふ。甘いのはもっちんだ。桃はね、このもっちりとしたお尻の形が大切なのよ。そしてやわらかそうな産毛と色味。そして香りだよ」


と鼻をひくひくさせながら桃をひとつひとつ吟味する。


しばし、その行動を追ってみる。


「 ..で、わかった?? 」

「 ..わからなかった!! 」



「なんなのよ、も~! 」

「でも、たぶん、これでしょう。何となくお尻の形がナイスな感じだから」


その七海の目利きを実証見分してみる。


「よし、七海。切り分けたよ」

「おお~。切り分けたこの実の色。ほのかに桃色っぽくない? 」


「確かに、おいしそうね」

「では、いただこうか! 柿沢君、しっかりと見分(けんぶん)してくれたまえよ」


「「うまぁ~い」」


確かに七海の選んだ桃は昨夜食べたものとは別格に甘かった。


七海の顔もとろけ顔だ(*´ω`)


「すごいね! 七海説は正しかったね! 」


七海は片目をつぶって得意そうにしている。

その間に私は2つ目をいただいた。



・・・・・・

・・



「うわぁ。ひどいね、これ。今も痒いの? 」

「痒い、痒い。あ、絶対に触らないでよ。止まらないくらいになるから」


というだけで痒みを思いだして掻きたくなってきた。


「『チャドクガ』っていうのか。どれどれ」


七海は検索した写真を見ると『こ、怖いね』と驚愕していた。


「私は庭でこんな毛虫見なかったんだ。だからたぶん脱皮した毛か何かがあったのかも? 」

「おそろしい奴らだね。生物兵器だよ、こいつら」


—コンコン


『桃さ~ん』


「あ、萌恵ちゃんだ! 」

「萌恵ちゃん、入ってきなよ。七海ちゃんもいるよ~」



「わ、七海さん。この前はどうもすいません」


萌恵ちゃんは深々頭を下げた。


「いいって、いいって。そういうのも含めての女子飲みでしょ」

と笑って言える懐が深い七海に感心する。


「今ね、ちょうど切り分けたの。萌恵ちゃんも食べて見て」


さて、どんな顔になるのかワクワク♪


「はい。 あっまーい! 」


萌恵ちゃんは歯切れの良い『甘い』(´▽`*)だった♪


「ね! 甘いでしょ。2つくらい持って帰って」

「うわぁ、ありがとうございます。でも面白いですね」


「「何が? 」」


私と七海が声をそろえて聞き返す。


「だって、 桃さんが『桃』配ってるんだもん。シュールですよ♪」


「 .... 」


横で七海が爆笑していた。

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