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私は・・・①

「朗報! 朗報! BIGニュースです!! 」


そう言いながら七海が部屋に乗り込んできた!


例のジュエリー会社のイメージキャラクターにシューファと明里さんが選ばれたのだ!


「ねぇ、すごくない? もしかしたら2人とも、そのまま女優になっちゃうかもよ? 」

「そしたら蘭子はプロミュージシャンで、シューファと明里さんは女優? 私たちの周り芸能人だらけになっちゃうね」


「そう、そこが気になるところだ。『私たちの周りだけ』」

「そこ今言うか!? 」


「でもさ、ポスターが出たらもらっちゃおうよ! もちろんサイン入りでさ」


私はふと思う..


こんな情報を有名人が好きな宮野さんが知ったら大騒ぎになりそう。



『おい、かきさわ、3人連れて来いよ。焼肉食べに行こう。もちろんうちの家族もご一緒にだ! 』



う~ん。しばらく伏せておこう..




その晩、萌恵ちゃんからの電話が鳴った。


「ねぇ、桃さん! BIGニュースがあるの! 聞いて! 」


電話の内容は、七海が教えてくれた内容とそれに関わる相談だった。


どうやら明里さんはダイビングに行きたいらしいのだ。

でも、しばらく『アクチーニャ』のイベントには参加できない。


なぜなら、明里さんの話題はチーム内にもしっかりと広まっているのだ。


イベントに明里さんが参加すると聞けば参加者が殺到、今までただ在籍していた幽霊メンバーまでもが押し寄せかねない。


また、撮影が本格的に始まれば肌の露出、日焼けは厳しく禁止されてしまう。

いわば、お忍びダイビングなのだ。

明里さんは萌恵ちゃんと私とでダイビングに行きたいらしいのだ。


かねてより私が思っていたことが頭によぎった。


「ねぇ、明里さんがよければ、私、初島でイルカを見てほしいんだけど、どうかな? 」


9月、10月がダイビングの一番面白い季節。

とにかく魚影と海の透明度が最高潮といわれている。


夏の観光客と夏限定ダイバーはなりを潜め、道路も空いてくる。


しかしこの初島行のフェリーは夏にも増してダイバーが多い。

それは初島にイルカが出ているという情報がダイビング雑誌に掲載されたためだ。

ダイバーを乗せた車のナンバーは関東圏のほかに名古屋、大阪などのナンバーも確認することが出来た。


私たちはいつもの様に8:50発のフェリーに乗り込む。

席はすぐに埋まってしまった為、私たちは最下層にある雑魚寝部屋への階段を降りた。


下に着くと、聞き覚えのある声が聞こえた。


「やぁ、桃ちゃん、おはようございます」


ダイブセンター初島の篠塚オーナーが礼儀よく挨拶してくれた。


「今日はイルカにいくの? 」

「はい。今日は私の友達を連れてきましたので、センターでガイドよろしくお願いします」


「今日はきっと大林君が連れて行ってくれるよ」


初島の海は管理よく、セルフダイビングを禁止している。

環境の保全と安全性を重視してなのだと思う。


フェリーが初島に到着。


センターの軽トラに荷物を積み上げ、私たちは食堂街を歩きはじめる。


『あそこのお店がいい』、『この店がいい』とお昼ごはんの事を話しながら歩いていくのも、初島ダイビングの楽しみのひとつだ。


「ねぇ、桃ちゃんが食べた『磯のり丼』のお店ってこの『磯料理 みやした』さんじゃない? 」

「そうですよ。知ってるんですか? 」


「この前グルメ番組にこのお店でていたよ。三色丼っていうのも凄くおいしそうだったわ」

「じゃ、ここにしましょうよ。桃さんもお勧めでもあるし」

「もうお腹減ってきちゃったね」


施設に到着し、私たちは準備をすすめる。

そして器材を車に積み込んで、島の裏の『ニシマト』へ向かった。


大林さんからイルカダイビングの説明を受ける。


・イルカに触らない

・イルカに絡んで泳いだりしない。


基本はイルカを見るだけのダイビングだ。


私たちが潜降し水深6mくらいに達した時、イルカが横を通り過ぎていった。

ほんの一瞬だった。


萌恵ちゃんが水の中で雄たけびを上げている。

明里さんのびっくりする声も聞こえた気がした。


さらに先の『約束の場所』へ着くと、すでにイルカは他のダイバーグループの周りをクルクル回っていた。

私たちの存在に気が付いた1匹が素早く頭上を周りこむように降りてくると、もう一匹もそれに合わせるように並走して私たちの周りを泳ぐ。


もう2人は大興奮している。

もちろん私もだ。


イルカは各グループのところに訪れては、ときどきアクロバティックな回転技を披露しながら遊びまわっている。


ほんの5分くらい経過すると青い海の中へ姿を消していった。

その後その場所で再び会うことを願って待ってみるが会うことはなかった。



もう来ないだろうと判断した大林さんは、魚影が濃い場所を案内してくれた。

目が回るほどのキビナゴの大群、そこにミサイル型の魚が突進している。


『ツムブリ』だ。


さらに奥から黒っぽい大群が向かってくるのが見えた。


『イナダ』の大群だった。


まるでゴゴゴゴゴ! と音がしてくるような大迫力だ。


海からエキジットするとイルカの話題に一番大興奮していたのは明里さんだった。


「すごい! すごく楽しかったぁ!! ね、萌恵ちゃん」

「私、イルカと眼があったんですよ。すごく可愛いんです。ここ凄いですね! 」


「うん。私もまたイルカに会えてうれしいよ」


『みなさん、とりあえず器材を降ろしましょうか? 』


大林さんが私たちを促した。


降ろした器材からシリンダーを取り外していると、後ろから声がした。


「あら? 明里じゃないの? 」


「(え? 明里さんの知り合い? )ねぇ、明里さ— 」


あんなに明るい笑顔を見せていた明里さんの顔がその声が聞こえた途端、一瞬で硬直したのがわかった。

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