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みんなでゴール

私はレスキューダイバーコースを再度挑戦するつもりだった。

Visitへ連絡しようとスマホを掴むと、待っていたかのように詩織さんからの着信音が鳴った。


「今度の日曜日にレスキューコースの続きをしない? もしよければ明日の6:00にショップVisitまで来て」


いつもは新宿なのに何でお店集合なのだろう?

疑問に思ったけどもちろん『行きます! 』と返事をした。


****


——日曜日


お店の前に到着すると既にアシスタントの斎藤さんが待っていた。

車は斎藤さんの自家用車X-TRAILだ。

何もかもいつもと違う。

(最近、詩織さんは秘密主義が過ぎるなぁ )


「斎藤さん、もしかして詩織さんはもう大瀬崎にいるんじゃないですか? 」

「ああ、よくわかったね。実は昨日から講習をやっているんだよ。君と同じくレスキューダイバーを目指す2人のね。だから君を誘ったんだよ」


「そうなんですね。ちょうどよかったです」

と返事はしたものの普通はこんなことあり得ないと思う。

だって私を運ぶだけの為にアシスタントの斎藤さんが動いているんだもの。


でも、今は詩織さんを信じるだけだ。


大瀬崎に着くとハマハママリンサービスで受付をする。

受付でスタッフのゆうこさんが声をかけてくれた。


「もう、みんな待ってるよ」


更衣室でウエットに着替えると階段の下には斎藤さんが台車を携えて待っていた。


台車をビーチの奥へと押していく。


詩織さんと一緒にいる2人の生徒さんが私たちに気が付いた。


「桃ちゃ~ん! 」


「あっ、明里さん!? 」


横には萌恵ちゃんが手を振ってニコニコしている。


「なんで2人が? 」

「私たち、昨日からレスキューコースやっているの」

「今日、桃さんと続きやって合格すれば3人そろってレスキュー合格だよ! 」


「萌恵ちゃん、明里さん、ありがとう」


「さぁ、まだ3人は合格したわけじゃないんだからこれからビシビシいくわよ」


スパルタの詩織さんが顔を出した。


****


【 反応のないダイバーを浮上させる 】


私が前に中断したスキルだ。


「あの、私が事故者役やってもいいですか? 」

萌恵ちゃんが言った。


「じゃ、やってみる? 」


『これは講習です』と旗が立つフロートからみんなで潜降。


—4m


—5m


—6m


—7m


(大丈夫だ)

みんなへ『OKサイン』を出した。


萌恵ちゃんがガッツポーズをしてくれた。



詩織さんが手をかざしてスタートの合図をする。


その合図とともに萌恵ちゃんが事故者としてうつぶせになる。


まずは事故状況の把握。

ひとつひとつ指さし確認。


「☞水深」

「☞場所」

「☞フィンははいている」


えっとあとは..

事故者役の萌恵ちゃんがこっそりと指でレギュレターを指さしている。


「ぷっ..萌恵ちゃん」


『☞レギュレターはしている』


萌恵ちゃんの背後から脇へ手を差し込み、顎に指をかけ気道を確保する。

そしてBCDにエアーを入れて浮上。


ゆっくり、ゆっくり..

水面に出ると、すかさずウエイトを外して浮力を確保する

そしてレスキュー呼吸開始!



「はい! OK! よくやったわ! 」

詩織さんの掛け声と同時に萌恵ちゃんが抱き着いてきた。


「よかったです! ほんとうに! また一緒にいろいろ潜れますね! 」


「じゃ、桃ちゃんはフロートにつかまって待っていてね。次は萌恵ちゃんの試験をするから。ズルは見逃さないからね! 」


詩織さんにそう言われると「えへへへ」と悪戯っ子のように萌恵ちゃんは笑っていた。


「じゃ、潜降するよ」

「はい」


****


3人の講習が全て終了し、ビーチで器材を降ろした。


「桃ちゃん! 」


明里さんが苦しいくらいに私を抱きしめた。


凄く意外だった。


明里さんはもっとドライな人かと思っていたから..

明里さんの頬が濡れていたのは海から上がったばかりだったからかもしれない。


****


じゃ、3人並んで、はーい、撮るよ!


「合格おめでとう! 」—パシャ




「あ、そうだ萌恵ちゃんは知識試験の追試があるからね」

「へへへ、そうでした」



こうして私の長く苦しかったレスキューコースは終了し、萌恵ちゃん、明里さんとともに無事合格することができた。


『詩織さん、萌恵ちゃん、明里さん、みんな、ありがとう! 大好きだよ』

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