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『ちゃっかり』は悪くないぜ!

宮野さん。

安井あおい損害保険の研修生制度の実習生として入りはしたが、社会人経験の乏しい私。

そんな私と営業コンビを組んでくれて、ご家族ともに私を温かく包み込んでくれた先輩だ。



「いやいや、驚いた。久しぶりに会うって言っても数カ月だろ。そんな泣かれるほど俺って愛されていたのかと思うと俺もグッと来るぜ」

「ははは。何言ってるんですか」


「しかし、俺のおごりだって言うとちゃっかり付いてくるのは相変わらずだな」

「そうですよ。そんな機会は見逃しませんもん。でもいいんですか? 涼子さん、家でお夕飯用意してるんじゃないですか? 」


「なに、お前の所に寄るっていったら、『じゃ、食べてくるのね』てなもんさ」

「ふふふ。涼子さんと優佳ちゃんに会いたいなぁ」


「いつでも遊びに来てもいいんだぜ。涼子にとってもお前は妹みたいな存在だし、優佳にとってはお姉ちゃんなんだから」

「ありがとうございます」


・・・・・・

・・


「なるほどな。ついに沖縄の海を自分で見に行ったわけだ。よかっただろう? 」

「はい。最高でしたよ。沖縄の海があんなに綺麗だなんて思わなかったです」


私は沖縄旅行の思い出話を夢中に語っていた。


「ほう、それで、ほれ! 」

「はい? 」


「俺へのお土産は? 」

「あの.. 今回は急でしたので、その.. 」


「ははは。冗談だよ」



そんな宮野さんの気軽な冗談を聞いていると心が軽くなっていった。


宮野さんは私が泣いたわけを聞かなかった。

私もそれについては愚痴にしかならないので口に出す気はなかった。


でも、はけ口を探していた私の心が言葉として、ついあふれ出てしまった。



「へ~。すげぇな」

「そんなことないですけど」


「いやいや、そうじゃなくてさ、俺と営業回っていたときのお前と少しだけギャップを感じてさ」

「ギャップですか? 」


「俺の中でお前ってもっとちゃっかりしていた印象があったからな。ほら、さっきみたいに俺のおごりを期待して『ラッキー♪』てな感じでさ」

「ははは.. そんな印象って」


「いやいや、『ちゃっかり』っていうのも悪くないぞ。 でも、さっきの話の中のお前ってひたすらダイビングに一生懸命な感じがしたな。気を悪くしないでくれよ。あくまでも俺の知る範囲のお前の印象って『ちゃっかりダイビングして、ちゃっかり一生懸命楽しんじゃってるよ』そんなツッコミを入れられるくらい隙のある奴がお前のような気がしてさ。ま、俺のひとりごととして流してくれていいいけどね」


「 ..隙ですか」



「まぁまぁ、梅酒でも頼めよ。俺はビールな」

「あれ? お酒飲むんですか? 」


「ああ、少しだけなら許しがでたよ。それよりも、お前の友達の『東雲蘭子』っていう子に会わせろよ。有名人なんだろ? 俺は有名人は嫌いじゃないぞ。なんなら、今呼んじゃえ! 今のうちに小さくおごって恩を着せ、次回に大きくおごってもらうんだから! これビジネスの基本な! なんつって! わははははは」



宮野さんのアホな冗談は本当に良く効く薬だな..


ちゃっかり一生懸命に楽しむ ..か。

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