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ダメなわたしをひっぱる声

「桃ちゃん、おはよう」

「あ、おはようございます、太刀さん」


「あれれ、どうしたの? 哲夫君と喧嘩でもしたかな」

「してないです」

太刀さんはいつもと変わらず冗談交じりに明るく声をかけてくれた。




「桃ちゃんどうしたのかな? なんかここ最近思いつめた顔してたけどさ。今日は特に憔悴してるような.. 相良さん知ってる? 」

「そんなもん知らねーよ。腹でも壊したんだろ」



*****


「桃、ますます日焼けしてないか? シミにならないように気を付けたほうがいいぞ。ははは 」

「うん。そうだね。気を付ける」

お父さんは私が『言い返す』リアクションを期待してるのもわかっていた。




「おいおい、太刀君、うちの娘どうしちゃったの? 」

「ええ、そうなんすよね。なんかいつものポーンとした返しがないんですよ」

「腹でも壊してるんだろ? 」


みんなが私を気にしていることはわかってた。



何か気力がそがれてしまったのだ。

この前まで何かにチャレンジする自分が他人のように感じてしまうくらいに。

まるで自分には、『今日、事務をして部屋に帰り、翌日また事務をして部屋に帰る』を繰り返すだけの毎日しかないかのように思ってしまう。



「あっ、スマホ.... 部屋に忘れた」



忘れたスマホを手に部屋から出ると、ちょうど哲夫さんと出くわした。


「おはようございます、桃さん」

「あ、哲夫さん、おはよう」


「どうしたんですか」

「ちょっと、スマホ忘れちゃって取りに来たの.. じゃ」


私が足早に階段を降りようとすると..


「あの、ここの所、何か思い詰めてるようですけど、もし僕で力になれることがあれば」

「ありがとうございます。でも大丈夫ですから、私の問題だから」


「でも桃さん、ここの所笑顔が少なくなったような.. 」


「お父さんも太刀さんも哲夫さんまで.. 私だって笑顔でいられない時くらいあるよ」


「 ..桃さん.... 」




自分自身で負の空気が出ているのはわかっていた。

でもやり場のない憤りに似た感情をぶつけないようにしようとすればするほど、愛想のない会話で済まそうとする嫌な自分が出来上がってしまう。



毎日、毎日そんな事を考えながら鬱憤をいっぱい抱え込む。

そして今日もいつものように一日が終わった。




「お疲れ様です」


はぁ、なんか疲れちゃったな.. 自分に





「よっ、元気にしてたかぁ? かきさわ~、飯でも食べにいこうぜい! 」





この声....


久しぶりに聞く能天気な声。

何故か涙があふれてきた。



「ああ.. 宮野さん」

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