護衛騎士の証言 ( 2 )
「ダメです、カイト様!」
「邪魔をするな、タク! 俺はあいつを殺す!」
確かに僕もムカついた。
高官殿の、エミカが暗殺をしようとしていたことを疑おうともしていなかったところに。
あんなに可愛くて優しいエミカがそんなことをするわけないだろう。確かに隠していることは多そうだったが、暗殺に関しては絶対にない。
だけど、高官殿を殺すとカイト様は殺人罪で収監される。
今の身分も取り上げられるだろう。
それに、このままエミカの暗殺未遂を嘘だと言い張っていると、国王陛下のご意見に逆らう事になる。
それは、エミカも望んでいないと思う。
「放せ!」
僕は暴れるカイト様を羽交い締めにする。
1体1で戦ったら確定で負けるが、力を持っている者を抑えるのは護衛騎士として必要な事。
「放しません。カイト様が高官殿を殺してしまうと、エミカの決意はどうなるのですか!」
僕の言葉に、カイト様はふっと動かなくなった。
「エミカの……決意?」
「ええ。エミカは、一人で王都に行ったこともないのですよ? それなのに、隣国まで一人で行くことになる。それは相当の決意です。あと――」
カイト様は黙って僕の言葉を待つ。
「エミカは絶対に暗殺などしようとしていません。なのに暗殺未遂をかけられた。その悲しみはとても大きいでしょう。彼女はブルイパル王国を好んでいました。その王国を出なくてはいけないことにも、悲しみを感じたでしょう。……それなのに、出ていった。何故だと思います? 僕ら側近を守るためですよ」
カイト様が息を飲む。
エミカがもし王国を出ていかなかったら、この王国に協力者がいると思われてしまう。
そして真っ先に疑われるのが、エミカの傍にいた、僕達。
おかしな話だ。王宮にいる者がどうやって協力者するんだよ。
でも、そのようになっているのだ。
「…………わかった。何もしないから放せ」
僕は始めの間に若干不安を感じながらも、カイト様を放す。彼は立ち上がりながら服を整える。
「すまない」
僕は、いえと答える。
カイト様は変わらず冷気をバンバン放ちながら彼の自室に戻る。
椅子に座って、机に肘をつけながら、カイト様は大きく息を吐く。
僕はカイト様が落ち着くまでひっそりと、後ろに立つ。
10分くらいすると、冷気が出なくなくなったな、と思った。
「タク」
「何でしょう」
急に話しかけられても僕は普通に返事をできた。
何故かって?
「探せるか?」
「可能だと思います」
分かっていたからだ。カイト様がこう言う事を。
カイト様がエミカが出ていったというのを聞いて、そのままにするわけが無い。
暗殺未遂という冤罪を払って、エミカを連れ戻す。
そのためには、エミカがどこにいるのかを把握する必要がある。
「探せ。秘密裏に。俺は暗殺をしようとしていない証拠を見つける」
「承知致しました」
国王陛下やカルバート殿下、それに高官殿は分かっていなかっただろう。
カイト様の、エミカへの異常なまでの執着を――――
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