愛らしい旋律 ②
「何時だと思ってるの。早く起きなさい。遅刻するわよ。」
「う~ん…。」
雲一つない晴天。鳥のさえずりが聞こえる。
「アレックス早く起きなさい!!」
「わかったって、今起きるから…」
目を擦り、ベットから這いつくばりながら部屋から出た。
時計を見たら7時20分…
「やば。通学半のみんなが待ってる。」
「なんでもっと早く起こしてくれないんだよぉ。」
パンをかじりながらランドセルを背負った。俺は10歳になったばかりだ。
ピアノの先生をしている母親と二人暮らし。父親は…いない。
生物学的にならそういう男はいるが…
「いってきまーす。」
「行ってらっしゃい。寄り道せずに、早く帰って来なさいね。」
4時間目の授業は、国語。作文…将来の夢について書いている。
俺は絶対叶えたい夢があった。今まで友達にも言ってない。
マザコンってからかわれたくなくて話してない。
俺の将来の夢は…
「ピアニスト」
母親がなりたかった職業だからだ。
音大生だった母が、俺が出来たことにより夢が途絶えたと酔っていた祖父が昔行っていた。
この頃恥ずかしくて言葉遣い悪く言っちゃうけど、俺は母が大好きだ。
お母さんのピアノの音は、本当に好き。誰よりも素敵で、俺は一番だと思っている。
一緒に弾いている時が、本当に楽しい。
ふと時計を見ると、あっそろそろ授業が終わる。
もうすぐ俺が一番楽しみにしている給食の時間。今日のメニューは何か??
その時は突然ドアが開き、息切れしている校長先生が俺を呼んでいた。
??
「アレックス、大変だ。君の…お母さんが交通事故にあったみたいだ。」
???
その後の記憶は曖昧だ。先生が病院まで連れて行ってくれて…
手術室前ですっとずっとずっと待っていて…
夜になっても出てこなくて…看護師さんが輸血パック届けてて…怖くて…怖くて
でもお母さんは強いから…大丈夫だと言い聞かせて…
でも…でも…お母さんは…目が覚めることはなかった。
僕をおいて死んでしまった。
「ウォー!!!!」
涙が止まらず…
「先生…俺も一緒にお母さんのところに行きたい…」
「お願い先生…おねがい…」
先生も一緒に泣いてくれた。
そこに黒いスーツを着たアイツがやってきた。
周りにも同じようなガタイのいい奴がたくさん。
「何にしに来た!!」
「消えろー!!!!!」
そこからの記憶はない。
気づいたら広い部屋のベットで寝かせられていて、アイツと一緒に住むことになっていた。
アイツは大物マフィアだ。それもトップだった。小さい頃一度だけ会ったことがある。俺を跡取りにと考えていたらしい。母親と話し合い、その日以降会うことはなかった。
そこから地獄の日々の始まりだった。ひたすら身体を鍛えられ、痛めつけられの日々。
逃げようと何度も思ったが、子供の俺には無理だった。
母の思い出が残っているあの家とピアノを誰にも渡したくなくてアイツの言うことを聞くしかなかった。
10か月が過ぎ、どうしても取りに行きたいものがあると説得し、思い出の家に帰ってきた。数人見張りがいたが、久しぶりの我が家嬉しかった。
何冊かの楽譜と母親との写真を手に取り外を出た。その時近所の話声が聞こえた…
「あそこのピアノ教室の子、父親いなかったじゃない、マフィアの子だったらしいわよ」
そこで俺と話している人たちと目が合った…俺の後ろには強面の見張り数人。
やっぱりと事実だったという目、軽蔑のよう視線、話し声俺はその場から逃げた。
見張りの人から叫び声、でも俺はここから逃げたかった。闇雲に走り逃げ込んだ場所は、コンクール会場。
そこで俺は、母親と同じ位素敵な音色を聞いた。
涙あふれてきて、止まらなくて、ただどんな人が弾いていたのか見たくて、彼を探していた。
俺は走りまくったので、一息つくために、誰からも気づかれなさそうな場所を見つけた。そこに彼がいた…。
「あれ?見つかっちゃった?誰にも見つからないと思ったのに…」
「いや…あの…僕も逃げていて…疲れて休憩したくて…」
「そうなの?じゃあ一緒に隠れながら休むもう?」
にこっと笑顔で言ってきた。
俺は、突然目から涙が出てきてその場でしゃがんでしまった。
彼はびっくりして、そばに来てく入れて
「何があったかわからないけど、大丈夫。大丈夫だよ」
と言って、抱きしめてくれた。