シリルと俺と*
俺達は今、この世界の"主人公"と戦っていた。
いや、正確には主人公の影、か?
『アァァァアアァッ!!』
「ぬるいッ!!」
「ッラァ!!」
レイピアを腰だめに構えて突進してくるのを、俺もシリルも余裕を持って避け、俺はシリルからのプレゼントでもある"鍵の形をした剣"を振るった。
「サモン:ブレイド!!刀の嵐よ!!」
個人的には凄く厨二心が擽られるよなこれ!!
叫びながら鍵剣を振るった軌跡から空間が裂け、大量の刀が飛び出し相手に向かっていく!!
『チィィッ!!』
しかし相手はそれを魔法障壁で全て防ぎきって見せた!!
だがこれは様子見ー
「サモン:スノウ!氷雪の嵐よー
『ウガァァァァッ!!』
ーアイシクルコフィン!!」
『ガギィッ!?』
更に空間を切り裂き、吹雪を叩きつけようとするも相手は遠くへと回避した。
それを追い掛けるように俺の剣閃が氷を纏って飛んで行く。
高速で飛ぶ剣撃が影を捉えた!
「シリルの武器すげぇな………
「むふん♪当然じゃろ?ほいさっと!」
更にシリルが軽く指を振ると大岩が出現して影を押し潰した!
が、相手は本当に影の様なモノらしく、ヌルりと人型に戻り、
俺達の攻撃でダメージを受けないと思ったのか反撃に出た!!
「ヨースケ?」
「おう。」
しかし、シリルは冷静だ。
予想済みなんだろうな。
俺は俺でシリルの道具により実質無敵なのは分かってるから大して危機感は抱いてない。
……そうさ、これは戦いですらない。
ただの、終末の魔女とその旦那による【殲滅】だ。
神々に挑むだけあって、シリルは理不尽な程〖無敵〗、なんだよな。
いっそ笑えてくる。
そんな正真正銘のチート嫁である所のシリルは、実質主人公の影程度、本気になるまでも無く、ただ暇潰しに遊んでるだけだ。
………世界は既に消滅していっている。
これは完全に消滅するまでの暇潰し。
なのでシリルも俺もゲームでもしながらの様な気軽さで俺と喋っている。
「しかしのうヨースケ。
いくらワシのお陰で無敵とは言え、毎回簡単に済ませるとは言え、
コレは、現実に世界を1個消し飛ばし、徒に命を奪っとるのは忘れるなよ?」
「1番遊んでるお前に言われても説得力ねぇよ。」
「ん、まぁそうじゃの。
こんなもの、冒険も、ドラマも、夢も希望も未来も何も無い。
究極の虚無じゃ。」
「それでも、やるんだろう?
神々が生み出しだ最高傑作の【掃除】を。」
「……そうじゃな、その世界に住む者共に罪は無かろうと、な。
偽りの神々が生み出しだ虚構の世界。
ワシの住んでいた世界から生み出された嘘の世界。」
シリルは、巨大な炎で影を焼き払い、寂しそうなでいて楽しそうな泣き笑いをして、続ける。
「ワシが責任もって、処分しないと、な。」
こうして、また1つの世界が消滅した。